<初演> 委嘱作品 曲:野澤美香
むざんやな甲の下のきりぎりす 芭蕉
(かぶと)
<なんと痛ましいことよ。
討ち死にした実盛(さねもり)の甲だけがここに留められ、
その下でか細く鳴く蟋蟀(こおろぎ)の声を聞いていると
悲痛の思いに旨が疼く>
謡曲「実盛」の語を借りて、
実盛哀惜の心情を表白した。
新潮古典集成「芭蕉文集」より
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作曲家:野澤は曲に「あなむざんやな」と詞にしているが、
芭蕉草稿のおりは「あなむざんやな甲の下のきりぎりす」。
「おくのほそ道」では
「あな(感動詞 ああ)」は取られ、この表記に。
謡曲「実盛」、『平家物語』に、
義仲の四天王のひとり兼光が旧知ということで
首実検をし、「あなむざんやな」と落涙した、とある。
この句は小松にて、
1689年旧暦7月26日、新暦9月9日。