昨シーズンは3位に沈み、2022年シーズンはリーグ優勝、日本一奪回を狙う読売ジャイアンツ。
今オフはFA市場には参加せず、若手選手の育成に重点に置くという姿勢を示し、オフの補強は外国人選手の獲得に留めました。
外国人選手の補強では、メジャー通算28勝のマット・アンドリース、メジャー通算96本塁打のグレゴリー・ポランコ、米独立L2年連続MVPのアダム・ウォーカーを獲得。
しかし支配下登録枠は60名と残り10枠の空きがある状況で、育成選手の昇格以外の可能性も十分考えられる状況でした。
そんな中で2月15日、昨シーズンミネソタ・ツインズで16試合に登板し、メジャー通算46勝をマークしたマット・シューメイカー投手と契約を結んだと発表しました。
巨人がメジャー通算46勝右腕シューメーカーと契約、米でのミニキャンプに参加へ(日刊スポーツ)
巨人は15日、メジャー通算46勝で前ツインズのマット・シューメーカー投手(35)との選手契約を締結したと発表した。
背番号は「99」で、推定年俸1億5000万円。米アリゾナ州トゥーソンで予定している新外国人のミニキャンプに参加予定。
映像で確認済みの原監督は「非常に丁寧に投げていた」と好印象を口にしていた。
シューメーカーは豊かなひげがトレードマークの右腕で、13年にエンゼルスでメジャー初昇格。翌14年に球団新人記録となる16勝を挙げると先発陣に名を連ね、18年には大谷翔平と開幕ローテーションを形成した。
19年からブルージェイズに所属。昨季はツインズに移籍し、メジャー16試合3勝8敗。昨年8月に自由契約となり、シーズン終盤はジャイアンツ3Aで過ごした。
チェンジアップなどの変化球を軸とする巧みな投球術が魅力で、先発の一角に期待される。
今回は巨人が獲得を発表したマット・シューメイカー投手について紹介します
メジャー通算46勝 14年は16勝をマークし、リーグ最高勝率を記録したベテラン右腕
マット・シューメイカーはアメリカ合衆国・ミシガン州出身の35歳。右投右打の投手です。
高校・大学在学中はMLBドラフトで指名されることはなく、2008年にサマーリーグでプレーする中でロサンゼルス・エンゼルスのスカウトの目に留まり、プロ入り。
契約後はマイナーリーグでプレーし、2011年から2013年にかけて3年連続2桁勝利を達成するなど成長を続けた。
2013年9月15日にメジャー契約を結び、初昇格。9月20日の試合で先発を任されると5回無失点の好投を見せた。
2014年はリリーフとして開幕ロースター入り。先発陣の故障と不調で先発ローテ入りすると5試合で3勝0敗と好投。一時リリーフに戻ったが、7月からは再度ローテ入り。8月には6勝・防御率1.31で、月間最優秀新人と月間最優秀投手をW受賞。
規定投球回には届かなかったが27試合16勝4敗、防御率3.04を記録し、勝利数でリーグ4位タイ、勝率.800はリーグ1位に輝いた。また新人王投票ではリーグ2位に入った。
2015年は25試合7勝10敗、防御率4.46と負け越しを許した。
2016年は27試合9勝13敗、防御率3.88、143奪三振を記録。しかしシーズン終盤の試合で打球が頭部に直撃し、手術を受けるなど不運もあった。
2017年は14試合6勝3敗、防御率4.52、69奪三振を記録。しかし6月に右前腕部の神経圧迫で離脱し、手術を受けたことでシーズンを全休した。
2018年は開幕ローテーション入りを果たしたが、右前腕部の故障で手術を受け、離脱。シーズン終盤に復帰し、7試合2勝2敗、防御率4.94を記録。
オフの11月30日にノーテンダーFAとなり、同年12月にトロント・ブルージェイズと契約を結んだ。
2019年は開幕から3連勝と好調だったが、4月に挟殺プレーの際に左膝前十字靭帯を断裂する大怪我を負い、シーズンを終えた。
2020年は右肩の炎症で離脱するなど6試合0勝1敗、防御率4.71に留まり、同年オフにFAとなった。
2021年2月にミネソタ・ツインズと契約。16試合3勝8敗、防御率8.06と結果を残せず、8月3日に自由契約となった。
同年8月7日にサンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約を結んだ。移籍後は3Aで9試合4勝3敗、防御率4.83を記録した。
シーズン成績
上記はマット・シューメイカーのMLB/3Aでのシーズン成績です。
これまでメジャー通算9年間で128試合46勝41敗、防御率4.24、580奪三振、1.23WHIPを記録しています。
キャリアハイとなったのは2014年。シーズン途中から先発ローテーションに定着すると16勝をマークし、勝率.800はリーグ1位。新人王投票では2位に入るなど飛躍を遂げたシーズンでした。
以降2015年、2016年と先発ローテを守り、更なる活躍も期待されていました。しかし2017年に右腕前腕部の神経圧迫で手術を受けると2018年も同個所の手術を受け、2019年は左膝前十字靭帯断裂、2020年は右肩の炎症など故障が相次ぎました。
2021年は16試合に登板するもわずか2勝。防御率8.06、1.66WHIPと自己ワーストの成績に終わり、シーズン途中に40人枠を外され、8月には自由契約となり、ジャイアンツとマイナー契約を結んでいます。
ただ3Aでは13試合5勝3敗、防御率3.97、70.1回で71奪三振、1.15WHIPを記録するなどまだまだプレーできる力はあると証明できていたともいえます。
シューメイカーの武器と言えそうなのは制球力。21年シーズンは4.0BB/9でしたが、メジャー通算2.4BB/9、3A通算2.2BB/9と安定した制球力を有していると言えそうです。
ただ2020年は28.2イニングで8本塁打、2021年は60.1イニングで15本塁打と被本塁打数が増加傾向にある点は気になるところです。
今年36歳を迎えるという年齢面や度重なる故障が相次いだコンディション面など懸念するべき部分はありますが、まだまだ通用する可能性はあると言えそうです。
多彩な球種を織り交ぜるスタイル 昨年はどの球種でも指標が悪化傾向に
上記はマット・シューメイカーの球種別成績です。
昨シーズンの球種配分ですが、スプリット(33.3%)、スライダー(24.5%)、ストレート(24.4%)、ツーシーム(16.5%)、カーブ(1.2%)と投球の軸になっているのはスプリットです。
スプリットは通算被打率.191、通算20.6SwStr%、通算33.1K%とストライクを取るボールとして機能していると言えます。またスカウティングレポートなどでは回転数の少なさから打者の手元で鋭く沈む“スプリットチェンジ”として評されています。
スライダーはSwStr%、K%がスプリットに次いで良く、こちらの球種でもカウントを稼ぐことが出来ていると言えそうです。軌道や球速を見ると高速化が進むスライダーというよりは“昔ながらのスライダー”という印象です。
ストレートは昨年平均147.9キロ、最速152.5キロを計測。ここ数年故障が相次いではいますが球速に関しては劣化したという部分は感じられないという印象です。
ただフライを打たれる割合が前年より7.6%増加しており、またコンタクト率も前年より12.4%増加するなどストレートを痛打されている事で成績悪化に繋がった可能性があります。
ツーシームはストレートと同じ球速帯でしっかりとボールを動かすことが出来ており、フロントドアを突くボールとして機能すればNPBでも通用しそうです。
ゴロを打たせる割合が増加 しかしHardHit%、Barrel%が高い傾向に
上記はマット・シューメイカーの打球割合です。
顕著なのがGB/FBの比率。2018年ごろから1を上回るようになり、ここ3年間は1.30以上とゴロを打たせる割合が高まっている事が分かります。
スカウティングレポートなどでも「変化球をゾーンで出し入れできるコマンド力がある」と評価されており、投球術を駆使して相手を打ち取ることが出来ているのではないかと思われます。
一方で気がかりなのはHardHit%、Barrel%が高い傾向にある事です。打たせて取るというスタイルは何らかの形でバットに当てさせなければならない以上、何らかの形で打球が前に飛ぶことになります。
その中で強い打球を打たれたり、角度が付いて長打になる可能性がある打球を打たれるというのは東京ドームを本拠地とする以上はリスクがあると言えます。
どこまでボールを動かし、変化球でストライクゾーンの出し入れが出来るかがカギとなりそうです。
プレー映像
↑球種別映像
↑2021年の投球映像
映像を見ると足を大きく上げるフォームで、スリークォーター気味の腕の位置をしています。ただ走者がいてもも足を高く上げている場面も見られるため、クイック等では苦労する可能性はあると言えそうです。
球種を見るとスプリットが際立っている印象で、打者の手元で鋭く落ちる印象で決め球としてしっかり機能すれば、大きな武器になるボールと言えます。
ツーシームやスライダーのコントロールは精度が高い印象で、3種類の変化球を交えて内野ゴロを打たせることが出来れば、内野守備では安定感がある現状のチーム構成とも上手く噛み合う可能性はあると言えます。
アームアングルや投球術に長けており、そういった“技”が発揮されれば、NPBで再起する可能性は十分あると言えます。
外国人枠の激しい争いなどもあり、立場は安泰とは言えない部分もありますが、これまでの経験や技がどこまで通用するのか注目したい存在です。