脱サラしてBARをやってみた                ~<追記>コロナ禍での新たな気付き 個人経営飲食店の実態 -16ページ目

当店ではジャック・ダニエルズというウイスキーを1杯650円で販売しています。

ジャック・ダニエルズ1本の仕入れ価格を2000円とすると、1杯当たりの原価は133円。(1本で15杯分と設定)

つまり、1杯当たりの利益率は650÷133=489%となります。

利益率489%なんて他の産業では考えられないくらい高いものです。

 

ところが、利益額はというと650-133=517円となります。

つまり、1杯売れて517円の利益しかないわけです。

もちろん、この利益から家賃、人件費、光熱費などを賄わなければならないわけですから、美味しい商売ではないことは一目瞭然です。

 

飲食業は、薄利多売な商売だという事を認識しておく必要があります。

長年想い続けてやっと開店した自分の店を、業績不振などで閉店しなければならないことはとてもつらいことです。

業績としては明らかに成り立っていないのに、思い入れがあるために「来月こそは」と期待を込めて思ってしまい、借金してまでもお店を存続させようとする心理は理解できます。

しかし、そうなってしまえば、生活そのものが成り立たなくなり、いずれは破たんせざるを得ないのです。

つまり、思い入れで、お店を存続させることはオーナー個人としての人生を考えると泥沼にはまっていく過程に他なりません。

 

そこで、僕は思い入れを排除し、冷静な判断をするために、オープン前の事業計画と並行して閉店のシミュレーションも行いました。

それは、自分が何歳まで生きて、子供が何人いて、家族の生活を守るために必要な収入を試算し、それを下回った時点で、お店を閉店するという、いわばライフプランニングを行ったのです。

 

そしてそのプランと実態を毎年検証しています。

シミュレーションを上回れば、その分蓄えもできますし次年度以降に余裕が生まれます。

 

ここで大切なのは、開店前に閉店の基準を設定する事です。

開店後だとどうしてもお店存続への想いが強くなってしまいます。

自分の店を持つことが夢であったとしても、家族と自分の生活を守ることが、人生の義務であり責任であることを忘れてはいけません。

僕は慎重なタイプで、出来るだけの準備をして物事を進めるタイプです。

日頃の業務もそうですが、事前の段取りで結果は8割がた決まっていると考えています。

 

そんな僕がお店を始めるにあたって自分に課した条件が、前述のとおり開店資金+1年分の運転資金が貯金できてからお店を始めるというものでした。

そして、それをクリアーするために16年半かかりました。

実際に開店してから、それは正解だったと感じています。

 

生まれ育った場所や、勤めていた会社の近くなど濃い人脈がある立地でお店を始める場合は別ですが、そうでない土地の場合、常連さんといわれるお客様をつかむまでに1年ほどかかります。

その場合、最初の1年間は赤字も覚悟しなければなりません。

ましてや、借金があれば、その1年間はとても苦しい期間となります。

 

新規オープンした飲食店が1年持たず閉店になるケースは少なくありません。

それは決してお店に魅力がなかったのではなく、軌道に乗るまでの体力がなかったケースが多いのではないかと思います。

 

長年夢みた自分のお店なのですから、例えお店を開ける準備が整ったとしても、数年間を焦らず、しっかり体力が付くまで我慢することが賢明だと思います。

実際に開店してみてうまくいくかどうかという保証は、どんなに緻密に準備しようと、どんなに努力しようとありません。

それは自分がコントロールできない要因も大きく関与してくるからです。

 

結局、そのお店の評価はお客様が決めるものであり、周りの環境や時勢も関わってくる以上、自分のコントロールできる範囲だけでは如何ともしがたいものがあるのが現実だと思います。

また、極端な例かもしれませんが、開店直後に火災に見舞われてお店を失うこともあり得ます。

だからこそ、もしダメでもゼロからやり直すという覚悟は開店前から必要だと言えます。

 

僕の場合には、ゼロからやり直すために、借金をしないで開店を迎えるということを自分に課しました。

つまり自己資金で開店できるようお金を貯めるまで開店を待ちました。

ダメになった時に借金があればゼロからではなくマイナスからやり直すことになり、それを避けたかったからです。

 

もうひとつ、開業前に、こういう状態になったら廃業しようという指標を設定していました。

実際上手くいっていないのに、「もう少しで改善するはず」とズルズルとしがみつくのを止めたかったからです。

僕の場合は38歳で開業し、ダメになればまたサラリーマンをやるつもりでしたので、雇用してもらうためには年齢的に1年でも早い方がいいという事情もありました。

 

詳しくは後述しますが、この指標を設定するに当たり、これから死ぬまでの人生で一体いくらのお金が必要かというのをかなり細かいレベルでシミュレーションもしました。

そうして、自らが納得できる引き際を設定することで冷静な判断を下す準備をしたのです。

僕の場合は、9月末に会社を辞め、同じ年の11月にお店をオープンさせました。

つまり、無職=無給だった期間は約2か月だったわけです。

その間はもちろん開店の準備をしていたわけですが、収入がなかった事に変わりはありません。

 

開業するまでの間、どれだけ無給の期間を短くできるかはとても大事だと思います。

その分の資金を開業後に振り当てられるわけですから。

 

無給の期間を短くするためには計画的に開店準備を進めるほかありません。

僕の場合はサラリーマンをしながら物件探し、内装などの打ち合わせ、各種手続きを進めました。

会社を退職した9月末時点では、物件の契約、内装の設計は完了し、工事を始める段階に入っていました。

土日や終業後でも出来ることはたくさんあるものです。

 

もちろん、そればかりを気にして、不満があるのに物件を決めたり、内装を決めたりすることは本末転倒です。

だからこそ、余裕を持った計画を立てることが重要だと思います。

 

また、やむを得ず無給期間が長くなる場合は、失業保険も活用するべきだと思います。