折笠美秋 なほ翔ぶは凍てぬため愛つげぬため
山本 掌
ああ、どうぞ
もうやめて
止めてください
もう、もう、やめて
お願いですから
そんなにもひたすらに
そんなにもひたむきに
翔ぼうとする
あなたを見てはいられない
わかっています
やむにやまれぬ
溢れるおもいで
羽ばたいている、と
それはあなたの
生きる、生きているあかし、だと
でも、でも
知っているでしょうか
その翼はすでに
疵つき
破れ果てている
そんなにも
あらあらとした息で
どうなさるの
もう翔べないと
ご存知でしょうに
それでなお、翔ぼうとするのは
なぜ
そんなにも気高い
あなたを
つきうごかすのは
なに
凍えぬため、と
あなたはいう
愛を告げるため、とも
あなたはいう
おねがい
翼を
羽根を
どうぞ、みて
こんなにも
傷だらけで
いたるところ血が滲み
流れている
野分にもみしだかれ
昼を夜を闇をくぐり
凍れる時刻(とき)をわたり
身熱はこんなにも高い
喘いでいる鼓動は
絶え絶えとなり
それで
なお
あなたは
翔ぶという
高みへと
飛翔すること
そのことのみが
唯一の
のぞみだと
あなたのお気持ちが
おこころが
たましいが
叫びをあげている
翔ばないで
お願いです
<もう翔ばぬ凍るよう愛告げぬよう>
どうぞ
そうして
どうぞ凍ぬように
わたくしの翼を
いえ、いいえ
凍てましょう
告げないで
愛を