金子兜太『日常』、 第十四句集。
2009年6月(ふらんす堂)初版から3ヵ月の
9月に第二版がでている。
ちょうど90歳になる年で、この頃には
第51回毎日芸術賞特別賞を受賞
第2回 小野市詩歌文学館賞を受賞している。
「この日常に即する生活姿勢によって、
踏みしめる足下の土が更にしたたかに身にしみてもきた。
郷里秩父への思いも行き来も深まる。
徒に構えず生生しく有ること、その宜しさを思うようになる。
文人面は嫌。
一茶の「荒凡夫」でゆきたい。
その「愚」を美に転じていた<生きもの感覚>を
育ててゆきたいとも願う。
アニミズムということを本気で思っている」。
これは兜太によるあとがき。
◆『日常』より
秋高し仏頂面も俳諧なり
安堵は眠りへ夢に重なる鞨の頭
濁流に泥土の温み冬籠
左義長や武器という武器焼いてしまえ
みちのくに鬼房ありきその死もあり
長寿の母うんこのようにわれを産みぬ
民主主義を輸出するとや目借時
炎暑の白骨重石のごとし盛り上る
母逝きて雲枯木なべて美し
いのちと言えば若き雄鹿のふぐり楽し