歌劇 バーバーの「ヴァネッサ」を
録画で観ました。
このオペラは初めて。
グラインドボーン音楽祭 2018年の公演。
サミュエル・バーバーの
オペラ「ヴァネッサ」Op.32 は。
1957年の作品。
米国ではメト初演され、ピューリッツァー賞を受賞。
ストーリーはこちら。
ヴァネッサは恋人を20年間待ち続け、
現われたのはその恋人<アナトール>と同じ名の息子。
アナトールはヴァネッサの姪エリカと関係を持ち、
ヴァネッサと婚約します。
婚約の日、身ごもっていたエリカは失踪、そのおり流産。
ヴァネッサとアナトールがパリに旅立ち、
エリカが<待つ人>となる。
初めは英語のオペラにビミョウな違和感があったのですが、
この「心理劇」といっていいほど緻密に構成された舞台、
歌手がじつに歌唱も演技も、素晴らしい。
姪のエリカをヴァネッサの<影>と位置づけ、
くっきりと狂気すら感じさせる人物を、
綾なす心象を形象化しています。
若き日のヴァネッサのようなエリカ、清楚な一幕、
ヴァネッサとアナトールの婚約で、錯乱してゆく二幕、
諦観にいたる三幕。
「エリカ」というタイトルでもいいほどヴェレーズが凄い。
ヴァネッサ:エマ・ベル品位のある容姿・声。
老医師のアルバートはシリアスな心理劇のなかで、和みます。
アナトール:モントヴィダスはチェーン・スモーカーで、
いかにものその<存在の耐えられない軽さ>。
老男爵夫人:プロウライトの存在感。
演出はウォーナーの力量発揮でしょうか。
エリカの死産のシーンを冒頭おき、ドラマは始まります。
絵画の額縁を巨大化した舞台道具では
覆われた布のむこうに裏の心理が映し出されて。
舞台美術、衣装も秀逸で、音楽の流れを体現していました。
暗い心理を表現するプロジェクション・マッピングとライティング。
フルシャの指揮。演奏に惹かれました。
じつによく練られたプロダクションで、
愉しめたオペラでした。
ヴァネッサ:エマ・ベル
エリカ:ヴィルジニー・ヴェレーズ
アナトール:エドガラス・モントヴィダス
老男爵夫人:ロザリンド・プロウライト
老医師:ドニー・レイ・アルバート
<指 揮> ヤクブ・フルシャ
<演 出> キース・ウォーナー
<合 唱> グラインドボーン合唱団
<管弦楽> ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
収録:2018年8月14日 グラインドボーン音楽祭歌劇場(イギリス)
(画像は公式サイトよりお借りしました)