カウンターに座る彼に声をかけたのは
体格のよい一人の黒人男性。
カウンター越しに見る厚い胸板や
たくまし過ぎる腕に
少しばかりの不安。
というか、恐怖かもしれない。
目の前に立つ黒人のバーテンダーと
目を合わすことなく
彼は酒の注文をした。
彼が頼んだのは、
バーボンのトニックウォーター割り
すると、
バーテンダーは顔をしかめながら
注文通りの酒を差し出した。
未だ眉間に皺を寄せるバーテンダー。
バーボンを味のついたもので割るなんて
考えられない、といった様子で
不機嫌そうな声のまま
バーテンダーは訊ねた。
“このカクテルの名前は?”
。。。。。。
もちろん答えなどない
安く酔える酒を選んだだけ。
とても、そのままでは
飲めたものではないから
トニックウォーターで割っただけ。
しかし彼は、こう答えた
“イッツ アメリカン・ナイトメア”
バーテンダーは一瞬考えたあと
笑い声をあげた。
ナイトメアとは洒落のきいたネーミングだと
ジェスチャーを交え、おどけてみせた
そこで彼はようやく安堵し
バーテンダーもまた、
その日本人に興味を抱いたのか
先ほどとは、うってかわって
上機嫌に話しはじめた。。。