野球だけではないかもしれないが、長い間競技に携わっていると、最後は“心”の問題に辿り着く。

“体力”なんてやればやっただけつくし、“技術”なんてプロが採用しているものならお好みでどれを選んでもかまわない。

“心”は目に見えないし数値化しにくいから、どうしても後回しになってしまうが、この問題をクリアしなければせっかく磨いてきた“技術”“体力”も生かすことはできない。

そこで今回から数回に亘って“心”に関する良書を紹介していく。



まず最初に紹介するのはこの本をおいて他にないだろう。

t01


1987年初版、ジム・レーヤー著、小林信也訳の

『メンタル・タフネス―勝つためのスポーツ科学』

メンタルトレーニングの古典ともいうべき一冊で、その実践法を広く一般に知らしめた功績は大きい。

僕がこの本を手に取ったのは大学生の頃と記憶しているが、特に印象深かったのはこの図↓

t02


【チャレンジ】という理想的な心理状態に入る前には必ず【ビビり】というステージを通らなければならない。

だから、【ビビり】を感じたらそれだけ集中力が高まっている証拠だし、ビビることが多くナーバスと呼ばれる選手のほうがより短期間でメンタル・タフネスの技術をマスターする可能性が高い、とある。

そういえば、通算868本ものホームランを打った王さんでも毎年シーズン前には「今年は1本も打てないかもしれない」とビビっていたというし、1990年代最強だった頃の明大ラグビー部の選手たちは、雌雄を決する早明戦の前には緊張のあまり泣きながらピッチに出てきた。

緊張することは悪いことではなく、それをうまくコントロールすることがベストパフォーマンスへの近道なのだと知った。

そして、「メンタル・タフネスは天性の素質ではなく、練習によって身につけることができる技術だという言葉が向上心ある若者に希望を与える。


ぜひ、ご一読を。