2022年シーズンは一時最大貯金18を積み上げながらも終盤失速し、4位に沈んだ東北楽天ゴールデンイーグルス。
NPB史上初となる貯金18から貯金0という成績急落を招いた原因の一つと考えられるのは攻撃陣です。
浅村栄斗、島内宏明、辰巳涼介が2桁本塁打を放ったものの、全体的に打線は低調に終わり、規定打席到達者で打率3割に到達した打者は不在という状況。
また攻撃の軸として期待されたホセ・マルモレホス、クリス・ギッテンスも不振や故障による戦線離脱により、二人合わせて7本塁打しか記録できないという苦しい状況でした。
来シーズンを見据える上でも、打線の強化は至上命題と言えます。
そんな中で12月1日、今シーズンワシントン・ナショナルズでプレーし、MLB通算130本塁打を放ったキャリアを持つマイケル・フランコ内野手を獲得したと発表しました。
楽天 前ナショナルズ、マイケル・フランコの獲得発表!メジャー130発の大砲(スポニチ)
楽天は1日、来季の新外国人としてナショナルズからFAとなっていたマイケル・フランコ内野手(30)と入団に合意したことを発表した。
ドミニカ共和国出身で、メジャー通算130本塁打の実績を誇るパワーヒッター。中軸を担える右の強打者は最大の補強ポイントで、4位からの巻き返しのキーマンとなり得る強力なピースが加わることになった。
フランコは14年にフィリーズでメジャーデビューし、16年から3年連続で20本塁打をマークした。ロイヤルズ、オリオールズを経て、今季はナショナルズで103試合で打率・229、9本塁打、39打点の成績を残しており、楽天は貴重なポイントゲッターとして獲得に動いていた。
主に一塁と三塁を守れるが、DHでの起用も想定される。今季の打線は浅村を除けば左打者が多かっただけに、狙い通りに右打ちの新助っ人の獲得に成功。クリス・ギッテンス内野手(28)の残留もすでに決まっており、来季の「犬鷲打線」の輪郭が固まりつつある。
フランコは球団を通じ「楽天イーグルスの一員となり、その輝かしいページに参加できることになり、とてもエキサイトしています。ベストを尽くし、チームの勝利のために一生懸命頑張ります」とコメント。「イーグルスが私に関心を持ってくれたことに感謝し、来シーズン、素晴らしいファンの皆さまと一緒に、チャンピオンを目指し戦えることを楽しみにしています。応援よろしくお願いします」と決意を表明した。
今回は、楽天が獲得を発表したマイケル・フランコについて紹介します。
MLB通算130HRを放つ右の強打者 今季もメジャーで103試合に出場
マイケル・フランコはドミニカ共和国・アスア州出身の30歳。右投右打の三塁手、一塁手です。
2010年にフィラデルフィア・フィリーズと契約し、プロ入り。契約後は傘下ルーキー級の球団でプロデビューを果たした。
2013年は1A+、2Aの2球団で合計134試合打率.320、31本塁打、103打点を記録し、フィリーズ傘下のマイナー最優秀選手賞を受賞。またオールスター・フューチャーズゲームの世界選抜にも選出された。
2014年は3Aで133試合打率.257、16本塁打、78打点を記録。また9月のロースター拡大に合わせて、メジャーに初昇格。
9月2日の試合でデビューを果たすと、この年は16試合打率.179、5打点を記録した。
2015年は5月15日にメジャーに昇格すると三塁のレギュラーを獲得。6月にはナ・リーグの月間最優秀新人に選出。シーズンでは80試合打率.280、14本塁打、50打点を記録した。
2016年はメジャーでフルシーズンを過ごし、初の規定打席に到達。152試合打率.255、25本塁打、88打点を記録。また25本塁打はチームトップタイの本数だった。
2017年はメジャーで152試合打率.230、24本塁打、76打点を記録した。
2018年はメジャーで131試合打率.270、22本塁打、68打点を記録した。
2019年はメジャーで123試合打率.234、17本塁打、56打点を記録した。この年のオフにノンテンダーFAとなると、同月27日にカンザスシティ・ロイヤルズと1年契約を結んだ。
2020年は新型コロナの影響で短縮シーズンとなったが、60試合打率.278、8本塁打、38打点を記録した。またこの年のオフにノンテンダーFAとなった。
2021年3月17日にボルチモア・オリオールズと1年契約を結んだ。この年は104試合打率.210、11本塁打、47打点を記録したが、8月23日にDFAとなり、8月27日に自由契約となった。
オフの12月にワシントン・ナショナルズとマイナー契約を結んだ。
2022年は開幕ロースター入りを果たし、103試合打率.229、9本塁打、39打点を記録した。しかし8月26日にチームから放出され、自由契約となり、そのままシーズンを終えた。
シーズン成績
上記はマイケル・フランコのMLB/3Aでのシーズン成績です。
やはり際立つのはメジャーでの本塁打数。2015年からメジャーに定着を果たすと、6度の2桁本塁打(内3度のシーズン20本塁打超)を記録しています。
また短縮シーズンを含めても、毎年メジャーでは100試合以上のシーズンを過ごすなど、メジャーでしっかりとした実績と経験を積み上げてきたというのが分かります。
ただ2021年からはシーズン途中で自由契約となり、退団するというパターンが続いており、一時期と比べては出場数や成績も下降気味であると言えます。
ただこれまでの実績や経験というのは大きな武器と言えそうで、楽天にとっては大きなパワーヒッターの加入となりそうです。
ストレート系に強い傾向 一方で変化球でのK%増加やゾーン管理は気がかり
上記はマイケル・フランコのMLBでの球種別成績と打球傾向やアプローチ面のデータです。
球種別成績で際立っているのは、ストレート系への対応力の高さです。
ストレートとツーシームに対するK%はいずれも10%を切っています。またコンタクト率、ストライクゾーンでのコンタクト率も90%を超えています。
ストレート系への対応力に関しては、十分なものがあると言えそうです。
また打球速度はMLBの平均よりも高い傾向にあり、最速180キロとMLB上位級の数値を残しているというデータもあり、捉えた時の打球速度は相応のレベルを有しています。
また打球割合を見ても引っ張りを示すPull%が常時40%を超えるなどプルヒッタータイプであると言えます。
ただ気がかりなのは、変化球へ対するK%が非常に高い事です。カットボールを除けば、いずれの変化球も20~30%台と非常に高い数値となっています。またコンタクト率は60%台、ストライクゾーンのコンタクト率は70%台と低い数値が並んでいます。
またゾーン管理という点についても、ボール球に対するスイング割合を示すChase%は通算32.5%、今季はキャリアワーストの38.5%と大幅に悪化しています。
NPBでは徹底的に低めを突いてくる傾向にあるだけに、フランコがどこまで忍耐強く耐えられるかが課題となりそうです。
三塁は失策は少なめも範囲は狭い 一塁はイニング数が乏しくどの程度の実力か不透明
上記はマイケル・フランコのMLBでの守備成績です。
メジャーでは三塁手として通算855試合/7285.0イニングをこなしています。ある程度失策数も抑えられています。
ただ気になるのは守備範囲を示すRngR。プラスだったのは3シーズンのみでそれ以外のシーズンではいずれもマイナスを示しています。
こういった点から考えると三塁の守備範囲は狭い傾向にあると言えるでしょう。ただスカウティングレポートではハンドリングやスローイングに関しては一定の評価を与えられているため、ある程度はこなせそうです。
一塁では通算19試合/89.2イニングをこなしています。指標上は良好に思えますが、年間数試合しかプレーしていない点を考えるとどこまでの技量があるのかが不透明な印象です。
プレー映像
↑2022年シーズンのプレー映像
↑三塁守備
まず打撃の映像を見ると、打撃フォームはノーステップ気味のステップでスイングをしているのが分かります。
また今季放ったホームランはすべてレフト方向であり、高めのゾーンに来たボールをとらえての物となっています。基本的には高めのゾーンが得意という傾向にあるでしょう。
ただノーステップ気味でありながら、捉えた時の打球速度は抜群のポテンシャルを秘めている印象です。
守備の映像を見ると、肩の強さというのが目立ちます。スカウティングレポートでも評価されているほどですから、この点は信頼できる点だと思われます。
また守備範囲内であれば打球処理自体はしっかりできている印象もあります。
今季の楽天は三塁手の固定に苦慮した時期もあっただけに、フランコがハマれば大きな補強になります。一方でゾーン管理の粗さなど課題になるであろう部分も見られるだけに、どの程度対応できるかに注目したいところです。