2021年は3位に沈み、来シーズンは首位奪回、10年ぶりの日本一を狙う読売ジャイアンツ。
今シーズンの大きな課題となったのは攻撃陣。
今季のチーム本塁打169はリーグトップでしたが、チーム打率.242、チーム得点圏打率.236、チーム得点552はいずれもリーグ5位と優勝を逃す大きな原因だったと言えます。
また外国人野手もウィーラーを除けば総崩れに終わり、攻撃陣のテコ入れは必須。既に米独立リーグで2年連続MVPのアダム・ウォーカーを獲得していますが、実績や年俸などを見れば補強の本命は別にいるというのは明確でした。
そんな中で1月5日、ピッツバーグ・パイレーツでプレーし、メジャー通算96本塁打を放ったグレゴリー・ポランコ外野手と契約合意したことを発表しました。
【巨人】新外国人グレゴリー・ポランコの獲得を正式発表 年俸2億5000万円(スポーツ報知)
巨人は5日、前トロント・ブルージェイズ傘下3Aのグレゴリー・ポランコ外野手(30)と契約合意したと発表した。単年契約で年俸2億5000万円(推定)。背番号は「23」に決まった。
ポランコはメジャーで2度のシーズン20発以上をマークするなど、通算96本塁打。主砲・岡本和の後の5番打者と期待されるスラッガーは、球団を通じ「とても胸が高鳴っています。最高のパフォーマンスを見せ、一緒に優勝しましょう。さあ行こう!」とコメントした。
チーム待望の左のスラッガーだ。左投左打、196㎝の均整取れた体格のポランコは、驚異的な飛距離を誇る。
09年にアマチュアFAでピッツバーグ・パイレーツに入団。若くしてトッププロスペクト(超有望株)として期待され、14年にメジャーデビュー。15年からレギュラーに定着し、153試合打率.256、9本塁打、52打点、27盗塁の成績を残した。
16年4月には、17年から5年総額3500万ドル(約40億円)の大型契約を結び、スター街道を走ってきた。その16年に22発、18年にはキャリアハイとなる23発と2度のシーズン20発以上をマークするなど、パワーに疑いはない。20年シーズンの平均打球速度はメジャー全体13位の約149.6キロとツボにはまった時の打球はまさに規格外と言える。
18年シーズン終盤に走塁時のスライディングで左肩を脱臼する重傷を負い、手術を受けるなどした影響で19年は出場42試合にとどまるなど、近年は故障に泣かされた。
昨季はパイレーツで107試合打率208、11本塁打、36打点、14盗塁をマーク。8月末に自由契約となり、トロント・ブルージェイズに移籍。3Aでは24試合打率.374、9本塁打、24打点、5盗塁と格の違いを見せつけた。
重圧のかかる大舞台での実績も頼もしい。17年WBCではドミニカ共和国代表として第2Rまでの6試合の内、出場した5試合全てでマルチ安打をマークするなど、19打数11安打で打率.579、2打点でベストナインに選出。まだ30歳と若く、コンディションさえ整えば大きな柱となれるはずだ。
昨季、獲得したスモーク、テームズ、ハイネマンがそれぞれの事情でシーズン途中帰国と、野手の助っ人陣で安定していたのはウィーラーのみ。軸となる助っ人野手の獲得は球団の至上命題だった。
既に獲得したウォーカーは未知の魅力にあふれているが、バリバリのメジャーリーガーと言えるポランコこそ、オフの“本命補強”だ。リーグの覇権奪回、そして日本一へ大きなピースが加わった。
今回は、巨人が獲得を発表したグレゴリー・ポランコについて紹介します。
メジャー通算96本塁打 プロスペクトランキングのトップ級評価で注目された元有望株
グレゴリー・ポランコはドミニカ共和国・サントドミンゴ出身の30歳。左投左打の外野手(右翼)です。
2009年4月11日にアマチュア・フリーエージェントでピッツバーグ・パイレーツと契約し、プロ入り。
2012年は1Aでプレー。116試合打率.325、16本塁打、85打点、40盗塁、OPS.910を記録し、リーグMVP、パイレーツのマイナーリーグ年間最優秀選手に選出された。
2013年は「ベースボール・アメリカ」の有望株ランキングで全体51位にランクイン。1A+で57試合打率.312、6本塁打、30打点、24盗塁、OPS.836を記録し、2Aに昇格。
6月には「Baseball Prospectus」の有望株ランキング全体12位にランクイン。2A昇格後は68試合打率.263、6本塁打、41打点、13盗塁、OPS.762を記録し、シーズン終盤には3Aに昇格。オフには40人枠入りを果たした。
2014年は6月9日にメジャー初昇格。翌日の試合で「2番・右翼手」でメジャー初出場初先発。この年はメジャーで89試合打率.235、7本塁打、33打点、14盗塁、OPS.650を記録した。
2015年はライトのレギュラーに定着。153試合打率.256、9本塁打、52打点、OPS.701、リーグ6位となる27盗塁を記録した。
2016年は144試合打率.258、22本塁打、86打点、17盗塁、OPS.786を記録。
2017年はWBCドミニカ共和国代表でプレーし、大会ベストナインに選出。しかしシーズンでは左太ももの故障で離脱が続き、108試合打率.251、11本塁打、35打点、8盗塁、OPS.695にとどまった。
2018年は130試合打率.251、23本塁打、81打点、12盗塁、OPS.839を記録。しかし走塁中に左肩の脱臼で負傷し、手術を受けた。
2019年は左肩の違和感で離脱が続き、42試合打率.242、6本塁打、17打点、3盗塁、OPS.726にとどまった。
2020年は新型コロナウイルスに感染した影響などもあり、50試合打率.153、7本塁打、22打点、3盗塁、OPS.539と苦しんだ。
2021年は107試合打率.208、11本塁打、36打点、14盗塁、OPS.637と不振から脱却できなかった。またパイレーツがプレーオフ進出が難しい状況となった事で若手選手起用の方針に切り替えた影響もあり、8月28日にDFAとなり、同日に自由契約となった。
8月31日にトロント・ブルージェイズとマイナー契約を結び、移籍後は傘下3Aでプレー。24試合打率.374、9本塁打、24打点、5盗塁、OPS1.183を記録した。
シーズン成績
上記はグレゴリー・ポランコのMLB/3Aでの成績です。
マイナー時代から「5ツールプレイヤー」として期待を集め、12年には1AのリーグMVP、球団内のマイナーリーグ年間MVPを受賞し、13年にはMLB.com、Baseball America、Baseball Prospectusでトッププロスペクトの評価を与えられました。
メジャー昇格後はアンドリュー・マカッチェン、スターリング・マルテと屈指の外野陣を形成し、2度のプレーオフ進出に貢献。また16年には5年間の契約延長+2年のオプションを締結するなど、順風満帆でした。
しかし2017年の左太ももの怪我以降、2018年は左肩脱臼、2019年は左肩違和感、2020年は新型コロナウイルス感染と万全な状態でプレーできていません。
5年契約の最終年だった今季は107試合打率.208、11本塁打、36打点、14盗塁、OPS.637と不振から抜け出せず、パイレーツがPS進出が難しくなり、若手起用にシフトを決断。、契約満了を待たずしてチームから放出される形となりました。
ただブルージェイズ移籍後は傘下3Aでは24試合打率.374、9本塁打、24打点、5盗塁、OPS1.183と復調の兆しを見せている可能性がある点は注目したいところです。
ブレーキングボールに課題 打球速度、HardHit%はパワーポテンシャルを感じさせる
上記はグレゴリー・ポランコの球種別成績と打球傾向です。
まず球種別成績ですが、ストレート、ツーシームに対しては長打が出ている傾向にあり、平均球速がMLBよりも下がるNPBであれば更に数値や長打という部分で向上が期待できそうです。
一方で課題なのはスライダー、カーブといったブレーキングボール系への対応力。この2球種に関してはK%、コンタクト率がいずれも他の球種に比べても悪化している傾向にあります。
またChase%、Whiff%も粗い傾向にある事も気になるところで、ゾーン管理も課題となりそうな印象。
また対左右別の成績を見ると以下のようになっています。
2021年
対右 打率.222(243-54)、11本塁打、27打点、68三振、出塁率.301、長打率.412、OPS.721
対左 打率.172(93-16)、0本塁打、9打点、36三振、出塁率.236、長打率.204、OPS.440
通算
対右 打率.252(2197-553)、80本塁打、277打点、488三振、出塁率.320、長打率.433、OPS.754
対左 打率.208(686-143)、16本塁打、85打点、59三振、出塁率.274、長打率.329、OPS.603
左投手を苦手としている傾向があり、左投手のスライダー、カーブに我慢できるのかが課題となりそうです。
一方でポランコの武器と言えそうなのが打球速度、Hardhit%の高さ。
打球速度では今季平均144.6キロ、今季最速187.0キロと強い打球を弾き返すことが出来ています。平均打球速度はMLB平均を上回り、最速打球速度は95パーセンタイルでMLBトップ級の評価を与えられています。
またHardHit%は今季48.3%。これは85パーセンタイルでMLB上位級の評価を与えられています。打球速度が速く、フェアゾーンに飛んでいるのであれば、長打が増える傾向にあり、パワーポテンシャルには衰えはないと言えるでしょう。
左肩脱臼など怪我の影響か肩や守備範囲系の指標は大幅ダウン
上記はグレゴリー・ポランコの守備成績です。
2017年まではセンター、レフトでのプレー機会がありましたが、基本的にはライトがメインポジションであると言えます。
デビューシーズンから2016年ごろまでは守備指標のプラスが多かったのですが、2017年に左太もも裏ハムストリングスを痛めて以降は、守備範囲の指標が下がり始め、2020年を除けばマイナスの数字を記録しています。
そして肩に関しては2018年に左肩を脱臼し、手術を受けて以降は数字が急落。今シーズンは過去ワーストの-6.7という懸念されるべき状況と言え、キャンプなどでの動きを見極めていく必要がありそうです。
プレー映像
↑2021年シーズンのプレー映像
↑2021年シーズンのホームラン集
↑2021年3Aでのホームラン集
映像を見ると打球の勢いは中々のものでホームランは基本的にライトから右中間方向に集中しています。
全盛期と呼べる時代と比べても打球速度、打球角度、HardHit%、Barrel%は現在のほうが数字が向上しており、3Aでの復調傾向が持続出来れば、NPBでも活躍できる可能性があると言えます。
守備に関しては年々指標は落ちていますが、脚力や肩は一定の力をまだまだ残していると言えますが、左投げゆえのスローイングへのロスがあるため、懸念はあるでしょう。
実績、実力は十分な選手であり、またパイレーツを自由契約となった際には地元紙の取材に「毎日、野球のために100%を尽くしていきたい。身体的にプレーできなくなるまで続けたいんだ。すぐに引退したいとは微塵も思わないし、家でくつろいでいるのはごめんだ」と野球への情熱の高さを伺わせるコメントで応えています。
こういった姿勢もチームに良い影響を与える可能性があり、10年ぶり日本一奪回へ大きな役割を期待したい存在です。