八日はや棚機津女の解かれて 掌
(たなばたつめ)
また七日が来る。
そっとため息をつく。
もう禊も湯浴みすませた。
時間(とき)をかけ手ずから織った
新しい衣装はそこに。
化粧の顔は華やぎ、
だが、
まだ、鏡のまえに座っている・・・
こんな逢瀬を繰返すようになったのはいつのことだったか。
待ちきれず、指折り数えた。
一年(ひととせ)に一度というのはなんの罪ゆえ。
あと三月・・・、
あと一日のなんと長かったことか。
なれど、逢っているひとときのなんという速さ。
いまお逢いしたというのに・・・
時刻(とき)は羽根が生えたように、
砂が零れ落ちるようになくなった。
一年(ひととせ)に一度、逢えることが堪らなかった。
どうしていつもお逢いすることができないか、と。
慕わしいあなた
恋しいあなた
ひととせ・・・それは永劫
夜ごと日ごと、劫火に焼かれる日日
いつのころからか
あなたの眼のなかに倦怠を、
それはわたくしも。
わたくしたちの眼のなかにあるもの
それを知ってしまった・・・
かささぎたちはこぞって橋を架けてくれる。
わたしたちは天のものたちからも
地のものたちからも
相愛の<恋人>としてのぞまれている。
どこからも祝福される<逢瀬>
すべての世界に公開される<逢瀬>
<逢瀬>の中の<逢瀬>
それがどういうことかおわかりになるかしら。
相手の眼のなかに懈怠をみても、
続けられる<逢瀬>
否、
続けねばならない<逢瀬>
業火に焼かれる日日。
毎年毎年、夜ごと日ごと、
一年(ひととせ)に一度、
逢うことが
堪らない。
また、
その日がくる。