2021年シーズンは8年ぶりのBクラスに沈み、新シーズンはV奪回を目指す福岡ソフトバンクホークス。
既に家庭都合により8月に退団したコリン・レイ投手の再獲得を発表。また中日からFA宣言していた又吉克樹をセットアッパー候補として獲得。また野手ではメジャー通算109発を放ったフレディ・ガルビス内野手の獲得を発表するなど、新体制で臨む2022年に向けて戦力を整えている状況でした。
しかし補強終了という明確な発言はなかったため、更なる補強の可能性もあると見られていました。
そんな中で1月5日、サンフランシスコ・ジャイアンツでプレーし、今季32試合に登板。またメジャー通算229試合、52勝を挙げたタイラー・チャトウッド投手と契約合意に達したと発表しました。
ソフトバンクメジャー52勝チャトウッド獲得「ダルビッシュから多くの話を聞いた」(西日本スポーツ)
ソフトバンクは5日、メジャー通算52勝の右腕タイラー・チャトウッド投手(32)を獲得したと発表した。背番号は12。
球団を通じて「今回日本でプレーすることになり、とてもワクワクしています。カブス時代にチームメートだったダルビッシュからも日本について多くの良い話を聞きました。ホークスという歴史ある強豪チームで日本の野球を経験できることをとても楽しみにしています」とコメントした。
2008年ドラフト2巡目(全体74位)でエンゼルスに入団。16年にロッキーズでキャリアハイの12勝。ブルージェイズとジャイアンツに在籍した昨季は救援で32試合に登板して1勝3敗1セーブ、防御率5.63だった。
大リーグ通算10年間で229試合に登板して52勝60敗5セーブ、防御率4.45。
今回は、ソフトバンクが獲得を発表したタイラー・チャトウッドについて紹介します。
メジャー通算229試合、52勝を挙げた先発右腕 今季はリリーフとして32試合に登板
タイラー・チャトウッドはアメリカ合衆国・カルフォルニア州出身の32歳。右投右打の投手です。
2008年MLBドラフト2巡目(全体74位)でロサンゼルス・エンゼルスから指名され、プロ入り。契約後に傘下ルーキー級でプロデビューを飾り、11試合に登板した。
2009年は1Aでプレー。24試合8勝7敗、防御率4.02、106奪三振を記録した。
2010年は1A+、2A、3Aでプレー。3球団合計で27試合13勝9敗、防御率2.84、109奪三振を記録した。
2011年は開幕を3Aで迎えたが、4月11日にメジャー契約を結び、同日の試合でメジャー初登板、初先発を果たした。この年はチームが先発のコマ不足に陥ったこともあり、先発ローテに定着。27試合6勝11敗、防御率4.75、74奪三振を記録。
オフの11月30日に交換トレードでコロラド・ロッキーズへ移籍した。
2012年は19試合5勝6敗1セーブ、防御率5.43、41奪三振を記録した。
2013年は20試合8勝5敗、防御率3.15、66奪三振を記録した。
2014年は4試合に登板したが、7月にトミー・ジョン手術を受け、シーズンを終了。また2015年シーズンも全休したが、ロッキーズと総額200万ドル+出来高の2年契約を結んだ。
2016年は先発ローテーションの一角を担い、27試合12勝9敗、防御率3.87、117奪三振を記録した。
2017年は33試合8勝15敗1セーブ、防御率4.69、120奪三振を記録。11月2日にFAとなったが、12月7日にシカゴ・カブスと3年総額3800万ドルの契約を結んだ。
2018年は24試合4勝6敗、防御率5.30、85奪三振を記録。しかし後半戦以降はブルペンに配置転換された。
2019年はリリーフの登板機会が増加。38試合5勝3敗2セーブ、防御率.3.76、74奪三振を記録した。
2020年は怪我による離脱が長く、5試合2勝2敗、防御率5.30、25奪三振を記録。10月28日にFAとなった。
2021年1月にトロント・ブルージェイズと300万ドルの1年契約を結んだ。
ブルージェイズでは30試合1勝2敗1セーブ、防御率5.46、32奪三振を記録したが、7月30日にDFAとなり、翌日には自由契約となった。
8月7日にサンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約を結んだ。8月17日にメジャー契約を結び、2試合0勝1敗、防御率6.75、6奪三振を記録したが、怪我の影響で離脱すると、復帰する事は叶わず、シーズンを終えた。
この年は2球団合計で32試合1勝3敗1セーブ、防御率5.63、38奪三振を記録した。
シーズン成績
上記はタイラー・チャトウッドのシーズン成績です。
メジャーでは10年間プレーし、通算229試合52勝60敗5セーブ、防御率4.45、660奪三振、1.51WHIPを記録。また今シーズンはブルージェイズ、ジャイアンツの2球団で、32試合1勝3敗セーブ、防御率5.63、38奪三振、1.47WHIPを記録しています。
キャリアを通して先発として経験を積んできた投手であり、2016年はでは自己最多の12勝をマークしています。
ただここ数年は成績が低迷し、2018年からリリーフとしての登板機会が増加。今シーズンはリリーフに専念。
ただリリーフ登板時は奪三振率が向上し、ブルージェイズでは10.3K/9を記録しています。
また被本塁打数の少なさも際立っており、通算のHR/9は0.9を記録し、過去のシーズンを見ても1を下回るシーズンのほうが多く、球界屈指の打者天国と称される球場を本拠地としたロッキーズ時代でも505.2イニングで53本塁打、0.9HR/9と被本塁打を許してないという傾向にあります。
しかしチャトウッドの大きな問題点にコントロールの悪さがあります。
BB/9は通算4.7とかなり悪いという印象が強く、2018年には被安打数よりも与えた四球のほうが多かったというシーズンもあるほどです。
原因としては球離れが極端に速い事が挙げられており、コマンド力に関しても不足しているというレポートがあります。
力強いツーシームが軸 高スピンレートのカットボールなど変化球で空振りが奪える点も強み
上記はタイラー・チャトウッドの球種別成績です。
今シーズンの投球配分はツーシーム(46.0%)、カットボール(36.2%)、ストレート(8.0%)、カーブ(6.3%)、チェンジアップ(3.6%)と投球の約8割以上がツーシームとカットボールで占められています。
ツーシームは今季最速157.5キロ、平均153.7キロを計測。MLBの平均的なツーシームよりも小さく動く傾向にあり、今季のゴロ率は56.3%、通算57.2%とゴロを打たせる球種として機能しています。
カットボールは今季最速147.7キロ、平均142.9キロを計測。空振り率、K%ともに高い数値を示しており、決め球として非常に質の高い数値を示しています。
また優れているのがスピンレート(回転数)。今季記録した2713回転というのは2021年シーズンのMLB全体6位というクオリティの高さがあり、MLBの平均的なカットボールよりも横への移動と落差があるというデータもあります。
ストレートは今季平均154.0キロを計測。またカーブ、チェンジアップは緩急をつけることが出来る上に、空振りを奪う事も出来る質を持っている点は大きな武器です。
ここ数年は成績面は不調ですが、ボール自体の質は依然衰えていないという点は期待したいところです。
優れたゴロ生産能力が光るグラウンドボーラー
上記はタイラー・チャトウッドの打球割合です。
まず特徴的なのがGB/FB。これはゴロ/フライ比率で1を基準にゴロが多ければ数字が大きく、フライが多ければ数字が小さくなる指標です。
チャットウッドはキャリアを通して1を下回った事はなく、今季2.41、通算2.17とゴロを打たせるという点においては非常に優れた技術があると言えます。
NPBで活躍できるか否かはこの指標が維持されるかどうかにあると思われます。
ゴロを打たせるタイプであるため、HardHit%は高い傾向にありますが、Barrel%は10%を切る数値に収まっており、球種別のデータでもツーシーム、カットボールと“動くボール”を主体としている事から芯を外す投球が出来ていると言えそうです。
プレー映像
↑球種別映像
↑メジャーでの投球映像
まず投球フォームですが、スリークォーター気味の腕の位置で投じており、ボールを離す位置がかなり身体に近いところで離しているようで、球離れはかなり早いと言えるでしょう。
映像を見ていてもかなりボールがばらけているという印象があり、ストレート系のコマンド力は一定数あると言えますが、変化球はコマンドに乏しいという印象を感じます。
ツーシームは球速が出ている印象で、左打者から逃げる軌道で空振りを奪う場面もあります。またカットボールは打者の手元で曲がり、球速も出ているためストレート系との見分けがつけづらい印象です。
またカーブが球速が他2球種よりも速度が落ち、緩急を付けることが出来ています。実際2017年の平均スピンレートはMLB全体5位に位置した経験もあり、質自体は良いものであると言えます。
ただ投球割合が少ないこともあり、もう少し割合を増やすことが出来れば、幅が広がるかもしれません。
制球面に課題はあるものの、ボールの質は良質であり、MLBでも一定の実績を残しているだけにNPBでどれだけやれるかを注目したい存在です。