2020年シーズンは上位争いを繰り広げながらも終盤に大きく失速し、リーグ4位に沈んだ東北楽天ゴールデンイーグルス
オフには石井一久GMが新監督に就任し、新体制の中で来季は2013年以来のリーグ優勝、日本一を目指すシーズンとなり、オフの補強でどのように動くかが注目を集めています。
今シーズンの戦いの中で課題の1つに挙げられていたが、外国人枠の運用です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕延期、日程の過密化もあり、外国人枠が「5」に拡大。そのため楽天は投手3野手2で運用することになり、開幕直後にはウィーラーが巨人へ移籍。
しかし昨年33本塁打を放ったブラッシュが打撃不振に陥り、8月に首を痛めて登録を抹消されて以降は、1軍に再昇格することはありませんでした。結果的には野手の外国人選手はロメロ1人という状況が続きました。
投手もブセニッツが活躍したものの、宋家豪は不調続き、シャギワは下馬評通りの活躍を見せることはなく、D.J.ジョンソンも絶対的な存在とは言えず、外国人選手に関しては一定の刷新が必要という状況でした。
そんな中で12月2日11月20日、今季デトロイト・タイガースでプレーし、19年に15本塁打を放ったブランドン・ディクソン内野手を獲得したと発表しました。
楽天、MLB通算20発ディクソンの獲得発表 石井GM兼監督の補強第1弾(Full-Count)
楽天は12日、メジャー通算20本塁打のブランドン・ディクソン内野手との契約が合意したと発表した。
188㎝、97㎏。右投右打のディクソンは13年ドラフト3巡目(全体92位)でドジャース入り。15年オフにレッズへ移籍し、18年にメジャーデビュー。
19年にはタイガースで112試合出場、打率.248、15本塁打、52打点、OPS.725をマーク。今季は5試合出場、打率.077、0本塁打、2打点にとどまった。
メジャー通算3年間で打率.288、20本塁打、64打点。マイナー7年間で打率.259、68本塁打、286打点を記録している。昨季は捕手、遊撃を除く全ポジションを守り、投手としても2試合登板。今季も一塁、二塁、左翼で出場しており、複数ポジションを守るユーティリティプレーヤーとして期待できる。
ディクソンは球団を通じ「この機会をいただいてスーパーエキサイトしております。日本でプレーすること、楽天イーグルスに関しても素晴らしいチームだと聞いています。イーグルスでプレーできるチャンスをもらったことに感謝しており、チームの勝利、そしてチャンピオンになるために貢献できることを楽しみにしています」とコメントを発表した。
今回は、楽天が獲得したブランドン・ディクソン内野手について紹介します。
19年に15本塁打をマークし、内外野5つのポジションを守る中距離ヒッター
ブランドン・ディクソンは、アメリカ合衆国・カルフォルニア州出身の28歳。右投右打の内野手です。
2013年MLBドラフト3巡目(全体92位)でロサンゼルス・ドジャースから指名され、プロ入り。
2014年はルーキーリーグ、1A+の2球団で95試合打率.260、9本塁打、46打点、8盗塁を記録。
2015年は1A+、2Aの2球団で128試合打率.263、19本塁打、68打点、26盗塁を記録。その年のオフにドジャース、レッズ、ホワイトソックスの3球団による三角トレードでシンシナティ・レッズへ移籍。
2016年は2Aでプレー。118試合打率.260、16本塁打、65打点、15盗塁を記録。
2017年は3Aに昇格。124試合打率.264、16本塁打、64打点、18盗塁を記録。
2018年は開幕を3Aで迎えると、5月22日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りすると同日の試合でメジャーデビュー。この年はメジャーで74試合打率.178、5本塁打、10打点、出塁率.218、OPS.574と持ち味を発揮することは出来なかった。
この年の11月にウェイバー公示を経て、デトロイト・タイガースへ移籍した。
2019年は4月18日にメジャー昇格。主に1塁やレフトで出場機会を得ると、112試合に出場して打率.248、15本塁打、52打点、出塁率.290、OPS.725を記録。チームトップの本塁打数を放つなど、キャリアハイとなる成績を残した。
しかしシーズン136三振を喫し、出塁率の低さなどがネックとなり、オフの12月21日にDFAとなり、2020年1月8日にマイナー契約を結んで3Aの球団に配属された。
2020年は9月22日にメジャー契約を結んで、アクティブ・ロースター入り。5試合に出場して打率.077、0本塁打、2打点、出塁率.143、OPS.297と結果を残すことは出来ず、オフの11月19日に自由契約となった。
成績で読み解く
上記はブランドン・ディクソンのMLBと3Aでのシーズン成績です。
MLBでの成績で注目されるのは、2019年の成績。キャリア最多の117試合に出場し、15本塁打、52打点、OPS.725と十分に長打力を発揮したと言えます。
一方でこれだけの成績を残しながらも2019年オフには40人枠を外れ、今シーズンはわずか5試合の出場に留まりました。その原因と言えるのが、出塁力の低さ、三振数の多さです。
19年の数字を見ても四球はわずか21個、三振数も136個とゾーン管理能力に大きな問題があるという印象です。3A以下のリーグでこの傾向が続いているという部分も踏まえて、打撃での粗さがデトロイト・タイガースの首脳陣からは使いづらいという判断を下されたのかもしれません。
ストレート、スライダー、カーブに対して強さがある 19年以降打球角度、Barrel%が向上
上記はブランドン・ディクソンのMLB通算の球種別成績と打球傾向です。
注目したいのは、投手の基本的な投球の構成となりやすいストレートとスライダーに強さがあるという部分です。
この2球種の打率は.255~.260と来日する選手たちの中では十分対応できているという印象で、ISOとSLGも好成績が残っているだけに、NPBでもこの部分が発揮されると楽しみです。
カーブに関しても打率.250と成績は良いのですが、ISOは.175と実際の打率とは乖離しています。これを考えるとカーブではやや長打が出にくい傾向にあるのかもしれません。
一方でツーシーム、チェンジアップに関してはかなり苦戦しています。ですがNPBではこの2球種の使用割合というのはMLBに比べても減る傾向にあります。こういった部分もディクソンには良い影響が出る可能性がありそうです。
また打球傾向においては19年は打球角度、HardHit%、Barrel%が軒並み上昇したことで長打の増加にも繋がりました。今季は打球速度を除いて数値を落としていますが、19年のような数値に戻すことが出来れば、MLBの時よりも長打が増える可能性がありそうです。
複数ポジションをこなすが数字上は不安 スプリント力で無理やりこなしている部分も・・・?
上記はブランドン・ディクソンの各ポジションの守備指標です。
メジャーで最も守ったポジションは一塁です。2019年は61試合、守備率.991を記録。しかし各種データで見ると守備で上積みできた部分が少なく、逆にUZRは前年よりも低下しているという状況。
また二塁に関してはよほどのことが無ければ守らせる理由がなく、三塁もオプションという印象。
レフト、ライトをこなしていますが肩の強さを図るARMが1より下という状況で抑止力は期待できないという印象です。
ではなぜ指標上はマイナスの数字が並ぶのにユーティリティとして起用されているのかという部分ですが、それはディクソンが持ち合わせているスプリントスピードにあるのではないかと思われます。
MLBではスタッドキャストでSprintSpeed(スプリントスピード)という指標が計測されていて、選手の脚力を測るデータとなっています。ディクソンの過去3年間のSprintSpeedを見ると
18年 28.9(ff/s)
19年 28.5(ff/s)
20年 28.0(ff/s)
と実は一塁手としてはかなり速い数値で2019年の数字はMLB全体の一塁手としては最速。
マイナー時代には26盗塁をマークするなど元々脚力がある選手だけにその部分で、複数ポジションをこなしていた可能性があります。
映像で見る
バッティングの映像を見ると、捉えたときの打球飛距離は素晴らしいものがあり、パワー面に関しては十分な期待が持てるのではないかという印象です。またインコース気味の変化球もしっかりと捉えれている印象でこの部分の対応力に関しては期待できそうです。
守備に関しては、やはり脚力を生かした動きの良さを感じさせる印象ですが送球はそこまで力強い感じはせず、外野守備もぎこちない動きをしているという感じを覚えます。
基本的には一塁をメインに他ポジションはオプションとして想定するほうが良さそうです。
年齢も28歳と若く、低い出塁率や選球眼を改善させればMLBへのカムバックも十分考えられる選手です。苦手球種のツーシーム、チェンジアップの使用頻度が低いNPBでどこまで打撃数値を挙げられるか注目です。