【音楽の政治学】
1970年代後半から80年代にかけ、日本のプロレス界を席巻した「千の顔を持つ男」、ミル・マスカラスというメキシコの覆面レスラーがいた。当時はプロレスファンならずとも、1度はその姿をテレビや雑誌で見たことがあるであろう人気者だった。入場の際、スポットライトを一身に浴びながらかかるテーマ曲が「スカイ・ハイ」だった。
ブルーザー・ブロディ、スタンハンセン、ジャンボ鶴田…。大のプロレスファンだっただけに、それぞれが持つテーマ曲を聴くだけで今でも鳥肌が立つ。
日本ではプロ野球の選手がバッターボックスに立つたびに、応援団が選手のテーマ曲を演奏するのが当たり前になっているが、プロレスが入場テーマ曲の火付け役だったのではないか。
所変わって、米ワシントンのホワイトハウスでは、歴代の大統領に引き継がれている「入場曲」ともいえる曲がある。「ヘイル・トゥー・ザ・チーフ」(大統領に敬礼!)だ。以下のサイトで聴くことができる。(http://www.marineband.usmc.mil/downloads/audio/Hail_to_the_Chief.mp3)
この曲は今でこそ、大統領就任式などで、大統領を象徴する曲として演奏されるが、昔から大統領の「入場曲」として認知されてきたわけではなかった。もともとは、スコットランドの作家、ウォルター・スコットのオペラ「湖上の美人」を編曲したもので、スコットランド文化の薫り漂うメロディーラインだ。
米国で本格的にお目見えしたのは1829年。7代大統領、アンドリュー・ジャクソン(29~37年)が首都ワシントン近くのチェサピーク湾の運河完成式典に出席した際、に海兵隊が演奏した。
興味深いのは、これが大統領の曲として定着した理由だ。そこには、2人のファーストレディーの意向があった。
米海兵隊所属の音楽隊によると、10代大統領ジョン・タイラー(41~45年)のジュリア夫人が曲を気に入り、パーティーのたびに演奏するよう海兵隊に依頼した。11代大統領ジェームズ・ポーク(45~49年)のサラ夫人の場合は、ほとんどジョークのような使い方だった。サラ夫人は海兵隊の音楽隊にこう言った。
「うちの主人は影が薄いから、パーティー会場に現れてもだれも気づいてくれないの。だから、この曲をかけてちょうだい」(ワシントン 佐々木類)
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