今シーズンは2位へ躍進を果たし、来季は1998年以来のリーグ優勝・日本一を狙う横浜DeNAベイスターズ。
今季の躍進を支えたのは中継ぎ陣の活躍。
今季セリーグの登板数上位にはDeNAから4名がランクイン。そのうち1・2位は70試合以上に登板した伊勢、エスコバーという凄まじいフル回転ぶりでした。
山﨑康晃はリーグ3位タイの37セーブを挙げ、今オフ6年契約を結んで残留を発表。その他入江、平田、田中が45試合以上に登板するなど活躍しました。
一方でここまでのフル回転ぶりであれば、当然負担も大きく、来季も同じような活躍が出来るのかというのは懸念もある部分とも言えます。
そんな中で11月28日、今季アリゾナ・ダイヤモンドバックスで29試合に登板し、メジャー通算144試合に登板した経験を持つJ.B.ウェンデルケン投手を獲得したと発表しました。
【DeNA】ウェンデルケン獲得発表 1年1.2億円 今季29試合登板(日刊スポーツ)
DeNAは28日、今季ダイヤモンドバックスでプレーしたJ.B.ウェンデルケン投手(29)を獲得したことを発表した。
推定年俸は1億2000万円で、1年契約を結んだ。
16年にアスレチックスでメジャーデビュー。メジャー通算144試合に登板し、10勝6敗12ホールド2セーブ、防御率4・00と豊富な経験を誇る。
今季はダイヤモンドバックスで29試合に登板し、2勝1敗1ホールド、防御率5・28。7月にメジャー40人枠から外れ、マイナーに降格した。
今季、3Aでは20試合に登板し、5勝1敗2ホールド4セーブ、防御率2・63だった。
今季は山崎が37セーブを挙げ、セットアッパーの伊勢、エスコバーがともに70試合を超え、入江もシーズン終盤は勝ちパターンに入った。25年ぶりのリーグ優勝に向け、鉄壁のリリーフ陣を作り上げる。
今回は、DeNAが獲得を発表したJ.B.ウェンデルケンについて紹介します。
メジャー通算144試合登板のリリーフ右腕 今季はメジャーで29試合防御率5.28を記録
J.B.ウェンデルケンはアメリカ合衆国・ジョージア州出身の29歳。右投右打の投手です。
2012年MLBドラフト13巡目(全体421位)でボストン・レッドソックスから指名され、プロ入り。契約後に傘下ルーキー級でプロデビューを果たし、13試合2勝0敗2S、防御率1.27、28奪三振を記録した。
2013年7月30日に3球団が絡む三角トレードでシカゴ・ホワイトソックスへ移籍。移籍後は1A/1A+でプレーし、移籍前の3球団を含めた合計で36試合2勝2敗12S、防御率3.42、78奪三振を記録した。
2014年は1A+でプレー。27試合7勝10敗、防御率5.25、129奪三振を記録した。
2015年は2A/3Aでプレー。2球団合計で39試合6勝2敗5S、防御率3.20、69奪三振を記録。オフには第1回プレミア12アメリカ代表に選出され、また40人枠入りを果たした。しかし12月9日に交換トレードでオークランド・アスレチックスへ移籍した。
2016年5月8日にメジャー初昇格を果たし、同日の試合でメジャーデビュー。この年はメジャーで8試合0勝0敗、防御率9.95,12奪三振を記録。しかし9月に右肘のトミー・ジョン手術を受けて、シーズンを終えた。
2017年はトミー・ジョン手術の影響でシーズンを全休した。
2018年7月14日にメジャー契約を結んで、アクティブ・ロースター入り。この年はメジャーで13試合0勝0敗、防御率0.54、14奪三振を記録した。
2019年はメジャーと3Aを行き来したが、再昇格した9月は5試合防御率0.00と好投し、メジャーで21試合1勝1敗、防御率3.58、34奪三振を記録した。
2020年はメジャーで21試合1勝1敗、防御率1.80、31奪三振を記録した。
2021年8月10日にDFAとなると、翌日ウェイバーを経て、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに移籍した。この年は2球団合計46試合4勝3敗2S、防御率4.33、39奪三振を記録した。
2022年はメジャーで29試合2勝1敗、防御率5.28、21奪三振を記録したが、7月5日にDFAとなり、40人枠を外れると3Aへ降格。メジャーへ再昇格することはなく、シーズンを終えた。
シーズン成績
上記はJ.B.ウェンデルケンのシーズン成績です。
メジャーでは6年間プレーし、通算144試合10勝6敗2S、防御率4.00、151奪三振を記録しています。
キャリアを通して、ブレークを果たしたと言えるシーズンは2020年。この年は21試合1勝1敗、防御率1.80、11.2K/9を記録しています。
前年9月から新たにスライダー、ツーシームを多用するようになり、スライダーやツーシームで高い空振り率を記録し、チェンジアップ、カーブを更に効果的に使えるようになったことで、19年9月から翌シーズンの好投に繋がったというデータがあります。
しかし翌年以降球種の空振り率が悪化し、成績悪化に繋がってしまったという印象です。
また制球面も通算3.9BB/9と高い傾向にあります。
ただ3Aでは20試合5勝1敗4S、防御率2.63、33奪三振、12.4K/9と成績を残せており、状態自体は問題ないと言えそうです。
カット気味の高スピンの直球と高い空振り率を誇るスライダー、チェンジアップが武器
上記はJ.B.ウェンデルケンの球種別成績です。
今シーズンの投球配分は、ストレート(46.7%)、スライダー(22.5%)、チェンジアップ(16.2%)、ツーシーム(13.5%)、カーブ(1%)となっています。
まずストレートですが、今季のスピンレート2442というのはMLB平均を上回り、上位100人内に入る数値を記録しています。またツーシームを多用するようになってからボールの質がカットボール寄りになっているというデータがあります。
平均152キロを計測しながらも真っスラのような軌道という非常に癖のあるストレートになっていると言えます。
スライダーは縦、横の変化共にMLBの平均的よりも曲がっている傾向にありますが、特に横への変化が増えている傾向にあり、非常にキレのあるボールとなっています。
チェンジアップはMLBの平均的なボールよりも横への変化が大きくなっていて、良質な空振り率を示しています。またこのチェンジアップと同じ方向に変化するツーシームが非常に効果的で、投球の幅を広げる事に繋がっています。
プレー映像
↑2022年の球種別映像
↑2020年シーズンの奪三振集
映像を見ると投球フォームは特段変わった部分はオーソドックスなスリークォーターという印象です。
ただリリースポイントに関しては不安定な傾向にあり、リリースポイントの高さは5.8フィート(約1.77m)の位置で一定なのですが、ボールを離す位置が一定ではなく、非常にばらけている傾向にあります。
BB/9の値が高い傾向にあるのは、不安定なリリースポイントにあるのではないかと思われます。
ただ各球種は良質であり、三振も奪えるクオリティがある事は十分評価ができる内容で、勝ちパターンの一角を任せるだけの十分な実力があると言えます。
25年ぶりのリーグ制覇、日本一に向けて強力な中継ぎ陣にまた大きな手札が加われるか注目です。