五月雨の降り残してや光堂 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


かねて耳驚かしたる光堂、開帳す。

光堂(ひかりだう)は藤原三代の棺(ひつぎ)を納め、

三尊の仏を安置(あんぢ)す。

七宝(しつぽう)散りうせて、

珠(たま)の扉(とびら)風に破れ、

金(こがね)の柱霜雪に朽ちて、

すでに頽廃(たいはい)空虚(くうきよ)の草むらとなるべきを、

四面あらたに囲みて、甍(いらか)をおほひて風雨をしのぐ。



  五月雨の降り残してや光堂       芭蕉



<すべてを朽ち腐らす五月雨が、

ここだけはふらなかったのであろうか。

長い歳月を経過して、今なお燦然と

光輝をはなっている光堂であることよ>
                   新潮社古典集成「芭蕉文集」より



作曲は野澤美香。

気鋭の作曲家で、「芭蕉座」のメンバー。

この「おくのほそ道」のために書き下ろした曲。



◆ 野澤美香(作曲)


東京生まれ。国立音楽大学作曲学部卒業。

作曲を故・入野義朗に師事。

日本現代音楽協会新人賞入選。

ICC国際作曲コンクール第二位受賞。

シビテッラ・ラニエリ財団からのフェローシップでイタリア滞在。

02年日本音楽集団委嘱「霊長類研究所」、

03年ニューヨークでの「ミュージック・フロム・ジャパン」で

「メイド・オン・ザ・インサイド」を世界初演など

国内外で楽曲が演奏される。

映像作品、ダンスとのコラボレーション、

ゲーム音楽「虫姫さま」など活動は多岐に渡る。