4/4と4/11の日曜日、世田谷文学館 で開催されていた「石井桃子展~石井さんの本はみんなの宝もの~」に行ってきました。



The Best of Times


児童文学の編集者として翻訳家として、作家として多くのこどもの本をこの世に送り出してくれた石井桃子さん

今年初めに近所の図書館に貼ってあったこのポスター。

懐かしい絵本の数々(それぞれが切手の形にデザインされているとても素敵なポスターでした)とその中で穏やかに微笑んでいる石井さんの姿を目にして、絶対に行きたいと思っていた展示会でした。


念願叶って4/4に訪れた石井桃子展。

そこには限りない感動と感謝がありました。

101年の生涯とその多くの日々を子どもの本に費やし、残してくれた沢山の素晴らしい仕事と言葉の数々。

ひとつでも多くその作品をその言葉を心に刻みたくて、翌週も出かけてしまいました。


ここで感じたことを書きとめておきたいと思うのですが、私にとって非常に思い入れが強い世界でもあるのでとても長くなってしまいそうで・・。

もしもご興味ある方、お時間ある方はよろしかったらおつきあいください(^^ゞ



4/4は春とは思えない寒い日曜日、最終日の4/11はやっと春らしいうららかな陽気でしたが、どちらも一歩中に入ると石井さんの作られた「暖かい世界」が広がっていました。


石井さんが翻訳を手がけた作品で私が最初に出会ったのは、この絵本。


ちいさなうさこちゃん (子どもがはじめてであう絵本)/ディック ブルーナ

¥735
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うさこちゃん。この名前を聞くと今でも何とも幸せな愛おしい暖かさに包まれる気がします。

この絵本の翻訳にあたり、石井さんはまずカナダ大使館に原作の英訳を依頼し、さらに本来の文章や言葉のニュアンスをつかもうと原作者のディック・ブルーナに問合せをしたそうです。

原作者ディックブルーナとの書簡が展示されていて、ブルーナが絵そのままの丸い字体で(笑)長年うさこちゃんを翻訳していくれていることへの感謝を綴っている暖かい手紙が印象的でした。


そこにはオランダ語のタイトル「Nijintje」(小さい子ウサギの意味)がブルーナの言葉で「Little Bunny」と書かれており、英語版タイトル「Miffy」ではなくこの「Little Bunny」を日本語にした”ちいさいウサギの女の子”「うさこちゃん」がよりブルーナの原作に近いものであったことがわかりました。

「うさこちゃん」で育った私にはカタカナの「ミッフィー」はなじめないものだったのですが、石井さんができるだけ原作の世界に近いものを届けようと作り出してくれた「うさこちゃん」に出会えたことが嬉しく、その苦労と情熱に感謝せずにはいられませんでした。



展示されてあった解説に「優れた翻訳とは逐語訳ではなくこなれた日本語の文章でなければならない。原作の美点を尊重し、活かしながら日本の読者に伝えることが大切であり、うさこちゃんはブルーナの原作と見事に重なっている」とありました。


やはり子どものうちは、カタカナの直訳でなくそのものを感じさせてくれるような言葉に出会ったほうが、後から「これは本当は○○だったんだ!」という新たな楽しみや発見もあるのではないかなあと。

初めて出会った言葉が石井さんの日本語だったことの幸せをあらためて感じました。



こちらも大好きだった絵本。


ちいさいおうち (大型絵本 (3))/ばーじにあ・りー・ばーとん
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原作者バートンとも親交があった石井さんが「この絵本は特に絵に力があり、絵を見るだけでお話がほとんど伝わる」と話されているように、嬉しそうにも哀しそうにも見えるおうちの絵が印象的ですが、その絵の世界を壊さずにより深く感じさせてくれた石井さんの文章も忘れることができません。


最後のページを読んだあとに、じわじわと広がる余韻。きっと子どもの頃はそれが「余韻」だとはわからずにいたと思うのですが、嬉しさや哀しさ、安心感。そのような言葉にならない気持ちを沢山感じることができた幸せをあらためて思い起こしました。


案の定長くなってきたので(^^ゞ~その2~へ続きます。