2020年は最下位に沈み、2021年は3年ぶりののAクラス返り咲きを目指す東京ヤクルトスワローズ
今シーズンの大きな問題点となったのは投手陣。
先発では小川が10勝を挙げるも、それ以外の先発ではスアレスの4勝が最多で残りの先発は1勝から2勝しか挙げることが出来ず、先発として獲得した助っ人外国人のイノーア、クックは1勝もできなかったという散々たる結果でした。
チーム防御率4.61、先発防御率4.83、救援防御率4.33はいずれもリーグ最下位に沈むなど、ここ数年の投手陣の問題は根深い物になっています。
そんな中で12月4日、ヤクルトが今季ヒューストン・アストロズに所属し、メジャー通算26試合に登板したサイ・スニード投手を獲得したと発表しました。
ヤクルトは4日、MLB・アストロズから米国出身のサイ・スニード投手(28)=193㎝、97㎏、右投右打=を獲得したと発表した。
1年契約で年俸80万ドル(約8320万円)+出来高。背番号は「54」で登録名は「サイスニード」となる。
今季はアストロズで18試合0勝3敗、防御率5.71でメジャー通算は救援で26試合0勝4敗、防御率5.59。
奥村政之編成部国際担当部長は「アストロズは来季の先発の5、6番手で考えていたようだ。強いチームでそこに入るのは大変なこと」と先発の一角として期待した。(金額は推定)
今回はヤクルトが獲得を発表したサイ・スニード投手について紹介します。
MLBでは主にリリーフを任されるもマイナーでは先発投手として経験も豊富
サイ・スニードはアメリカ合衆国・ネバダ州出身の28歳 右投右打の投手です。
2011年にMLBドラフトで指名を受けたが、この時は契約を結ばずに大学へ進学。
2014年MLBドラフト3巡目(全体85位)でミルウォーキー・ブルワーズから指名され、プロ入り。契約後にルーキーリーグでプロデビューを飾り、11試合0勝2敗1セーブ、防御率5.92、31奪三振を記録した。
2015年は1A、1A+の2球団でプレー。合計で26試合6勝11敗1セーブ、防御率2.58、122奪三振を記録。オフの11月19日に交換トレードでヒューストン・アストロズへ移籍した。
2016年は2Aで25試合6勝5敗1セーブ、防御率4.04、112奪三振を記録。
2017年は2Aと3Aでプレー。合計で26試合10勝6敗1セーブ、防御率5.97、95奪三振を記録。
2018年は3Aでプレー。26試合10勝6敗、防御率3.83、114奪三振を記録した。
2019年は開幕を3Aで迎えると、6月27日にメジャー契約を結んでアクティブロースター入り。また同日の試合でメジャーデビューを飾った。この年はメジャーで8試合に登板し、0勝1敗、防御率5.48、23奪三振を記録した。
2020年はメジャーで18試合に登板し、0勝3敗、防御率5.71、21奪三振を記録した。
成績で読み解く
上記はサイ・スニードのMLB、3Aでのシーズン成績です。
MLBでは26試合全てリリーフとして登板していますが、3Aを含めてマイナーリーグでは98試合に先発登板しており、どちらであっても柔軟な起用方法が可能な印象です。
特に注目したいのが奪三振率で、MLBでは通算10.33を記録。2019年は9.70、2020年は10.90といずれも高い数字を記録しています。3Aでは通算7.91ですから、三振を奪う力を有した投手であるということが分かります。
また制球力に関してもマイナー時代からコマンド力の高さを評価されており、BB/9も2019年はMLBで2.11、3Aでは2.65と安定した制球を有していることが分かります。
しかし今シーズンは5.19BB/9と数字が大幅に悪化。どういう理由でこのような数値悪化が起きたのかは分かりませんが、この傾向がNPBでも続かないことを祈るばかりです。
浮き上がるような真っスラが投球の7割以上を占める 変化球の精度向上がカギか
上記はサイ・スニードのMLBでの球種別成績です。
上記を見てもわかるように、投球の大半がストレートで占められていることが分かります。ですがデータサイトによってはストレートではなく、カットボールを投げているというデータレポートもあり、スニードは純粋なストレートを投げている可能性は低いでしょう。
Baseball Savant(Statcastのデータが簡単に閲覧できるMLB公式サイト)では今年のスニードのカットボールのデータを見ると、平均93.0マイル(約149.6キロ)、最速96.1マイル(約154.6キロ)を計測しています。
また水平方向、垂直方向を示すデータではスニードのカットボールは右打者から1インチ(2.54㎝)離れて移動し、13インチ(33.02㎝)落下しているというデータがあり、MLB平均が3インチ(7.62㎝)水平移動と27インチ(68.58㎝)落下ですから、MLBの平均的なカットボールよりもスニードのカットボールは垂れずに伸びるボールになっている事が分かります。
一方で変化球はスライダーは今季被打率.154、30.8K%を記録していますが、contact%が86.7%とバットに当てられているというデータが残ります。今年はカーブの比率を挙げたものの、数値は全体的に悪化。そしてスプリットは使用頻度を一気に減らしています。
リリーフで運用するならばストレート(カットボール)、スライダー、カーブでも十分かもしれませんが、もし先発として起用するならばスプリットの使用頻度を上げていかないと、投球が単調な形になってしまいそうです。
映像で見る
映像を見るとカットボールはデータ通りで垂れずにそのまま伸びてくるような印象を感じさせます。
リリーフとしての力強さは簡単には攻略できないだろうという印象ですが、一方で捕手が構えたミットとは違うところにボールが行くようなシーンも見られており、気になるところです。
スライダー、カーブは低めに決まれば空振りが奪えている印象ですが、高めに浮いた時にはバットに当てられている印象。データではスライダーは極端なフライボール%を記録しており、スライダーのミスボールを痛打されてしまう可能性もありそうです。
ボールの力強さを最大限に生かすならばリリーフ向きの印象ですが、もし先発として起用するとなると常時カットボールの勢いを保ち続けるのは厳しくなるかもしれませんが、変化球全体の精度向上や頻度を減らしたスプリットをもう一度使いだすなど工夫が必要になりそうです。