続いて、日本女優<高嶺秀子>。
『稲 妻』
(1952年 / 大映 / 87分 /モノクロ)
監督 ; 成瀬巳喜男
出演 ; 高峰秀子 / 香川京子
原作は林芙美子、成瀬巳喜男=高峰秀子コンビの不朽の名作。
「バスの車掌として働く高峰を写した車窓からのぞく風景をはじめ、
当時の東京という都市の息遣いを捉えている点でも出色な作品」。
まさに、
映画の物語りもさりながら、
畳の部屋、その間貸し、
ひととの交流(留守の時にお隣に鍵をあずける、
間貸しのひとに食事を出す)、
なによりもふぃつうにしゃべっている
「日本語}の美しさ。
『稲妻』 オールシネマより
監督: 成瀬巳喜男
企画: 根岸省三
原作: 林芙美子
脚本: 田中澄江
撮影: 峰重義
美術: 仲美喜雄
衣裳: 藤木しげ
編集: 鈴木東陽
音響効果: 花岡勝太郎
音楽: 斎藤一郎
助監督: 西條文喜
出演:
高峰秀子 :小森清子
三浦光子 : 次姉・屋代光子
村田知英子: 長姉・縫子
植村謙二郎: 縫子の夫・龍三
香川京子 : 国宗つぼみ
根上淳 :つぼみの兄・周三
小沢栄 : パン屋・綱吉
浦辺粂子 清子の母・おせい
中北千枝子 :田上りつ
滝花久子 : 杉山とめ
杉丘毬子 : 下宿人・桂
丸山修 : 清子の兄・嘉助
高品格 :運転手
宮島健一 : バスの老人客
【解説】
成瀬巳喜男監督が、51年の「めし」に続いて林芙美子の原作を
田中澄江脚色で映画化した名品。
主演は本作以降、成瀬監督とたびたびコンビを組むことになる
高峰秀子(初コンビ作は41年の「秀子の車掌さん」)。
複雑な家庭環境の下に育った末娘が
家を出て自立する中で成長していく姿を描く。
バスガイドとして働く清子には2人の姉と一人の兄がいた。
しかし、4人とも父親が違った。
ある日、長姉夫婦が清子に縁談話を持ちかけるが、
清子には姉夫婦の意地汚い魂胆が見え透いてしまい
とても話を進める気になれない……。
現代なら間違いなく“ドロドロ”の物語となるべきところを、
人間の業やサガをありのままに描きながら、
表現はあくまでも慎ましく、
映画はそうしたすべてを温かく受け入れる包容力を見せ、
観終わって清々しささえ感じてしまう
成瀬監督の見事なお手並みが堪能できる逸品。