皆川博子『クロコダイル路地 Ⅰ Ⅱ』 【本の紹介 6日目】 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆川博子『クロコダイル路地 Ⅰ』



舞台はフランス革命、

怒濤の歴史、

 

運命の歯車がギリギリと音を立て廻る。

皆川博子のその圧倒的な筆力、

膨大な人物たちがくっきりと姿をあらわす。


皆川作品、最初の一行がじつに印象的で、

もうそこから物語の世界へぐっと惹きつけられる。

「竪琴(たてごと)の全音階を奏(かな)でるような、秋であった。」

次の「一七八八年十月とはっきり覚えているのは、

フランスが狂瀾に陥る直前の年であったからだ。」

ここから始まっても小説として、むろん成立するが、

先の行があるのとないのでは

まったくニュアンスがかわってくる。


造本がうつくしく、端麗。

連載時に挿画を描いた伊豫田晃一の装画。

表紙から裏表紙までぐるっと一枚の画。

差し色の<赤>がとても効果的。

『クロコダイル路地 Ⅱ』では、

 

それは<青>にかわる。



装幀は皆川作品を多く手がける柳川貴代。

カバーをとると黒のクロコダイル模様でおおわれ、

皮装?とみまがうほどの質感。

見返しはそれが暗赤色のクロコダイル模様に。

ところどころの挿画、

表紙・裏表紙のクロコダイルも伊豫田作品。






 

 

 

 

 

 

 

◆『クロコダイル路地 Ⅰ』 (以下は内容紹介より)

 quo fata trahunt, retrahuntque, sequamur.

 運命が運び、連れ戻すところに、われわれは従おう。

1789年7月14日、民衆がバスティーユ監獄を襲撃。
パリで起きた争乱は、瞬く間にフランス全土へ広がった。
帯剣貴族の嫡男フランソワとその従者ピエール、
大ブルジョアのテンプル家嫡男ローラン、
港湾労働と日雇いで食いつなぐ平民のジャン=マリと妹コレット。
〈革命〉によって変転していくそれぞれの運命とは。
上巻は貿易都市ナントを舞台にしたフランス編。

小説の女王が描く壮大な物語と、
仕組まれた巧妙な仕掛けに耽溺せよ。


◆『クロコダイル路地 Ⅱ』

「法廷で裁かれるのは〈犯罪〉だ。神が裁くのは、〈罪〉だ」

革命は終わった。
登場人物たちは、フランスを脱出してイギリス・ロンドンへ。
ローラン、ピエール、コレットは、
革命期に負った「傷」への代償としての「復讐」を試みる。

「革命という名の下になされた不条理に、
私は何もなし得ない。ゆえに、
個が個になした犯罪の是非を糺す資格も、私は持たない。
私は、法がいうところの犯罪者になるつもりだ」

私は、殺人を犯す。それは罪なのか?
あの「バートンズ」も登場!

下巻は産業革命期のロンドンを舞台にしたイギリス編。