「塩田千春展 魂がふるえる」
森美術館で観てきました。
塩田千春の作品を初めて観たのは
2018年のオペラ「松風」の美術。
舞台前面を縦横に覆いつくす黒糸。
人間の内奥を視覚化した
その美術に衝撃をうけました。
大規模なこの展覧会、
会場へエスカレーターの天井、
作品・糸と65艘の舟による「どこへむかって」が
塩田の世界へといざなう。
最初のインスタレーションは「不確かな旅」。
真っ赤な糸で埋め尽くされた空間。
糸の強弱、照明によりこの部屋は表情を変え、
鉄骨の舟はより抽象化されて、
その舟から火焔が立ち昇るようであったり、
血脈にようでもある。
じっと立ちつくすと不安、不条理が蠢いてくる・・・
そして、「静けさの中で」
幼少期に、隣の家が夜中に火事になり、
その燃えた記憶から制作された作品。
グランドピアノは焼けただれ、
鍵盤は真っ黒で、ハンマーも崩れ落ちて。
このピアノを観て、胸がひりひりと痛み、滲んできました。
やはり焼けた観客用の椅子が置かれ、
黒い糸で覆いつくされこの空間。
ひりひりと突き刺さってきます。
それでいて、この空間に溶けてゆくかのよう・・・
「時空の反射」「内と外」などなどインパクトのある作が展示。
初期からの映像作品も多数。
画布と自己との境界にいどむような、
キャンバスを身に纏い、
真っ赤なアクリル絵の具を頭からかぶった作。
バスタブを泥舟にし、さらに泥を浴びつづける作。
全裸で泥まみれになりながら、
傾斜した地を何度もなんどもよじ登ってゆく作。
オペラ「松風」をはじめとする
舞台美術はダイジェストの映像で紹介されているが、
別室でじっくり観たいと切に願いました。
まさに<不在なかの存在>を
追究しつづけている展示でした。
10月27日(日)まで。
◆主な展示作品
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