2022年シーズンはリーグ5位に沈み、来季からは新井貴浩新監督の体制で巻き返しを図る広島東洋カープ。
カープの今シーズンの課題となったのは攻撃陣です。
チーム打率.257、チーム得点圏打率.288はリーグ1位でしたが、チーム本塁打91、チーム長打率.364、チームOPS.673はいずれもリーグ下位に沈んでいます。
またチーム本塁打数もマクブルームの17本が最多となり、長打力の強化は必須。また今季三塁で118試合に出場した坂倉が来季から捕手に専念するため、三塁の補強は必須と言える状況でした。
そんな中で、○○月○○日、今季オークランド・アスレチックスでプレーし、メジャー通算54本塁打を記録しているマット・デビッドソン内野手を獲得したと発表しました。
【広島】メジャー2年連続20発、デビッドソンと契約合意「プレーが待ちきれません」
広島が17日、新外国人マット・デビッドソン内野手(31)との契約が合意したことを発表した。
契約金は35万ドル(約4900万円)、年俸55万ドル(約7700万円)プラス出来高。背番号は95に決まった。
デビッドソンは今季3Aで86試合打率3割1分、32本塁打、66打点。メジャーでは17年に26本塁打をマークするなど18年まで2年連続20本塁打。メジャー通算311試合打率2割2分、54本塁打、157打点。
球団を通して「広島でプレーできることはとても楽しみですし、感謝しています。素晴らしいシーズンにできるように準備をしていき、プレーすることが待ちきれません。応援よろしくお願いします」とコメントした。
今回は、カープが獲得を発表したマット・デビッドソン内野手について紹介します。
メジャー通算54発、マイナー通算226発と屈指の長打力を誇る強打の三塁手
マット・デビッドソンはアメリカ合衆国・カルフォルニア州出身の31歳。右投右打の三塁手兼一塁手です。
2009年MLBドラフトで1巡目補足指名でアリゾナ・ダイヤモンドバックスから指名され、契約。傘下A-級の球団でプロデビューし、72試合打率.241、2本塁打、28打点を記録した。
2010年はA級、A+級の2球団でプレーし、2球団合計で134試合打率.272、18本塁打、90打点を記録した。
2011年はA級で135試合打率.277、20本塁打、106打点を記録した。
2012年は2Aで135試合打率.261、23本塁打、76打点を記録した。
2013年は3Aに初昇格。3Aでは108試合打率.348、16本塁打、68打点と結果を残し、8月11日にメジャー契約を結び、同日の試合でメジャーデビューを果たした。
この年はメジャーで31試合打率.237、3本塁打、12打点を記録した。この年のオフにトレードでシカゴ・ホワイトソックスへ移籍した。
2014年はメジャー昇格を果たせず、3Aで130試合打率.199、20本塁打、55打点を記録した。
2015年もメジャー昇格を果たせず、3Aで141試合打率.203、23本塁打、74打点を記録した。
2016年は3年ぶりにメジャーに昇格するもわずか1試合の出場に留まり、3Aで75試合打率.268、10本塁打、46打点を記録した。
2017年はDH、三塁、一塁で出場機会を掴むと、メジャーで118試合打率.220、26本塁打、68打点を記録した。
2018年はメジャーで123試合打率.228、20本塁打、62打点を記録。またこの年は投手として3試合に登板したことで大谷翔平と並んで「3登板15本塁打」を達成。オフの11月にノンテンダーFAとなった。
2019年2月にテキサス・レンジャーズとマイナー契約を結んだ。この年は3Aで124試合打率.266、33本塁打、101打点を記録した。オフの11月にFAとなった。
2020年はシンシナティ・レッズとマイナー契約を結んだ。7月24日にメジャー契約を結び、20試合打率.163、3本塁打、11打点を記録した。オフの10月にFAとなった。
2021年2月にロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を結んだ。この年は3Aで84試合打率.294、28本塁打、81打点を記録した。オフの11月にFAとなり、同月22日にダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ。
2022年は4月21日にメジャー契約を結んだが、5試合打率.100、1本塁打、1打点と結果を残せず、5月9日にFAとなり、同日にオークランド・アスレチックスとマイナー契約を結んだ。
アスレチックスでは6月7日にメジャー契約を結んだが、8試合打率.167、1本塁打、2打点と結果を残せず、同月22日に3Aに降格した。3Aでは86試合打率.310、32本塁打、66打点を記録した。
シーズン成績
上記はマット・デビッドソンのMLB/3Aでのシーズン成績です。
メジャーでは通算6年間で311試合打率.220、54本塁打、157打点、OPS.720を記録。今シーズンはMLB2球団で13試合打率.147、2本塁打、3打点と結果を残せませんでした。
ただ長打力という点ではメジャーで17年に26本塁打、18年に20本塁打を放ち、3Aでは通算163本塁打、マイナー全体では通算226本塁打と抜群のパワーを示していると言えます。
ただ一方で三振数も非常に多く、BB/K(数値が高いほど四球を選べる)ではメジャー通算0.23とほとんど四球を選ぶことが出来ていません。また三振率もMLB通算34.3%とかなり数値が高く、選球眼や打率に関しては期待薄という印象です。
MLB屈指のバレル%は良質 ストレートへの対応良化がカギに
上記はマット・デビッドソンの球種別成績/打撃傾向です。
デビッドソンの打撃傾向で高く評価できるのはBarrel%の高さ。このBarrel%は近年のMLBにおいて重要視されている打球速度と角度の中でもホームランになる確率の高い打球を打っている事を示しています。
今季のBarrel%は14.3%となっていて、今季34打席と数少ない打席数とはいえ、MLB平均6.7%を大きく上回る数値を叩き出しています。
また打球速度もMLBの平均を上回るなど、やはりパワー面では十分な力を持っていると言えるでしょう。
ただ気になるのは球種別成績。
ツーシームを除けばいずれもK%は25%以上。ツーシーム以外のコンタクト率も低い傾向にあります。ただし、ストライクゾーンのコンタクト率は70%台となっていてゾーン内に来ればバットには当てれるタイプではあります。
課題となるのはストレートへの対応。ただし、球速別でみると良化できる可能性があります。
95マイル(153キロ)以上→打率.165、2本塁打
90マイル~94マイル→打率.254、18本塁打
89マイル以下→打率.214、26本塁打
と早い球速帯になると明らかに対応力が落ちていると言えます。ただ95マイル以上のボールを常時投げる先発はNPBだと数限られていますし、90~94マイルであればNPBの先発投手の平均に近いものになります。
またマクブルームもこの傾向があり、2022年の活躍があっただけに、デビッドソンもストレートへの対応を良化できるかが活躍の鍵になりそうです。
一塁と三塁をこなすが、三塁の守備指標は厳しい数値も並ぶ
上記はマット・デビッドソンのMLBでの守備指標です。
MLBでは一塁で通算67試合/551.0イニング/6失策、三塁で通算77試合/614.2イニング/8失策となっています。
今シーズンは一塁は1試合/5.0イニング/0失策、三塁は9試合/63.0イニング/2失策。また3Aでは一塁は32試合/270.0イニング/0失策、三塁は9試合/63.0イニング/2失策とMLBでは三塁、3Aでは一塁での起用がメインとなっています。
三塁の守備指標は軒並みマイナスを記録し、守備率も通算.950と数値は低い印象があります。元々守備範囲が狭い傾向にあり、3Aでも年々三塁での出場機会は減っている傾向にあります。
本来は一塁で起用したほうが指標上は良いものの、マクブルームがいる現状では三塁で起用する事にはなるでしょうが、守備でのマイナスをどこまで打撃で補えるのかという点になりそうです。
プレー映像
↑2022年のプレー映像
↑2022年のMLBの打席集
↑2022年のホームラン集
打撃フォームを見ると左足のレッグキックが大きく、前足を大きく上げる動作を取り入れています。捉えた時の打球は強烈なものがあり、引っ張りだけではなく、逆方向へも長打が出ている事が分かります。
ただこのレッグキックを取り入れてからは、早いストレートへの対応が悪くなったというデータもあるだけに、NPBでもここまで大きなレッグキックでは対処できなくなる可能性もあるだけに、微調整は必要だろうという判断は出来ます。
守備に関しては、動きは素早さはそこまでない印象で守備範囲は広くないのではないかという印象があります。ただ肩の強さは一定数ある印象で、その点に関しては評価できるのではないかと思われます。
長打力という点においては、チームの課題をクリアできる可能性を持った選手であると言えます。一方で三振数の多さや選球眼の悪さなど足を引っ張る要素も多い選手ではあります。
また守備においても三塁の指標上はそこまで良くない傾向にあり、この部分でも評価を下げる可能性があるでしょう。
ただ下位打線で一発長打を持つタイプの選手が控えていると相手投手に与える影響も大きいだけに、こういうフリースインガータイプを下位で固定できると面白い存在です。