朔太郎の<五月>
「掌上の種」は第一詩集『月に吠える』の
「雲雀料理」に載っています。
見開き二ページで、
タイトルと四行までが右ページ。
後の六行を左ページに配しています。
掌上の種
われは手のうへに土を盛り、
土のうへに種をまく、
いま白きぢようろもて土に水をそそぎしに、
水はせんせんとふりそそぎ、
土のつめたさはたなごごろの上にぞしむ。
ああ、とほく五月の窓をおしひらきて、
われは手を日光のほとりにさしのべしが、
さわやかなる風景の中にしあれば、
皮膚はかぐはしくぬくもりきたり、
手のうへの種はいとほしげにも呼吸(いき)づけり。