七夕 Ⅲ「八日はや棚機津女の解かれて」俳句から詩へ | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 八日はや棚機津女の解かれて              掌

         (たなばたつめ)

 

 

また七日が来る。


そっとため息をつく。

 


もう禊も湯浴みすませた。


時間(とき)をかけ手ずから織った

 

新しい衣装はそこに。


化粧の顔は華やぎ、


だが、


まだ、鏡のまえに座っている・・・

 


こんな逢瀬を繰返すようになったのはいつのことだったか。

 


待ちきれず、指折り数えた。


一年(ひととせ)に一度というのはなんの罪ゆえ。


あと三月・・・、


あと一日のなんと長かったことか。

 


なれど、逢っているひとときのなんという速さ。


いまお逢いしたというのに・・・


時刻(とき)は羽根が生えたように、


砂が零れ落ちるようになくなった。

 


一年(ひととせ)に一度、逢えることが堪らなかった。


どうしていつもお逢いすることができないか、と。


慕わしいあなた


恋しいあなた


ひととせ・・・それは永劫


夜ごと日ごと、劫火に焼かれる日日

 

 

 

いつのころからか


あなたの眼のなかに倦怠を、


それはわたくしも。


わたくしたちの眼のなかにあるもの


それを知ってしまった・・・

 


かささぎたちはこぞって橋を架けてくれる。


わたしたちは天のものたちからも


地のものたちからも


相愛の<恋人>としてのぞまれている。

 


どこからも祝福される<逢瀬>


すべての世界に公開される<逢瀬>

 


<逢瀬>の中の<逢瀬>

 


それがどういうことかおわかりになるかしら。

 


相手の眼のなかに懈怠をみても、


続けられる<逢瀬>


否、

 

続けねばならない<逢瀬>

 


業火に焼かれる日日。


毎年毎年、夜ごと日ごと、


一年(ひととせ)に一度、


逢うことが

 


堪らない。

 


また、

 


その日がくる。