『堀口大學』ー詩は一生の長い道ー 長谷川 郁夫著
河出書房新社 602頁 二段組み
大著です。
『三田文學』に長期間連載され、
回想を交え、終戦までの前半生を描いています。
堀口大學の本格的評伝。
長谷川さんは晩年の堀口さんに親しく、
『堀口大學全集』(索引が非常に充実しています)、
詩集『消えがての虹』を出版した小沢書店の社主。
前著『美酒と革嚢』で、
戦前の第一出版の長谷川巳之吉へ
酷薄といってもいいほどの迫り方をしていましたが、
この著作ではいかに堀口に親炙していたか、
全編をとおして「堀口さん」と表記していること
ひとつをとってもあきらか。
その折々に訳された詩がふんだんに引用されています。
今でも読まれているフランスの詩人、
ヴェルレーヌ、アポリネール、ジャンコクトーなどなどの
詩人たちと堀口大學は
直接の友だちであったり、
手紙のやり取りなどあったということ。
外交官の息子で海外生活14年におよび、
どれだけの訳詩・詩作・著書があっても
「外交官のドラ息子」と言われたりして。
その堀口をささえるのは萩原朔太郎。
朔太郎もまた前橋では
「萩原家のバカ息子」と言われて。
造本も凝っている。
表紙はとってもダンディな
若き堀口大學のポートレート(帯の下まで)、
裏表紙はジャン・コクトーとの写真。
それをめくり本の表紙・裏表紙は堀口のノート。
たくさんの写真も載って。
なにせ5・6センチの厚さなので、
背に堀口の「詩」という詩が載っています。
それがこちら。
本に沈んだ月かげです
つかの浮かぶ魚影です
言葉の網で追いはすがる
百に一つのチャンスです。
◆『堀口大學』ネットでの紹介をはこちら
名訳詩集「月下の一群」は近代の詩・文学・日本語に
計り知れない影響を与えた。
機知と エロチシズムの詩人と言われ、
嫉視と黙殺の中で闘いぬいた
堀口大學の初の本格的評伝。
◆ほかの著作
『われ発見せり 書肆ユリイカ・伊達得夫』 書肆山田、1992年
『美酒と革嚢 第一書房・長谷川巳之吉』 河出書房新社、2006年
(2006年度芸術選奨文部大臣賞・やまなし文学賞・日本出版学会賞受賞)
『堀口大學 詩は一生の長い道』 河出書房新社、2009年
『吉田健一』新潮社 2014年 大佛次郎賞
『編集者、漱石』新潮社 2018年