遠田潤子『廃墟の白墨』 2019年9月刊 光文社
遠田潤子さんの小説は
ひとであったり、
その関係性であったり
じつに過酷にひりひりと痛み、
身体に、精神に棘を突きつけられるような、
壮絶と言えるほど、
存在がミリミリと崩壊していくような・・・
で、あっても(であるからこそ)、
その構築された<虚構>は招いてやまない。
この新刊『廃墟の白墨』もそう。
装幀:柳川貴代
装画:agoera
造本は黒地に白い薔薇の装画、
装幀はちょっとレトロでうつくしい。
見開きは「の」とおなじ赤、
扉は黒で一輪の薔薇。
「白墨の廃墟」の書体が印象的。
この「の」は赤(血のよう綺麗)。
この本の紹介はこちら
「ミモザの父・閑に封筒が届いた。
チョークで描いた薔薇の絵の写真、
裏には「四月二十日。零時。王国にて。」とあった。
廃墟と化した明石ビルに行った彼を三人の男たちが待っていた。
男たちは語りはじめる。
哀しい少女・白墨の切なく凄まじい物語を──」と。
みつみつと紡ぎだされる<白墨>に、
ロルカ詩集、カスタネットと
チョークで薔薇を描くことしか知らない
この少女に、
小説を手にとって、触れてほしいと思う。