塚田佳男
日本歌曲の第一人者・塚田佳男氏による公開レッスン。
塚田先生のこの公開レッスンは
歌い手とピアニストのためのもの。
ご自身がピアニストであり、歌い手であることもあり、
日本の詩、その曲にかんする深い洞察は比類が無い。
今回は萩原朔太郎の詩
「風船乗りの夢」、 「仏陀」この2曲で受講。
曲は石渡日出夫のよる。
「また、むずかしい曲をやるね」と先生から最初にひと言。
一回、曲を通しで歌い、それから各フレーズ、
一音一音まで緻密にみてゆく。
<詩・言葉>を活かすため、
一音と次の一音の間が微妙にかわってくる、
その面白さ。
フレーズが新しい角度でくっきりとし、
音が、曲が立ち上がってくる。
まさに、声楽のレッスンというより、
曲をどうつくるかという、
<演出>のレッスン。
この公開レッスン、
レッスンと名前はついているが、
ある意味「コンサート」より
さらに集中と緊張を要求される、よう。
「風船乗りの夢」、この一曲で時間がきてしまう。
充実した時間!
<風船乗りの夢>
萩原朔太郎
夏草のしげる叢から
ふはりふはりと天上さして昇りゆく風船よ
籠には旧暦の暦をのせ
はるか地球の子午線を越えて吹かれ行かうよ。
ばうばうとした虚無の中を
雲はさびしげにながれて行き
草地も見えず 記憶の時計もぜんまいがとまつてしまつた。
どこをめあてに翔けるのだらう
さうして酒瓶の底は虚しくなり
酔ひどれの見る美麗な幻覚も消えてしまつた。
しだいに下界の陸地をはなれ
愁ひや雲やに吹きながされて
知覚もおよばぬ真空圏内にまぎれ行かうよ。
この瓦斯体もてふくらんだ気球のやうに
ふしぎにさびしい宇宙のはてを
友だちもなく ふはりふはりと昇つて行かうよ。
◆塚田 佳男
東京芸術大学声楽科卒業。
1975年~77年ドイツにてピアノ、オルガン伴奏法を学ぶ。
帰国後から現在に至るまで、歌を知りぬいた繊細な音楽性で、
日本を代表する伴奏者として目覚ましい活躍を続けている。
特に日本の歌曲の研究、解釈、伴奏においては現在日本の第一人者。
ライフワークである自らの企画構成による日本の歌のコンサートや、
その演奏は国内はもとより、海外にても高い評価を得ている。
日本歌曲を伴奏しているCDも多数リリースされ、
セミナー等の講師も、全国的規模で行っている。
音楽之友社主催の【シリーズ日本歌曲の歩みと調べ】では、畑中良輔氏とともに企画構成に携わり、全4回1,000曲以上の伴奏の大半を弾く。
「由紀さおり、安田祥子童謡コンサート」音楽監督並びにチーフピアノストを務め、
1995年からNHK紅白歌合戦に連続出場。
平成11年度第1回水谷達夫賞受賞。
東京室内歌劇場運営委員。日本演奏家連盟所属。
「榛名梅の里音楽祭&日本の歌」スプリングセミナー音楽監督。
塚田佳男氏に関する詳しい情報は
「つかたか倶楽部」をご覧下さい。