参の箱の二重底の下。中身は「2010年7月10日」と書かれた紙とスイッチと鍵。
平 「お決まりのセットだな…」
根間「2010年7月10日…今日の日付、ああ去年のか」
吉良「私はこの日はテスト期間だったと思います」
根間「俺も、多分期末だったと思うけど」
みんな去年のことはあまり思い出せない。何か思い出したら言ってくれ、と平。
次は肆の箱、矢内が開けると出てきたのは一本のナイフ。それから消毒液と包帯も入っている。
「肆ノ犠牲 矢内修一 才ヲ捧ゲヨ」
平 「…才?…才能のことか」
根間「才能で、何でナイフなんだよ!!」
矢内「僕には犯人が何を言いたいのか分かります。実は僕、ピアニストなんです」
この手をナイフで傷付けて二度とピアノを弾けないようにしろって事だと思います、と矢内は寂しそうに笑いながら語る。
吉良「矢内さん!!、あの」
矢内「大丈夫です。…やります。僕の手には、8億の価値なんてないですから…」
平 「皮肉がキツすぎないか…?」
平は辛そうに苦笑しながら、矢内を見つめる。
矢内「こうでもしないとやってられないですよ…この仕事に誇りを持ってるんですから…」
箱に手を置き、ナイフをゆっくりと振り上げる。暫くの間、矢内は立ち上がり背を向けた。
(哀しいピアノの音が流れ出す)
矢内「すみません…時間、掛けすぎですよね」
苦笑しながら矢内はもう一度箱に手を置いてナイフを振り上げた。
(客席からは後ろ姿のみ)
矢内「うわあああああああああああああああ!!」
根間「…鍵の開く音がしないっ!?」
矢内「まだ、これじゃ…足りないって、ことですかね…」
苦しそうに何度も何度も手の甲に刺す矢内。ようやく鳴った鍵の音。だが矢内はまだナイフを振り上げる。
平 「もうやめるんだ!」
麻生「もう、鍵は開きましたからっ…」
平はすぐに矢内の腕を持ち、治療する。
矢内「ああああああああああ…っ」
その場に崩れる矢内を見つめることしか出来なかった。
(暗転)
田富「…事件に関わった5つのアカウントは事件当日付近から投稿が無くなっているのですが、ひとつだけ2010年7月10日から投稿が無く なっているものがありました。最後の投稿は"死にたい"というものでした。アカウントの持ち主は学生。恐らく学校でいじめを受けていたんでしょう。問題はその投稿に対するリプライです。その内容は死ね、もしくはそれに値するものが4件ありました。それが被害者たちのものと一致したんです」
田富はそれが犯人のほとんどの動機だと言う。
新堂「話が飛躍しすぎてませんか」
田富「私はほとんどの動機だと言っただけで犯人の直接の動機ということではありません」
新堂「随分勿体振りますねー…」
(暗転)
矢内は二重底の中から紙を取り出し、平に渡した。箱の蓋には生々しい赤い血がついていた。
「人ヲ呪ワバ穴二ツ 自ラノ罪ヲ悔イテ祈レ」
平 「人ヲ呪ワバ穴二ツ…」
吉良「確か、人を憎むならそれなりの覚悟をしろって意味だったと思います」
根間「なんか説教みたいな」
矢内「まるで僕たちがだれかを呪ったみたいですね…」
根間「そりゃ人に死んだらいいのに、って思うことなんかいっぱいあるけどいちいち気にしてたらこの部屋いっぱいにしても足りないじゃないか…」
最後の箱。麻生の箱には封筒と紙。
「伍ノ犠牲 麻生空太 命ヲ捧ゲヨ」
根間「それは反則じゃないのかっ!?」
吉良「最初からルールなんてもの存在しなかったのかもしれない…っ」
麻生は封筒を開く。
「四ツノボタンヲ同時ニ押セバ贄ニ死ヲ授ケル」
四ツノボタン…麻生以外の四人が持っているあのスイッチのことだ。
根間「どういうことだ?」
平 「…分からないが、ボタンを同時に押せば何かが起きるという事だ。恐らく麻生くんの命を奪う何かだ」
矢内「そんな…僕たちに麻生くんを殺せというのかっ…」
麻生「いいんです。僕には命くらいしか捧げられるものが無いんです…。根間くんのように未来も無い。平さんのように財産もない。矢内さんのように才能もない。吉良さんのように大切な人は、もう亡くしてしまいました。実は僕、ここに来る前に死のうとしていたんです。だから…いいんです。僕を殺してください!」
戸惑う面々と決意する平。
平 「殺してもこれは緊急事態だから罪には問われないっ!!」
根間「それでも殺したという事実は変わらないじゃないか!!」
吉良「何か他に方法がっ、」
平 「綺麗事言うな!!」
平は最後に矢内に意見を聞く。矢内は力無さそうに答えた。
矢内「…正直もうどっちでもいいんです。この手じゃピアノは一生弾けないでしょう……けど、これほど犠牲を払ったんですから、皆さんには生きていてほしいです」
吉良「もう私どうしたらいいか分かんないよ……!!」
平「…俺はやる!! 結論を聞かせてくれ…」
平は強く言い放つ。暫くして矢内もスイッチを握った。
矢内「僕も、やります」
吉良「私も…、やりますっ」
最後に残ったのは根間だけ。迷ってようやくスイッチを手に取る。
根間「分かったよ!!やるよっ!!……麻生さん、ごめんなさ…!」
平 「謝るなっ!!許してもらおうとするな!!…俺達は人を殺すんだ…!!」
刻々と迫る時間。爆弾のタイマーの残り時間もあと僅か。お願いします、と弱い声で麻生は言う。
平 「もう迷うな…せーの!!」
その言葉と共に四人のスイッチが同時に押された。
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