数か月前にネット上で流れた岸香織さんの訃報。
公表されるまでは誤報であってほしいと思っていましたが、その後OGの方のラジオ番組で追悼コーナーがあったと知り・・それでもどこかでまだ信じられない思いでしたが、先月新聞に載り ・・本当にいなくなられてしまったということを悲しみと共に感じています。
よくお邪魔するブログでも訃報を受けて岸さんにお世話になったとコメントを寄せられている方がいらっしゃいましたが、私もそんな宝塚ファンのひとり。
歌劇誌の「えと文」のコラム「聞いて頂戴こんな話」は岸さんが雪組時代から専科に移動になっても、ずっと続いていた名物コーナー。
スターの素顔や面白いエピソードが軽妙洒脱な文章で綴られていて、毎月読むのがとても楽しみでした。
宝塚を知った頃、まだ見ぬ華やかな舞台、そこにいるスターは手の届かない遠い遠い存在。
その人たちの素顔を楽しくおかしく紹介してくれる岸さんのコラムは、その遠いスターを身近に感じたり親しみを持たせてもらえる、架け橋のような存在でもありました。
雪組時代、汀夏子さんのサヨナラ公演で汀さんを撃つ役だった岸さんが「千秋楽の日にワタシ、ジュンコを撃ちたくない・・」と書かれていた文章に涙したり、ターコさんにお食事のお誘いを受けて、ジュンコさん&ターコさん&岸さんの「ゴールデントリオ」でと言われて喜ぶ姿に笑ったり・・貴重なエピソードの数々がより一層宝塚を近いものにしてくれて。
長いキャリアで多くのスターとも交流がある岸さんならでのコラムでしたが、その視点は終始ファンに寄り添ったもので、いかにスターに親しみを感じてもらうかというサービス精神に徹していました。
華やかで遠い世界にいる憧れのスターたち。その手の届かない距離と、身近に感じる親しみやすさが共にあるところが宝塚の大きな魅力でもあり、岸さんに教えてもらったもののひとつでもあるような・・そんな気がします。
柴田先生のグラフ誌でのタカラジェンヌとの対談をまとめた「タカラジェンヌとコーヒーブレイク」。
折りに触れて読み返す1冊ですが、その対談の掉尾を飾るタカラジェンヌが岸さんでした。
心に残る深く重い言葉が沢山ある対談でしたが、その中から印象に残ったものをいくつか。
昔と今の気質の違い、悪かったところについてアドバイスするということについて
「良かったよ」と褒めるぐらい簡単なことはないでしょう。
でも「だけど・・」をつけてその次を言うのは、よっぽど親切でないとしないことです。
新大劇場(ちょうど対談時はこけら落としの頃)と時代の流れについて
機構はどんどん新しくなっていっても、舞台をやっている人間っていうのは、
永遠に古くていいですよね、根本の所は。
(以前久世星佳さんもトップ就任時に同じようなことを話していたことを思い出します。古臭くていいというのではなく、伝統を続けていくためのいい意味での古さは持ち続けていなければいけない・・ということなのかなと感じます)
下級生への提言について
今の子は、積み重ねないで、いきなり上を目指そうとするのよね。
順番に上がって行こうとする人は、落ちても一段しか落ちないだろうけれど、
楽する人はしたたかに落ちるやろね。
(タカラジェンヌではない自分が聞いても耳が痛い一言です)
スターについて
トップスターは、客席に対するアピールと他の生徒に「こいつすごいな」と思わせるだけの魅力は持っていてほしい。
目がずっとその人の動きにつれて動いていかない、そういうトップになっちゃダメだと思う。
(上級生としてずっと大階段の下でトップスターを迎えてきた岸さんならではのコメントで、これを受けて柴田先生は厳しいけれど、それは一般的な観客の目線だと思うと話しています)
ファンに愛される宝塚であるために、ファンには徹底的にサービス精神を持ちながらも、生徒には厳しい愛ある苦言も多かった岸さん。でもそれは強く宝塚を愛し、宝塚のためを思えばこそ。
大切なOGのひとりとして、100周年にいてほしかった方でした。
心からご冥福をお祈りします。
どうか空の上から見守っていてくださいね。