漢字の難しさその2 大地震は『だいじしん』と読む?それとも『おおじしん』? | ばーやちゃんのブログ「リンガフランカ」

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こんばんは。


いきなりですが、漢字のクイズです!


次の漢字熟語は何と読むでしょう~?



湯桶










これは、


『ゆとう』


と読みます。



さて、湯桶って何でしょうか?




湯桶とは、おそば屋さんで蕎麦湯(そばゆ)を飲んだことがあれば、一度は目にしているはずです。



そばゆ、飲みますよね?




店の人が持ってきてくれる蕎麦湯って、取っ手のついた漆器の『入れ物』に入っていますよね?



あれが、『湯桶』です。


あの入れ物、呼び方を気にした事がありませんで、

実は自分も最近知りました…(;^ω^A



「ゆおけ」と読みたくなるかもしれませんが、「ゆとう」です。





さて、日本語における漢字の熟語(二文字以上の漢字の言葉)には、ある一定のルールがあります。


まずは、漢字には「音読み」と「訓読み」があります。


音読みは、『漢字』という文字が、大陸から日本に入ってきた時の発音、読み方、

訓読みは、日本人が昔から使っている『大和ことば』に漢字を充てたものです。


漢字熟語の読み方のルールをまとめると4つに分けることができます。


1.音読み+音読み   例 : 朝食、料理、満腹、簡単、記事、追加、標準、設定、各種


2.訓読み+訓読み   例 : 朝飯(あさめし)、焼魚、塩味、大皿、言葉、目薬、織物、名前



ほとんどの熟語は、上の1番と2番の組み合わせが基本です。



無意識にですが、音読みと訓読みをきちんと認識した上で、我々は使い分けている事になります。


しかし、例外というのはもちろん、どんな物にでもあります。


上記ルールから外れるものが、以下のようにあります。



3.音読み+訓読み(通称「重箱読み」)   例 : 重箱、額縁、客間、残高、台所、番付、本棚


4.訓読み+音読み(通称「湯桶読み」)   例 : 湯桶、鶏肉(「にく」が音読みって分かりづらい…)、雨具、粗熱、高台



けっこうあるんです。(Wikiペディアにたくさん載せられていますので、興味のある方は参照して下さい)



こんなにあると、例外というべきかどうか…




さて、ここで、タイトルに挙げた



大地震



ですが、




これは、どうなるのでしょうか。




三字熟語ですが、基本的には二字熟語と同じルールのはず。




そうすると、



だいじしん



が原則通りという事になりそうです。





しかし、日本語の標準語を使用しているNHKなどの放送用語では、



「おおじしん」



と湯桶読みが使われているのが現状です。



何でなんで?



と思われるかもしれませんが、標準語としては「おおじしん」のようです。



ちなみに『標準語』についてですけど、

国が言語について模範的な基準を審議し、決めているのはご存知ですか?


これを「言語政策」と呼びます。


言葉というのは人間が生きている以上、生きたコミュニケーションツールです。


なので、ほっておくと時代によって地域によって、年齢層によってどんどん多様化していく。


多様化していくと、学校(義務教育)で国語を学ぶときに自分の使っている言葉の何が正解で何を覚えればいいのか分からなくなってしまいます。


なので、一応、


「日本語と言うのはこういうルールでできているんですよ、みんなで統一しておいてニュースとか法律とか理解できるようにしておきましょうね」


という、ルールを仮に作っているのが標準語です。



では、話を大地震に戻しますが、



なぜ「おおじしん」と国は読むことにしているのか。




どうやら、これには日本人が言葉を混ぜて使う習慣に原因があるようです。




外来語というのがあります。



これは、欧米から来た言葉を指します。



コーヒーとか、ビールとかエレベーターとかアルバイトとか、元は英語だけに限りません。


英語、ドイツ語、ポルトガル語、オランダ語


色々な外国語を我々は生活の中に完璧に取り込んで使っているのです。



てんぷらも元はポルトガル語だったのが、今では日本を代表する料理となっています。



こういうミックス語が定着すると、自分たちでも


「これは日本語でしょ?え?違うの?」



という曖昧さが生まれてきますよね?



外来語はカタカナ表記なので、識別が簡単ですが、漢語は、歴史が長く、もう日本語として「和語」として定着しているものがあるのです。



「大地震」の他に、湯桶読みをしているものをいくつか挙げてみると、


山火事、大火事、大所帯、大騒動


などがあります。


どうでしょう。


やまかじ、おおかじ、おおじょたい、おおそうどう


日本人が長い歴史の中で、


火事、騒動、所帯という言葉をたくさん使い続けた結果、これらの言葉が漢語ではなく「和語」だという認識が出てきているものと思われます。



電話と言う言葉も、もとは漢語でしょうが、漢語に丁寧な言葉添えをする「美化語」(和語には「お」、漢語には「ご」を付けるのが原則)も


おでんわ


と、「お」を付けていたりします。


これらは、ジャパニーズ漢字の難しいところであり、面白いところでもあります。



結論としては、


「大地震」は、


だいじしん

おおじしん


どちらも問題はなさそうだというのが、私の結論です。