すっかり遅ればせながらの感想ですが(^^ゞ 8月に観た舞台です。
TSミュージカルファンデーション「天翔ける風に」 東京芸術劇場
幕末の江戸を舞台に、理想を実行しようとする三条英と、理想を掲げて疾走する志士たちの物語。
江戸開成所の女塾生・三条英は金貸し老婆殺害を実行に移したが、偶然そこに居合わせた老婆の妹までも殺してしまう。時代の大きなうねりの中で、命を燃やす人間たちの生き様が描かれてゆく…~TSミュージカルファンデーションHPより~
初演・再演と三演目ですが、今回が初めての観劇でした。
原作は野田秀樹の戯曲「贋作 罪と罰」。ドストエフスキーの小説「罪と罰」をもとにかかれたとのことですが、実はこの「罪と罰」、以前チャレンジしたものの、上巻途中で挫折した小説でf^_^;
果たせなかった!?未体験の世界が舞台ではどのようになるのかという興味ともしかしたらまた挫折するのではという不安(笑)を抱きながら劇場へ向かいました。
小説では帝政ロシアだった時代を幕末に変え、主人公を女性にした野田秀樹さんの着眼点に感心します。
恐らく小説では、根底に流れている大きなものは「貧困」だったと思うのですが(上巻で挫折したのに偉そうですが 笑)、戯曲ではそれを幕末という時代の「志」につなげているところが、ミュージカルの舞台にマッチしていたのではないかなと思いました。
三条英を演じた香寿たつきさん。初演から三演目ということで、これはまさにご自身の代表作になったといえるのでは。初演が宝塚在団中だったということを知りビックリしましたが、初演には在団中の外部出演ならではの緊張感や勢いがあったのでは・・とも思いました。とはいえ、やはりダンスも歌もさすがの貫禄と迫力、そしてより深くこの作品の世界を実感しながら大事に英を演じているように見えました。
同じ塾生で親友の才谷は山崎銀の丞さん。立ち姿や見せ方は決まっているのに、なぜか雰囲気が周りと違う・・と思ったらミュージカル初挑戦だったんですね。カーテンコールでほとんど口を開けずに歌う姿が印象的でした(恥ずかしかったのでしょうか!?笑)クールで影のある才谷は素敵でしたが、英との関係がもう少し強く出ていたら・・とも思いました。
刑事郡司之助の戸井勝海さん、ニヒリスト溜水石右衛門の今拓哉さん、歌の上手さはもちろんのこと、役柄もぴったりで華があり存在感たっぷりでした。大作ミュージカルとはまた違い、作品での役割がより大きく深いのでお2人の実力をより強く感じる機会になったような気がします。是非これからも色々な作品で主になって活躍してほしいなあと思いました。
英の父を演じた阿部裕さん、母を演じた福麻むつ美さん、など芸達者なキャスト陣、志士の平澤智さんを中心とする躍動感あふれるダンサーの皆さん、見ごたえあるメンバーばかりでした!
作品の世界観を深く理解できたかはわかりませんが(^^ゞ「志」という信念と、そして勇気や大儀と背中合わせにある不満や欺瞞など・・いつの時代にも人の世にあるものがダイレクトに伝わってきて、圧倒されっぱなしでした。
この幕末という時代は、舞台や映画・小説など色々なジャンルで数多く取り上げられますが、日本人が「志」を持って何かを変えようとしたその力が大きな魅力なのかもしれないと思いました。そしてその時代はやはり日本人が表現してこそ一番伝わるものがあるのではと。
翻訳ミュージカルでオリジナルの魅力を全て表現することはどうしても限界があると感じることがあり(仕方のないことではありますが)それがジレンマだったりする今日この頃だったのですが、日本人ならではのこのようなオリジナルミュージカルが存在するということに何ともいえない喜びを感じました。
上質なオリジナルを生み出していくのは、時間もかかり大変なことだとは思うのですが、謝先生が創るオリジナルミュージカルをこれからも応援していきたいと思っています