暫くの静寂。誰もが伏せていた顔を上げ、驚く。
平 「…爆弾が止まった…助かったのか?」
根間「麻生さん!!」
吉良「麻生さんっ」
俯く麻生の名を呼ぶ面々。徐々に笑い出す麻生。
矢内「麻生くん!?」
麻生「……ふふふ………ははは………愚か…愚かですよ皆さん!!」
平 「どうしたんだ!?大丈夫かっ」
態度が豹変する麻生に平が近づく。そんな平を突き飛ばす麻生。自身のポケットから鍵を取り出して手首の鎖を外し、困惑している四人を前に麻生は叫ぶ。
麻生「何度もチャンスをやった!!最後の最後までヒントを与えたのにっ。最後に捧げたのは俺の命なんかじゃない…お前たちの人間性だっ!!誰か一人でもボタンを押さなければ俺の胸にボウガンが放たれる筈だった…。だが俺は生きている。つまり、死ぬのはお前たちの方だ!!」
平 「何で…。どうしてっ、」
麻生「この期におよんでまだそんなことを言うのかっ!!…勘弁してくれよ…」
まだ何も分かっていない面々に呆れたように、麻生は伍の箱からあるリモコンを取り出して部屋の扉を開けた。外からは雨の音が聞こえてくる。
麻生「こうなってしまったらなんの意味もない…お前らのせいだぞっ!!」
平 「私たちは犠牲を払ったはずだっ!!」
麻生「犠牲?…確かにそうだ。でもそれは何に対 して払われたものなんだ!?」
何も言えず黙ってしまう平。麻生はリモコンで止まっていた爆弾のタイマーをもう一度動かした。
麻生「自らの罪を悔いて祈れ!」
麻生の最後の言葉だった。扉が閉まり、部屋には鎖に繋がれたままの四人。必死に泣き叫ぶ四人。
(矢内さんのみ叫ばず諦めた感じがしてた)
平 「麻生くんっ!!!!」
根間「出してくれーっ!!」
吉良「待って!!麻生さんっ!!!!」
叫び声も虚しく、浅間山中に爆音が鳴り響いた。
(暗転)
田富「これを見てください」
田富が新堂に見せたのはツイッターの画面をプリントしたもの。"死ね"とリプライされたアカウントのものだった。
新堂「麻生…みどり?」
田富「犯人である麻生空太の妹のアカウントです。2010年7月10日に14歳で亡くなっています。…自殺でした。第一発見者は兄の空太だったそうです。親のいない彼らは孤児院で育てられました。唯一の肉親を失った空太の悲しみは相当なものだったのでしょう。いじめというのはある種、いじめられないための防衛策でもあるんです。それに比べてネット上の発言は想像力が欠落し 、無責任で刹那的。リプライをしたアカウントの持ち主は全員が妹より年上だったんですよ!!つぶやいた本人はそれで本当に人が死ぬなんて微塵も思っちゃ居ない。唾棄すべき存在なんです!」
新堂「田富さん…」
田富「…失礼しました」
新堂「しかし犯人も狂気的ですね。怒りの感情は長続きしないんですよ。一年も掛けて巧妙な計画を練ってまで復讐するなんて。私には妹を救えなかった自分の悔いを人に押し付けて、あの密室ゲームを楽しんでいただけのように思えます」
妹の自殺を止められなかった空太。その新堂の言葉に田富が静かに言う。
田富「……なるほど。さすが刑事さん、 ひと味違った見方をなさる。では、私はそろそろ」
新堂「あ。田富さん、本の出版はもう少し待っ ていただけますか?事件の真相をはっきりさせてからにしたいんです。警察は捜査の次に体裁を大切にしますから…」
田富「犯罪捜査の次にですか…逆じゃないですか?」
新堂「そうかもしれませんね…」
田富「…分かりました。でも既に出版社に資料は渡してあるので早めにお願いしますね。…事件が明るみになるなら僕は構いませんから」
そうして田富は去っていく。そこへ慌ただしく有馬刑事と太田刑事がやって来る。
有馬「文書の鑑識結果が出ました。やはり麻生空太の指紋と一致しました。筆跡は鑑定中ですが、ほぼ間違いないそうで…」
太田「もう話題になってますよ!!新堂さん、あんなのどこで見つけたんですか?」
新堂「タレコミだよ。なんかジャーナリスト、だそうだ」
有馬「へえ、その人よほど証拠物件の扱いに慣れてるんですね」
新堂「…どういうことだ?」
太田「検出された指紋は麻生空太のものだけでした」
新堂「…封筒の中と外もか?あと一人はいるだろ」
有馬「封筒の中と外も麻生空太の指紋だけでした」
何かに気付き、急いで名刺を取り出す新堂。
新堂「田富功利……たどみ、こうり…、みどり、こうた…?何でこの名前に気付かなかったんだよ俺はっ!!」
太田「どうしたんですか?」
走っていく新堂。新堂は立ち止まり、言う。
新堂「整形で顔は変えられても指紋は変えられない…ってことだよ!」
残された有馬刑事と太田刑事が首を傾げたまま新堂が行った先を見ていた。
(暗転)
雨。傘を差した田富がみどりの墓の前に立っていた。
田富「みどり、遅くなってごめんな。お兄ちゃん、完全すぎる犯罪は事件にすらならないってこと、忘れてたよ。お前は要らないって言うかもしれないけど、お兄ちゃんの処女作にして遺作だ」
田富は鞄から取り出した一冊の本を墓の前に置いた。田富の後ろには空太が立っている。
「「じゃあな、みどり。また来るよ」」
田富が静かにどこかへ消え、残った空太が本を手に取り、寂しそうに笑った。
《 限・界・密・室! 田富功利 》
完
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NG集。
15日昼公演と千秋楽を見ましたが、少しだけ変わってました。
→田富が名刺を渡すも、新堂が受け取れない
→ボウガンに当たって倒れる根間
→田富の持つ封筒から出てきたのが消臭剤?
→吉良の箱から出てくる馬の被り物とメイド服
(奇抜探偵!)
→新堂の代わりに出てくる太田刑事
→平が高く手に持った紙を取ろうとジャンプする麻生
→部屋を出て行く麻生を平が捕まえる(麻生を蹴る矢内、殴る根間と平…が当たらない。吉良のビンタは当たる)
→麻生の代わりに座っている太田刑事(全員から頭を叩かれ慌てて立ち上がりそのまま根間とちゅー)
→手の甲を刺す矢内(昼は手の甲を刺すふりをしてベーと舌を出して、千秋楽ではトトトっと素早く指と指の間をナイフで刺す動きを)
→麻生がドアを開くと新堂と有馬刑事と太田刑事が(昼は医者、千秋楽では有馬刑事が紙を、太田刑事がギターを持って新堂がフラメンコで横切る)
Android携帯からの投稿