よく眠る夢の枯野が青むまで 兜太
眠りほどけて詩の訪れぞ青葉木菟
老梅の白咲き白濁の残雪
おおかみに螢が一つ付いてきた
金子兜太「東国抄」は第13句集。
1995年秋から2000年初夏までの作品を収録し、
2001年花神社刊。
雄渾な題字はむろん兜太。
句の初出は俳誌「海程」で毎月の巻頭をかざる。
もはや自在の域で、
息をしても句になるのでは、
そう思えるほど、言葉がしなやかで、柔軟。
たくさんの人々をおくる追悼句が胸に沁みる。
あとがきの「わたしはまだ過程にある」は
直接聞きもし、いくたび読んでも「はッ」となり、迫ってくる。
このとき兜太80歳。
そしていまも「過程」にある。