「地面の底の病気の顔」「竹」この詩を朗読しますⅠ♪ <萩原朔太郎を朗読する> | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<萩原朔太郎を朗読する>

1917年刊の第一詩集『月に吠える』より

「地面の底の病気の顔」と「竹」。

詩集の巻頭に載っているのが、この詩。




   地面の底の病気の顔     

                      萩原朔太郎


地面の底に顔があらわれ、

さみしい病人の顔があらわれ。


地面の底のくらやみに、

うらうら草の茎が萌えそめ、

鼠の巣が萌えそめ、

巣にこんがらかつてゐる、

かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、

冬至のころの、

さびしい病気の地面から、

ほそい青竹の根が生えそめ、

生えそめ、

それがじつにあはれふかくみえ、

けぶれるごとくに視え、

じつに、じつに、あわれふかげに視え。


地面の底のくらやみに、

さみしい病人の顔があらはれ。


    
    竹

ますぐなるもの地面に生え、

するどき青きもの地面に生え、

凍れる冬をつらぬきて、

そのみどり葉光る朝の空路に、

なみだたれ、

なみだをたれ、

いまはや懺悔をはれる肩の上より、

けぶれる竹の根はひろごり、

するどき青きもの地面に生え。