(5)クイックモーションを使う

盗塁阻止は投手と捕手の共同作業だ。

●投手の投球動作
●投手の球速
●捕手の送球動作
●捕手の球速

この4つのうちの2つが遅かったら走者にフリーパスを渡してしまったようなものだ。
走られまくって試合にならない。

遅いものが1つなら何とか勝負できるかもしれない。
しかし、成功率5割の盗塁なら3割バッターに打たせるより確率は高いから、ベンチはそのサインを出すことを躊躇しないだろう。

さて、速球の球速は決まっているから、投手が取り組むべきはクイックモーションの習得である。

クイックモーションというのは盗塁阻止のための素早い投球動作のことだ。
具体的には、セットポジションからの始動直後、軸足に体重を乗せる時間を短くする。
それには、左足(右投げの場合)を高く上げず軸足の前に蹴り出す方法が一般的だ。
こうして素早く軸足に体重をかけると、その反動で次の瞬間にはホームに向かって体重移動が始まる。


楽天・野村監督をして「世界一クイックモーションの早い投手」と言わしめた阪神・久保康友投手

ここで大事なのは焦って左肩を早く開かないこと。
球速や制球力を犠牲にしてまで投げ急ぐことは本末転倒だ。
投手がアウトを頂くのはバッターというお客様なのだから、そちらへの対応が御座なりにならないようにしたい。

とは言っても、足の速い走者を1塁に置くと、どうしても気になって制球を乱しがちだ。
そんな時、僕はこう考えることにしている。

「キャッチャーが送球しやすいストライクを投げよう」

こうして投球に集中することで、無駄に走者をためることを避けられる。
所詮スタートを切られたらキャッチャーに任せるしかないのだから、やるべきこと(けん制やセットの長さを変える)をやったらあとは投球に集中しよう。



ところで、クイックモーションにはもうひとつの使い道がある。
クイックを使ってバッターのタイミングを外すのだ。
バッターのタイミングを外すといえば投球の緩急だが、それに投球動作の緩急を加えるとより効果的だ。

走者が2塁や3塁にいてクイックが必要ない場面でも、ランダムにクイックで投げてみたり、追い込んでからの勝負球のみクイックを使ったりする。
毎回走者は出すがなかなか点を取られない“打たれ強い”投手は、セットポジションをこんな風に利用しているものだ。