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東海大を破り神宮大会初優勝、両手を天に突き上げる早大・斎藤投手に駆け寄る市丸捕手(写真:産経新聞)
【佑&雄通信】

 やはり斎藤佑樹は、何かをもっているスターだった。11月13日から6日間(雨天順延含む)の日程で行われた第41回明治神宮野球大会で、早大は悲願の初優勝を成し遂げた。大学生活最後の大会だった斎藤も、決勝戦で胴上げ投手となってV締め。「日本一」の称号を残し、7年間過ごした「ワセダ」からプロの世界へ旅立っていく。(小川寛太)

 ■小学6年以来の大役

 今季の学生野球の最後を締めくくる明治神宮大会。今秋の東京六大学野球リーグで優勝し、同リーグ代表として出場した早大は、組み合わせ抽選会で「1」を引き、100代目主将の斎藤が選手宣誓を行うことが決まった。

 選手宣誓は、小学6年以来のことになったという斎藤。約1週間前から、マネジャーらと内容について話し合い、時間を見つけてはつぶやきながら頭にたたき込んできたという。

 12日に明治神宮会館で行われた開会式では、選手全員を代表して壇上に立ち、「神宮球場という素晴らしい舞台でプレーできることを誇りに思い、感謝の気持ちを忘れず、相手を尊重し、学生らしく全力でプレーすることを誓います」と宣誓。終了後、満面の笑みをみせた斎藤は、マウンド上よりも緊張したことを打ち明け、「言葉を間違えないで言えたのでよかった。大舞台でのこういう経験を、今後の野球でもピンチのときに生かせたらいい」と話した。

 開会式前には、全選手で行った明治神宮への参拝で、代表して玉ぐしを奉納。身も心も清められ、最後の大会へのスタートを切った。

 早大の初戦の相手は、北陸・東海3連盟代表で愛知大学リーグの愛知学院大。関東5連盟第1代表で首都大学リーグの東海大や、東都大学リーグの国学院大など優勝候補とは決勝まで当たらない組み合わせとなった。

 ■2戦連続先発で好投

 愛知学院大戦は、大会2日目の14日に行われ、斎藤が先発。主催者側は観客の増加を見込んで、この大会では33年ぶりに外野席を開放する対応を取った。約2万2000人を集めた試合で、一回に先頭打者をいきなり四球で出したが、斎藤は牽制(けんせい)で走者を刺すと、「ギアが上がった」。六回には味方の失策で三塁まで走者を進めたが、相手の中軸をきっちり押さえ、6回を投げて4安打7奪三振の無失点投球。それでも、「まっすぐが良くなかったので修正したい。変化球でカウントが取れたのでよかった」と強調した。

 今大会には、10月のプロ野球ドラフト会議で1位指名を受けた選手が5人登場。前日の13日には、楽天1位の塩見(八戸大)が、関西国際大にサヨナラ負けする不覚を取っていた。「内容うんぬんじゃなく、(ドラフト1位の)プレッシャーを感じていた。それに負けたと思う」と塩見は吐露。その話を聞いた斎藤は、けげんな表情をみせた上で、「(重圧は)ないですね。なんか全然緊張しなかった。久しぶりに楽しめた感じです」とまで言ってのけた。

 準決勝は16日、関東5連盟第2代表で神奈川大学リーグの神奈川大と対戦。神奈川大は、1回戦で四国・中国3連盟代表で中国地区大学リーグの環太平洋大に逆転勝ちし、2回戦で、関西5連盟第1代表で関西六大学リーグの龍谷大にも快勝してきた。

 早大は中1日ながら、斎藤が連続して先発。5回まで毎回三振を奪う好投を見せたが、打線も神大先発の板谷を打ち崩せない。1点リードで迎えた五回、斎藤は先頭打者を四球で出し、この試合初めて無死の走者を背負うと、犠打で二塁に進められた後、左越えの適時二塁打を浴びて同点とされた。

 この回でマウンドを降りた斎藤は、5回3安打6奪三振。球数も69球にセーブした。チームは八回に3点を勝ち越し、西武1位の大石達也も好投。順調に決勝進出を決めた。

 決勝の相手は、関西第2代表で阪神大学リーグの関西国際大と、九州3連盟代表で福岡六大学リーグの九州産業大を下してきた東海大。エースの菅野智之は、今夏に学生最速の157キロを記録し、来秋のドラフト1位指名が確実といわれる逸材。巨人1位の沢村拓一(中大)から「おまえが(大学球界を)引っ張っていけよ」と言われたほどで、斎藤も「本当にいい投手だと思う。確実に来年のドラフト1位でしょうね。いい投げ合いをしたい」と意気込みを語っていた。

 準決勝終了直後から、両チームは心理戦を始めていた。斎藤が「(3年生の菅野は)最後に負けて、『もう1年頑張らないと』と思った方がいい」と冗談めかして話すと、東海大の横井人輝監督は「(決勝戦は)彼しかいない」と菅野の先発を示唆し、「向こうも出てこないかな、10番」と斎藤の先発を希望。神宮球場で本人とすれ違うと、「明日も(先発で)出てこい」と伝え、斎藤が「はい」と応える一幕もあったという。

 ■「もっていないといったらうそ」

 雨天順延を挟んで18日に行われた決勝戦の先発マウンドに、斎藤の姿はなかった。大学生活ラストゲームで、早大の初優勝がかかった舞台。応武篤良監督は、斎藤に「最後にマウンドにいてほしい」と伝えていた。先発は広島1位の福井優也。菅野との投げ合いは、緊迫の投手戦となった。

 先制したのは東海大。二回に、2安打に敵失を絡めて1点をもぎ取った。それでも、福井は続く1死二塁の場面で連続三振を奪って切り抜けると、6回を7奪三振1失点。六回に1死二、三塁の場面を招いたが、追加点を許さず、マウンドを大石に引き継いだ。

 2回を投げた大石は、4者連続を含む5奪三振で完璧(かんぺき)な救援。すると、五回まで1安打に抑えられていた打線も六回、2死満塁の好機を作り、打席に入った4番の山田が高めのカットボールを見逃さず、右前に2点適時打を放ち逆転した。

 菅野は、2失点(自責点0)しながら、5安打に抑えて完投。最速155キロを記録し、135球を投げ抜いた。

 1点リードで九回を迎えた早大は、満を持して斎藤が登板。4番からの好打順だったが、連続三振を奪うと、最後の打者も三ゴロに打ち取り、ゲームセット。マウンドで両腕を高々と上げた斎藤を中心に、早大ナインは歓喜の輪を作り、優勝の喜びを分かち合った。

 優勝の歓喜にわく観客席を前にして、斎藤は涙を抑えきれなくなり、しゃがみ込んだ。うれし涙を枯らした後、勝利インタビューに臨んだ斎藤は、約1万6000人の観客に向かって「今日限りで卒業しますが、本当にワセダに来てよかった。アマチュア野球は野球界の原点。上のステージでもエンターテインメントできるよう頑張っていきたい」とあいさつし、大きな歓声を受けた。

 試合後、「うれしい。すごくうれしい」と続けた斎藤。4年間で学べたことについては、「一生懸命やれば、神様が見ていてくれること」と話すと、3年生で投球フォームを崩すなど伸び悩んだ時期も経験し、「4年間は山あり谷ありで、谷の方が多かった」とも。さらに「もってないといったらうそになる」と、サッカーの本田圭佑らがインタビューで使い、今年の流行語大賞の候補にもなっている「もってる」を引用し、自身の強運ぶりを明かした。

 スタンドから大学最後の雄姿を見守った父、寿孝さんも、感慨深そうに巣立ちの時期を迎えた息子に視線を送り、「最後まで楽しんでみさせてもらえました。家ではリラックスして、4年間の疲れを取ってあげたい」と笑顔。さらに、日本ハムの本拠地、北海道についても「いい経験になる。日本はそんなに広くないので、北海道にも応援に行って、感謝の念を持って見てみたい」と、今後への思いも話した。

 大学を最高の形で締めくくった斎藤は、次のステップに挑戦する決意を固めている。すでに、プロ入りに向けてトレーニングも始めている。7年間着続けた「ワセダ」のユニホームを脱いでも、斎藤佑樹は野球界のみならず、日本中の注目を集め続けていく。



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