渡欧日記2025 ミラノ→ウィーン | バス・バリトン歌手 新見準平のブログ

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午後の飛行機でウィーンへ。

マルペンサからシュヴェヒャートへはRyanairというLCCで飛ぶことに。前回のブリュッセル↔︎ウィーンでも利用したが、乗った飛行機はLaudaという会社の飛行機。共同運航しているのだろう。留学してたころに乗ったことがある気がする…


ミラノから飛び立つと、霧というか靄が辺り一体を覆っていた。大陸と大陸がぶつかって出来た凄まじい地形だ…大きな大根があったらこのアルプスの岩肌で大根をおろしてみたい。きっと見事な大根おろしになるだろう。



そんなことを考えているとあっという間にウィーンが近づいてきた。

これほどに上空から鮮明で美しいウィーンの街を見たのは初めてかもしれない。まるで祝福してくれているかのように。ウィーンの街は「白い」。昨日読んでいた、宝木範義著「ウィーン物語」に書いてある通りだ。




少し遅れてウィーン・シュヴェヒャート空港に降り立つ。

荷物を受け取って、空港の広い空間に出ると13年前と変わらない「匂い」がする。昨年来た時に、5年も来ないとドイツ語を忘れてしまっただろうと決め込んでいたのですが、この匂いを嗅いでスーパーに入店するとスラスラと出てきてしまった。なんとも形容し難いのだけれど、僕の中の大切な時間に戻る「匂い」。

早速空港のスーパーBillaに入り、惣菜コーナーでレバーケーゼとゼンメル(パン)を注文。そして好きなビールヴィーゼルブルガーを買う。電車までの時間、それを頰ばって優勝。


ウィーンに来たら必ずまずこれからスタートする。

留学の最後の最後にこの味を知って、何かあの時の後悔のようなものが、毎回このパンにまず向かわせる。これは使命感以外の何物でもない。


前回の渡欧は韓国で携帯が壊れ、最後はスキポール空港に財布を落とすというとても恐ろしい経験をした。そして、もう一つ前回ウィーンの宿のチェックインがうまくいかなかったことは忘れられない。

今回予約しているのも昨年の5月に泊まったApertmentで、前回はキーボックスの番号と、暗証番号が間違えていたために、7時間待たされたという修行のような経験をした。あの時は麗しい季節Im wurderschönen monat Maiだったから良かった…今回の氷点下で同じことされると死を覚悟することになると思う。好きな街、ウィーンで凍死するのなら音楽家として忘れられない死に方だと思うけど、もう少し生きていたい。覚悟して電車に乗る。


マイドリング駅に着いて、スーパーに立ち寄る。

しかし、夜聴く演奏会の時間もあり、まずはチェックインするべきであろうと留まった。

玄関の暗証番号、そして部屋に向かうと様子が違う…全くリフォームされてしまっているのだ。


共同シャワーだったところが、おそらく各部屋に一つずつのシャワーに。部屋も見違えるほど綺麗になっている。そして前回は冷蔵庫も洗濯機もキッチンも無くなってしまっている…。自炊が楽しみで来た…しかし、その楽しみは奪われた。

何よりスーパーで大量の食材を買わなかった自分を褒めてあげたい。


シャワーを浴び(なんと生き返ることか)、今夜の部屋での楽しみを買い、演奏会へ。

今夜の演奏会はウィーン交響楽団の公演。


Wiener Symphoniker

Patrick Hahn, Dirigent

Kirill Gerstein, Klavier

Cornelius Obonya, Sprecher


PROGRAMM

ARNOLD SCHÖNBERG

Ode to Napoleon Buonaparte, op. 41b; Fassung für Streichorchester, Klavier und Sprecher

LUDWIG VAN BEETHOVEN

Konzert für Klavier und Orchester Nr. 5 Es-Dur, op. 73

– Pause –

LUDWIG VAN BEETHOVEN

Symphonie Nr. 3 Es-Dur, op. 55, „Eroica“


シェーンベルクの「ナポレオン・ボナパルテへの頌歌」、そしてベートーヴェン「皇帝」、「英雄」…凄いプログラムです。ウィーンに来たことを両鼓膜から実感して、全身の細胞が震えるようなプログラム!

 



前回はオルゲルバルコン(オルガン席の横で音しか聞こえない、罰ゲームみたいな席)だったところを今回はちゃんとした(笑)席を確保。 

開演前にステージを覗くと、2番ファゴットは後輩の吉村涼さん。芸大カンタータクラブで演奏した仲間です。このオーケストラの奏者になってしばらく経つと思いますが、やはり見つけたら2階席から声をかけてしまった…ご活躍が本当に嬉しい。


オボニヤのセリフの熱演にBravo!なシェーンベルクから、皇帝は見事なアタッカ!Es durからのEs durでベートーヴェンの音楽が逆に新鮮に聴こえてくる。ゲルシュタインのピアノの雄弁さ、また弱音の美しさには2楽章で感涙しそうに。英雄の軽快さと音の厚さには驚いた。ホルンが上手すぎて優勝!



終演後は吉村さんと楽屋口で面会。

去年聴きに来た時も実は「皇帝」だった…次回の皇帝も楽しみにしています…!!