司修『幽霊さん』ぷねうま舎 2014刊 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


幽霊さん



『幽霊さん』、司修 2014年6月刊の最新短編集。

語り口はやわらかいが、
<重い>作品がならぶ。

◆幽霊さん
「岩田のとある海岸、津波で爺さまに死なれた婆さまは、
言葉が嫁に来る前の秋田弁に戻ってしまい、
爺さまを追って死のうとするが、
そこに岩手弁の爺さまとケンジさん(宮沢賢治)が
幽霊になって出てくる…」

ユーモラスなばさまとじさまの(秋田弁と宮古弁と違い!?)
会話の背後の、悲しみと慈しみの心が透ける。
随所にでてくるオノマトペが秀逸。

この作品、
文化座の佐々木愛による舞台化が予定されている。


ぷねうま舎の紹介。

「生きよ!」と幽霊さんがつぶやく。
物語・大洪水の後に。

■ 大津波とフクシマから生まれた物語。
宮澤賢治の震災体験を呼び出し、
民俗の記憶に沈む豊饒への祈り、
女体からの穀物創成の神話を掘り起こす。
命のはじまりの出来事、そこに人の営みの原点があった。



■ 戦後の焼け跡・闇市にうごめく放火魔の快楽、
60年代ヒッピーたちに担われた原発立地反対闘争のその後……。
いま廃墟から立ち上がること、
それは第二の敗戦を生き直すことではなかったか。
日本の戦後を貫く、支配と排除の構造を、
東北と沖縄・奄美の死者たちの、
無念の刃で彫り上げる。


●目次


幽霊さん

16歳の死

ガリバーがやって来た日

うらぎり

珊瑚の雪




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司 修(つかさ・おさむ)

1936年生まれ. 独学で絵を学び, 絵画創作にとどまらず,
絵本の原画, 書籍の装丁, また小説の執筆にと幅広く活躍する.

78年, 『はなのゆびわ』で小学館絵画賞受賞.
小説では88年, 「バー螺旋のホステス笑子の周辺」で芥川賞候補.
93年「犬」で川端康成文学賞,
2007年 『ブロンズの地中海』で毎日出版芸術賞,
『本の魔法』で大佛次郎賞受賞。
『戦争と美術』『賢治の手帳』『イーハトーヴォ幻想』
『水墨創世記』など多数。