今回はプールBに属し、昨年秋の予選を突破し、初の本選出場を果たしたWBCチェコ代表について紹介します。
チームロースター
投手陣は昨年秋のWBC予選でメンバー入りした選手が本選にも出場する。
予選で10.1イニング/防御率1.74と好投し、国内リーグで遊撃手もこなす二刀流右腕、マーティン・シュナイダー。予選フランス戦で4回無失点の右腕、ルーカス・エルコリ。21年U-23ワールドカップで2試合に先発し、防御率2.40の右腕、オンドレイ・サトリア。アメリカ出身で国内リーグで兼任コーチとしても活躍する左腕、ジェフリー・バルトが先発候補に挙がる。
また昨年国内リーグで最多勝を挙げた右腕、フィリップ・チェプカや東京五輪予選やU-23ワールドカップにも出場した右腕、ルーカス・フルーフも候補だ。
リリーフ陣は昨年の予選で好投したメンバーが揃う。
予選で2試合防御率0.00を記録し、現在はジョージア工科大学でプレーする速球派右腕、ミハル・コバラ。国内リーグで抜群の奪三振率を記録する左腕、ヤン・トメク。マイナーでのプレー経験があり、国内リーグで本塁打王受賞歴もある長身右腕、マレク・ミナリク。アメリカの大学へ留学し、昨年予選でも好投した140キロ後半の速球が武器の右腕、ダニエル・パティシャークが軸となる。
野手陣は予選で活躍した選手に元メジャーリーガーとチェコにルーツを持つ選手が加わった。
予選で打線の軸となったのは、マーティン・セルベンカ。
2021年までマイナーでプレーし、3Aまで昇格した実績がある捕手で予選では4番として打率.375、2本塁打、OPS1.225と、攻守に渡って軸となる選手だ。
その他にも昨年7月まで1Aでプレーし、予選で打率.357、2本塁打、OPS1.312と活躍した遊撃手、ヴォイチェフ・メンシクやヴォイチェフの兄で予選で2本塁打を放った外野手、マチェイ・メンシク。予選で2本塁打、OPS1.020の強打の一塁手、マーティン・ムジークなど予選突破に大きな貢献した打者たちが本選にも出場する。
本選からはチェコにルーツを持つ選手が加わった。
1人目は、ウィリー・エスカリ。
父はキューバ系アメリカ人、母はチェコ出身の内野手で22年からアメリカ独立リーグでプレーしている内野手だ。大学通算60盗塁を記録した俊足に加えて、二塁を中心に遊撃・三塁もこなすユーティリティーとして期待がかかる。
2人目はエリック・ソガード。
メジャー通算815試合に出場し、通算551安打を記録した二塁手でアスレチックス時代には安定した守備力や脚力を武器に2度の地区優勝に貢献。チェコ代表においては精神的な支柱となる選手だろう。
ソガードの母親がチェコ出身でソガードは昨年2月にチェコに帰化。WBC予選はコンディション不良のため、合流できなかったが本選から代表に合流することが発表された。
チェコに野球が伝わったのは1920年代頃、その後第2次大戦を挟み、1960年代ごろから本格的な指導が行われるようになったとされている。
欧州の野球を牽引しているのはオランダ、イタリア、近年強化が進むイスラエル、中南米系の移民が多数加わるスペイン。チェコも欧州では上位に位置する国だ。
ただオランダであればキュラソーやアルバの野球が盛んなオランダ領の島出身者。イタリアであれば国籍の取得がしやすい背景からイタリア系アメリカ人選手、ベネズエラ人選手が代表に加わりやすく、イスラエル、スペインも同様な手法がチーム強化に繋がりやすいとされ、一方のチェコは大半が国内リーグでプレーするチェコ人によって代表を編成する事が多く、二重国籍者が少ない事はデメリットともされている。
国内リーグは週末の2試合開催という関係もあり、消防士、大工、教師などほかの職に就きながら野球を続けている選手たちが多く、環境面でも厳しい面があるのも事実だ。
ただその中でも上位を脅かすことは多く、2019年欧州選手権ではキュラソーやアルバの選手も加わったオランダを破ったり、東京五輪予選では元メジャーリーガーなども擁するイスラエルに勝利。また2017年WBC予選ではメジャーリーガーがメンバー入りしたメキシコに敗れたが、1-2の僅差に持ち込んだという経験もある。
また2007年北京五輪プレ大会では日本とも対戦し、延長戦までもつれる大接戦を演じた。
そして昨年秋のWBC予選では中南米系選手を揃えたスペインや元メジャーリーガーが複数いたドイツを破り、初のWBC本選出場を勝ち取った。
この初の快挙にチェコ代表のドキュメンタリー映画が公開されたり、国内でも大々的に報じられるなど、チェコ国内でも注目を集めるようになってきている。
実際昨年12月にはチェコ人の18歳の投手が、アリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結ぶなど大きな可能性を持った選手たちが誕生し、上位カテゴリーの国々へ挑戦する事も増えていくだろう。
初のWBC本選進出を勝ち取り、メジャーリーガーが多数揃う日本とも対戦の機会が待ち受けている。欧州野球の夢とロマンが詰まっているチェコ代表の戦いに大きな注目をしていきたい。
注目選手
マーティン・シュナイダー 投手 スカコニ・オロモウツ
豊富な国際大会出場経験を持ち、国内リーグでは遊撃手との二刀流でプレーする37歳のベテラン右腕、マーティン・シュナイダーがWBCの舞台でもチェコ代表を牽引する。
キャリアのスタートは2005年、現在も所属しているスカコニ・オロモウツでチェコ国内リーグでのキャリアをスタートした。キャリアのスタート当時から投手兼遊撃手でプレーし、国際大会でも活躍を見せた。
選手としてプレーしながらも消防士として日々の生活を送るなど、時には試合にも出れないこともあるという。
ただその中であっても2021年には投手として奪三振王、打者として本塁打王に輝くなど、選手としての実力も侮る事はできず、WBC予選ではスペインとの予選第2決定戦で6回1/3を1失点に抑え、予選突破に大きく貢献した。
サイドスローから繰り出すコーナーを丁寧に突く熟練の投球術でチェコ代表のWBC初勝利を導く。
マーティン・セルベンカ 捕手 プラハ・イーグルス
チェコ生まれの選手としては最もメジャーリーグの舞台に近づいたマーティン・セルベンカが、今代表の4番・正捕手としてチームを牽引する。
2008年にMLBがヨーロッパで行ったトレーニングキャンプに参加し、翌年1月にクリーブランド・インディアンスとマイナー契約を結び、プロ入りした。
当初は苦労しながらも徐々に成績を伸ばし、2018年ボルチモア・オリオールズへ移籍すると、2Aで97試合打率.258、15本塁打、60打点を記録。翌年には3Aに初昇格といよいよMLBへの道も見えつつあった。
しかし2020年に新型コロナウイルスの影響でマイナーリーグの開催が中止となり、2021年も3Aで72試合に出場したが、昇格する事は果たせず、同年オフにチームを離れ、チェコ国内へ復帰した。
復帰した2022年シーズンは、打率.424、15本塁打と格の違いを見せつけ、リーグ本塁打王を受賞した。そして9月にはWBC予選へと出場した。
予選では4番打者として打率.375、2本塁打、OPS1.225とチームを牽引し、チェコを初の本選進出に導いた。
自慢の打撃を武器にチェコ代表にWBC初勝利を呼び込む。
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