オペラ「ヴァネッサ」バーバー作曲 @NHK-BS プレミアムシアター | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌劇 バーバーの「ヴァネッサ」を

録画で観ました。

 

このオペラは初めて。



グラインドボーン音楽祭 2018年の公演。

サミュエル・バーバーの

 

オペラ「ヴァネッサ」Op.32 は。

1957年の作品。

米国ではメト初演され、ピューリッツァー賞を受賞。



ストーリーはこちら。

ヴァネッサは恋人を20年間待ち続け、

現われたのはその恋人<アナトール>と同じ名の息子。

アナトールはヴァネッサの姪エリカと関係を持ち、

ヴァネッサと婚約します。

婚約の日、身ごもっていたエリカは失踪、そのおり流産。

ヴァネッサとアナトールがパリに旅立ち、

エリカが<待つ人>となる。


初めは英語のオペラにビミョウな違和感があったのですが、

この「心理劇」といっていいほど緻密に構成された舞台、

歌手がじつに歌唱も演技も、素晴らしい。

姪のエリカをヴァネッサの<影>と位置づけ、

くっきりと狂気すら感じさせる人物を、

綾なす心象を形象化しています。

若き日のヴァネッサのようなエリカ、清楚な一幕、

ヴァネッサとアナトールの婚約で、錯乱してゆく二幕、

諦観にいたる三幕。

「エリカ」というタイトルでもいいほどヴェレーズが凄い。



ヴァネッサ:エマ・ベル品位のある容姿・声。

老医師のアルバートはシリアスな心理劇のなかで、和みます。

アナトール:モントヴィダスはチェーン・スモーカーで、

いかにものその<存在の耐えられない軽さ>。

老男爵夫人:プロウライトの存在感。


演出はウォーナーの力量発揮でしょうか。

エリカの死産のシーンを冒頭おき、ドラマは始まります。

絵画の額縁を巨大化した舞台道具では

覆われた布のむこうに裏の心理が映し出されて。

舞台美術、衣装も秀逸で、音楽の流れを体現していました。

暗い心理を表現するプロジェクション・マッピングとライティング。


フルシャの指揮。演奏に惹かれました。

じつによく練られたプロダクションで、

愉しめたオペラでした。


 ヴァネッサ:エマ・ベル

 エリカ:ヴィルジニー・ヴェレーズ

 アナトール:エドガラス・モントヴィダス

 老男爵夫人:ロザリンド・プロウライト

 老医師:ドニー・レイ・アルバート


<指 揮> ヤクブ・フルシャ

<演 出> キース・ウォーナー


<合 唱> グラインドボーン合唱団

<管弦楽> ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

  収録:2018年8月14日 グラインドボーン音楽祭歌劇場(イギリス)


(画像は公式サイトよりお借りしました)