今回紹介する作品は
1961年(昭和36年)新東宝
「湯の町姉妹」
山田達雄監督

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あらすじ
伊香保温泉の老舗旅館(伊香保館)の娘・道子(池内淳子)は三十路間近なのに結婚もせずに読書に没頭する日々。
妹の洋子(水原ユカ)は姉とは違い都会的な娘だった。
伊香保館の姉妹の話だけではなく従業員や宿泊客のエピソードを盛り込んだ、新東宝版グランドホテルです。

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姉の道子(池内淳子)
結婚だけでなく、旅館も株式会社にして有能な者に経営を任せればいいというドライな性格です。
メガネがトレードマークですが、これが余計婚期を遅らせています。

池内さんは大蔵社長退陣後、各社からひっきりなしに移籍話を持ち掛けられましたが、新東宝と運命を共にすることを決め、倒産まで出演されました。
一時は大蔵社長に露骨に虐められましたが、最も新東宝愛があった女優さんでしたね。

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洋子(水原ユカ)
21歳の妹の方は彼氏がいて、姉が早く片付いてくれないと困ると不満顔です。

水原ユカさんは大蔵社長退陣後にデビューした大型新人。新東宝最後のスターでした。
彼女の経歴は全く分かりませんが、かなりの演技派だったので、新東宝のスタッフが何処かの劇団員をスカウトしたのではないかと思います。

彼女の扱い方から、新生新東宝の方向性が分かりますが、結局それが生かされずに倒産してしまいました。
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水原ユカさんの恋人は菅原文太さんでした。
文太さんの役は、旅館のボンボンです。
チャラ男キャラで、池内淳子さんの見合い相手でしたが、双方が断っています。
チャラい文太さんはちょっとね~

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伊香保館の女将(花井蘭子)
いつも池内さんの結婚や旅館の行く末を心配してしています。

花井蘭子さんは元新東宝女優でしたが、大蔵体制が不満で去った方です。
大蔵社長退陣後の1961年は、花井さんの様に古巣に出演する方が結構いました。

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女中役の三田泰子さん(左)と若杉嘉津子さん。
彼女達のエピソードシーンもあります。

三田泰子さんは1958年の「天城心中 天国に結ぶ恋」でヒロインデビューする予定でしたが、石井輝男監督が三ツ矢歌子さんでないとダメ!と強硬に反対したのでお流れに。
その後遺症からか、イマイチ魅力を発揮することなく女優人生を終わられました。

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宿泊客のエピソードも満載です。
亀山(由利徹)と晴美(三条魔子)
二号さんから正妻を狙う三条さんと、由利さんとの会話が楽しい。
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三条さんはお色気担当でもありました。
由利さんと「痴人の愛 」ごっこをしたり、お風呂の更衣室で着替え中男性客が入ってきても堂々としていて、貫禄十分でした。

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珠代(小畑絹子)と雪夫 (浅見比呂志)
由利・三条のカップルと逆パターンですが、実は由利さんと小畑さんは夫婦だったのです。
小畑さんと浅見さんは「蛇精の淫」でコンビになっているので、ここからの連想なのでしょう。

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島倉千代子さんが池内さんの友人の美容師役で出演。
冴えない池内さんを変身させようとします。
島倉さんって結構映画出演していますね。
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島倉千代子さんが出演しましたから歌も披露。二曲歌いました。

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島倉さんの腕で変身した池内さん
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早速サラリーマン客の高宮敬二さんがダンスをお願いに来ました。
見合い相手だった文太さんも、すっかり見直します。

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売れない作家役が沼田曜一さん。彼は伊香保館を定宿にしています。
実際に伊香保の老舗旅館でロケしたようですが、立派な木造建築ですね。
多分現在は取り壊されたと思いますが。

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沼田さんの弟役が島倉征夫さん。島倉千代子さんの実弟です。
彼はこの時期に一時俳優活動をしていたそうで、歌も一曲歌いました。

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由美子(星輝美)
宿泊客達は部屋を出てダンス等をしているのに、部屋に引きこもって訳ありの様子です。
今回の輝美さんが一番大人っぽいかな。
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部屋には男(江見俊太郎)が居て、何となく不自然な様子です。
夫婦なのか?不倫関係なのか?
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江見さんが輝美さんに迫ろうとすると、輝美さんは江見さんの腕を噛んで隣の部屋に逃げ込みました。
隣は老夫婦(林寛・徳大寺君枝)が使っていて、輝美さんは訳を話して一晩泊めてもらいます。

林寛さん徳大寺君枝さんは中川信夫監督の「地獄」でも夫婦役でしたね。
でも、あちらの作品はこんな良い夫婦ではありませんでしたが。
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江見さんの留守中に部屋に戻り、江見さんの財布からお札を抜き取る輝美さん。
輝美さんはカモ(江見さん)に声をかけ、隙を見つけてお金を盗る悪党だったのです。
新東宝最後の作品が悪女役だったとは・・・

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実は池内さんは沼田さんが好きだったのです。
作品途中で沼田さんの作品が賞を受賞し、最後は池内さんが帰る沼田さんを追っかけて終了。

あとがき
「湯の町姉妹」は1961年5月17日公開で、新東宝は二週間後に映画制作を停止して倒産しました。
大蔵社長退陣から五か月しか持たなかったのが悔やまれます。
せめてもう一年間続いて欲しかったな。

というわけで、出演者の大半が最後の新東宝作品となり、他社に移籍する者・フリーになる者・このまま引退する者と、散り散りバラバラになっていきました。
しかし、花井蘭子さんは、映画公開から4日後の5月21日に亡くなりました。享年42歳でした。


島倉千代子さんが劇中で歌った「おもいで日記」がありましたので貼っておきます。









今回紹介する作品は
1961年(昭和36年)新東宝
「地平線がぎらぎらっ」
土居通芳監督
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あらすじ
新人り囚人のマイト(ジェリー藤尾)が、刑務所のしきたりを守らず傍若無人な振る舞いをするので、同じ房の連中達が殺そうとするが、彼が宝石強盗の一味だと分かり、隠した宝石欲しさに一転して全員で脱獄を計る。

新東宝最晩年のこの年はゲスト俳優が数多く出演していますが、今回はジェリー藤尾さんを主役に迎えたアクション映画です。

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新波(通称マイト) ジェリー藤尾
秩序が取れていた刑務所の囚人房に突如現れた傍若無人な新入りです。
ジェリーさんがいなければ、この作品は成り立たない程のインパクトのあるキャラでした。
新東宝の窮地だったので、おそらく格安のギャラで出演されたと思いますが、出演してくれてありがとうと言いたいです。

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太田(通称カポネ) 多々良純
組員を刺してムショ入りした獄房の牢名主。
仁義にうるさく、マイトみたいな自分勝手な奴は大嫌いで、その後集団で殺そうとします。

多々良さんもゲスト出演ですが、いつものキャラではなく、こういう強面な役も似合ってましたね。

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松田(通称教授) 天知茂
興信所の所長だったが、顧客の秘密を逆手に強請った為ムショ入り。
教授のあだ名通り、冷静沈着で獄房の知恵袋。

あくまでもクールなのは天知さんらしいですが、髪型は笑えます。

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大平(通称色キチ) 大辻三郎
あだ名通り婦女暴行でムショ入り。
知恵遅れ的なキャラで、獄房のお笑い担当だが、後に囚人仲間を殺します。

大辻三郎さんという方は、漫談家の大辻司郎さんとなにか関わりがあるのですかね?(弟子とか)
実子の大辻伺郎さんより父親に顔が似ているので、実は隠し子だったとか。
ともあれ、色キチ役は大辻三郎さんの当たり役です。

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(通称海坊主) 晴海勇三
マドロス野郎だが、麻薬密売でムショ入り。

マイトの宝石強盗の件を聞きつけ、満期でムショを出れたので仲間の脱獄の手配をする。
いつも色キチをバカにして、分け前が減るからと邪魔な色キチを殺そうとしますが、
逆に色キチに殺されてしまいました。

晴海勇三さんは元ウエイトリフティングの選手だった映画界でも屈指の力持ち。
新東宝倒産後、日活に移籍した数少ない俳優です。

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土屋(通称バーテン) 沖竜次
異常なヤキモチ焼きで、ホステスの女房(万里昌代)が客といちゃいちゃしているのに嫉妬して、客を刺し殺してしまう。
しかし、獄房の中では要領のいい男だった。

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カポネ達のリンチにもめげずに徹底的に抵抗するマイト。
教授はマイトを全学連と呼び、カポネに「我々とは考え方が違う。好きなようにさせてやれ」と進言するが・・・
この辺り、全学連とか時代を感じさせます。

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しかし、カポネは証拠も残さず殺せる薬がある。とマイト殺そうとする。
しかし、出所する海坊主がマイトは宝石強盗の一味で多数のダイヤを隠している事を聞きつけ。
その後は一転してマイトがリーダーになってしまい、紆余曲折の末脱獄に成功する。

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一味はグロンサンの宣伝バスを奪って逃走します。
これはグロンサンを販売した中外製薬(当時)とタイアップだったのかな?
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悟られないように宣伝員になって、住民にサービスするマイト達
ほのぼのとしたシーンも組み込まれていますが、宣伝バスの運転手は殺していました。

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途中女の子達が歩いていたので、飢えていたマイト達は拉致しようとします。
色キチは、ここでもミスを犯し猟師に捕まるが、カポネに助けられ猟師は射殺。
助かったと思いきや、遂にカポネに射殺されてしまいました。

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唯一拉致されたのが、トランジスタ工場従業員の八重ちゃん(星輝美)
輝美さんはこの作品のヒロインですが、1時間経ってからの出演です。

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輝美さんは失神していた間にマイトに犯されたと思い込み、「責任をとって」と絶えずなじります。

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バーテンの女房の実家の村を通りかかったので、唯一バスを運転出来るバーテンは運転を放棄して村へ飛んで行ってしまう。偶然村祭りだったので、得意の太鼓を叩いて輝美さんにいいところを見せるマイト。

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プンプンしていた輝美さんもニッコリ顔に

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バーテンの女房(万里昌代)は男が出来て実家に逃げていたのだった。
怒り狂ったバーテンは包丁を振り回して追いかける。
火消しの鐘を叩いて村人に知らせる万里さん。

その後バーテンは村人たちに袋叩きにあって御用。
でも、そのおかげで唯一生き残れました。

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バスが使えなくなったので、自家用車に乗り換えたが、降りた所でマムシに噛まれたマイト。
輝美さんが必死になって治療介抱するが、症状は悪くなる一方。
その後輝美さんは医者を呼びに行きますが・・・

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カポネと教授はダイヤモンドの行方しか頭になく、瀕死のマイトを拷問して聞き出そうとします。

マイトが呟いた「柿」を隠し場所と思いこんだ二人は、柿の木の下を掘るうちに、カポネは隙を見つけて教授を撃ってしまいます。
「ダイヤは俺とお前のもんになったぜ」というカポネに「ダイヤか。あれはな、嘘だい」と答えるマイト。呆然として、「ダイヤは」というカポネに、「地平線の上にぎらぎら光ってらい。ざまあみろ」と。
そして絶命するマイト。
怒りの収まらないカポネは、大きな石をマイトの顔に叩きつけようとして、そして、撃たれました。教授が最後の力を振り絞ってカポネを撃ったのです。カポネの死体。教授の死体。そして笑みを浮かべて死んでいるマイト。
獄房の一味はバーテン以外みんな死んでしまいました。


あとがき
土居通芳監督は大蔵社長のお気に入りだったにせよ、これまで大蔵社長の介入で本意ではない作品を撮っていた気がしています。
大蔵社長が退陣後「地平線がぎらぎらっ」で、これまでの鬱積を吐き出した様な作品に仕上げています。
マイトが宝石強盗でないのに、何故か一味に付き合った突っ込みはありますが、
ブラックなシリアスさとコミカルなシーンのバランスが絶妙です!
私は大蔵社長退陣後の新東宝作品が好きなのですが、その中でも「地平線がぎらぎらっ」が一番好きです。(輝美さんの好演込みですが)
しかしながら、ジェリー藤尾さんがいなければ成り立たなかったのも事実です。
本当に可哀想だったのはカポネら囚人達だったかな。マイトが来なければ安楽に過ごせたのに。

そして、ジェリー藤尾さんが歌う主題歌の「地平線がぎらぎらっ」が最高!
♪ぎらっ、ぎらっ。ぎらっ、ぎらっ。あの地平線が光ってる。そこにはオイラの夢がある♪

オープニングやエンディングだけでなく、劇中でも流れますが、この歌が非常に効果的でした。

土井監督はその後、萬屋錦之介さん主演の「破れ傘刀舟悪人狩り」のメイン監督として活躍しましたが、制作途中に48歳の若さで亡くなりました。
土井監督は私と誕生日が同じ事もありまして尊敬しています。



年末に大腸がん検診の結果が書いた手紙が来ました。
開けて見ると、陽性反応の診断だったのです。
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手紙には、大腸がんと確定したわけではないので、心配しないで下さい。と書かれていましたが
、そんな言葉で安心できるはずがありません。

早速病院に行って、大腸の内視鏡検査日の予約を取って来ましたが、検査日は年明けになってしまいました。

なので、とてもお正月気分を味わう事は出来ず、もっぱら大腸がんのネット検索ばかりしていました。
すると、陽性反応が出ても、大腸がんと診断されるのは5%程度と書かれたサイトを発見!

たった5%なのか!
でも、陽性反応になる確立の10%には入ってしまっているし。
たかが5%されど5%。

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内視鏡検査日前日には食事制限がありました。

素うどんや、おかゆを食べた後21時にセンノシド錠(下剤)を飲んで就寝。

当日の朝食は不可で、9時に病院に到着。
待機室に案内され、下剤入りのスポーツドリンクを1リットルと、500ミリリットル以上のお茶か水を飲むように指示されました。
要は便が透明な水の状態にしなければならないのです。
待機室には当然トイレがあります。
当日は私を含め3人が居ましたが、下剤入りのスポーツドリンクを飲んだあとは、皆さん何度もトイレに駆け込みました。

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そして、午後になって検査室に呼ばれました。
まず、点滴を打ちました。これが生まれて初めての点滴です。

30分してから、いよいよ検査です。
点滴を入れた状態で、痛み止めの注射を打ち、内視鏡を盲腸まで入れていきます。
大腸内に良性のポリープがあれば、その場で切断し、がんがあれば、状態によって対処します。

人間もある程度の年齢になると、普通にポリープの一つや二つは出来るそうです。
私自身胃腸の弱い体質なので、ポリープは覚悟していましたが、悪性腫瘍はありませんようにと祈りながら検査を受けました。

大腸内を映すモニターは患者の私にも見せてくれて、先生の説明で私の腸内を見ていました。
先生の話し方が滑らかだったので、不安が安心に変わっていき、約10分で終了。
結局ポリープも無く、想像以上に綺麗な私の腸内を見て感動しました。

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お土産に、私の大腸内を写した写真を頂きました。
アップではあれなので、ロングからの写真にしときます(笑)

とりあえず一安心ですが、現在の大腸内の状態を悪くしたくないので、これからも暴飲暴食は避けていきたいと思います。

それにしても、患者に自分の腸内のモニターを見せる効果は絶大だと思いました。
見ると安心できるし、異常なしでも自分の身体を大切にしようと思いますからね。






今回紹介する作品は
1976年(昭和51年)東映
「キンキンのルンペン大将」
石井輝男監督

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あらすじ
山形の二宮清十郎(愛川欽也)は、何の仕事をやっても長続きせず、遂に妻に追い出されてしまい、東京でやり直そうとするが、上野駅に着いた途端に早速虎の子の財布を掏られてしまう。

今年4月80歳で亡くなった愛川欽也主演・石井輝男監督による哀愁喜劇映画です。

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二宮清十郎(愛川欽也)
「トラック野郎」シリーズのヒットで「やもめのジョナサン」役の愛川さんにも主演映画の企画が
回ってきた様です。
映画タイトルは「キンキンのルンペン大将」となっていますが、劇中で本当のルンペンになったのはほんの僅かで、キャラとしては和製チャップリンですね。

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二宮君子(三島ゆり子)
美容院を経営するキンキンの妻だが、仕事が出来ないキンキンをバカにして、遂に家から追い出してしまいました。

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三島さんの美容院の客にキンキンの「トラック野郎」での妻である春川ますみさんが。

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遠藤大五郎(伴淳三郎)
ルンペン集団の元締めで、キンキンにルンペンのイロハを教えます。
劇中の重要なキャラなんですが、伴淳さんは友情出演だったのですね。
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キンキンに「美味しい残飯」の見分け方を実地指導する伴淳さん。

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駒井鉄五郎(田中邦衛)
ルンペン仲間で、キンキンがルンペンになるきっかけになった人。
田中邦衛さんもいろんな役やりますね。

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靴問屋に就職訪問に来たキンキン。
同じ求職者のせんだみつおさんと、職安職員の和田アキ子さん
和田アキ子さんデカいな

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東陽軒の女店員(鰐淵晴子)
鰐淵さんは、キンキンに残飯の便宜をするが、実はキンキンの体が目的(あだ名が千姫)の凄い役です。

この他に、南利明、殿山泰司、加藤治子、松井康子、湯原昌幸、武智豊子、そして小林亜星、毒蝮三太夫といった方々が助演しています。
助演の方々が個性的というか豪華なんですね。

しかし、一番注目なのはこの方
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白川秋子(坂口良子)
二宮清十郎(愛川欽也)と同じ山形出身で、就職先が決まっていない境遇が同じなので、二人は意気投合します。
坂口良子さんは、これが映画初出演。
山形弁丸出しで喋りますが、坂口さんは、この時代で田舎娘役を演じる最高の方だったと思います。
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二人は、愛川さんの就職先の靴問屋の下宿で寝泊まりします。
東陽軒で仕入れた残飯の「ステーキ弁当」を食べる坂口さん。
彼女は、これが残飯であることを知りません(笑)
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劇中、坂口さんはよく泣きますが、こういうシーンがたまらなくいいです。
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その坂口さんにも本当の彼氏(星正人)が出来てしまいます。
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劇中終盤でのキンキンと坂口さんのダンスシーン
石井監督の作品とは思えない、ロマンチックなシーンです。
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そして坂口さんは星正人さんと一緒になる事を伝えてキンキンと別れました。
坂口さんのこの表情がいい。

あとがき
「キンキンのルンペン大将」の評価は決して高くありません。というか、かなり低いですが(泣)
私は石井監督としては珍しい哀愁喜劇を上手く撮ったと思います。
石井監督らしいグロいシーンも勿論あります。

最後のシーンなんかは、チャップリン映画を参考にしているのかな?
調べてみると、キンキン自身もこの作品を気に入っていたようです。

今年4月に愛川欽也さんが亡くなられました。
「キンキンのルンペン大将」は一部の劇場で追悼上映されたそうですが、CSでは放送されませんでした。
写真は10年前の2005年4月にチャンネルNECOで放送されたものですが、当時我が家は、ケーブルテレビとアナログ契約していた為、ご覧のように画質が悪いです。

綺麗な映像で再放送を望みたいのですが、どうやら10年前よりも放送基準が厳しくなってしまったようで、タイトルに「ルンペン」が入った作品は放送が不可能になってしまったのでしょうね。


これは「キンキンのルンペン大将」のオープニングと坂口良子さんの初登場シーンの動画
テーマ曲の「うつむいて歩こう」も聴けます。
これはデジタル映像なので、私の録画のより綺麗ですね。


最後に挿入歌の「ルンペン・ブルース」の動画も貼っておきます。

では、よいお年を。






今回紹介する作品は
1961年(昭和36年)新東宝
「俺は都会の山男」
小野田嘉幹監督
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あらすじ
正面から事に当る正義漢である朝日奈七郎(吉田輝雄)は、そういう性格なのでなかなか就職口が決まらない。ある時偶然知り合ったスリの一平(浅見比呂志)の口車に乗って「喧嘩屋商会」なる珍商売を始める。

吉田輝雄さん主演のコメディ映画ですが、劇中のほとんどがテンション高く推移しているので、観ていて疲れる映画でもあります(笑)

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朝日奈七郎(吉田輝雄)
今回の吉田さんは、宇津井健さんの様な猪突猛進キャラです。
そして劇中やたらと相手を殴ります。殴る回数は史上ナンバーワンかもしれません。
それに7人の女性にモテてしまうのです。

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南一平(浅見比呂志)
「セクシー地帯」の三原葉子さんバリの調子のいいスリです。
吉田さんは他の人の言う事は全然聞かないのに、浅見さんには従ってしまうのですね。

そして、この作品にはコロムビア・トップ、ライト、江戸家猫八、一竜斎貞鳳、三遊亭小金馬と芸人さんが多数出演していますが、今回は、他ではあまり伝えられない新東宝俳優さんを特に詳しく紹介します。

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山代美弥子(三条魔子)
五井産業の秘書で吉田さんの恋人です。
五井産業の孫娘の友人(万里昌代)のコネで就職をあっせんするが、吉田さんがあの性格なのでご破算になり、その事でいつも喧嘩しています。
吉田さんと三条さんの恋人設定はこれで三度目ですが、石井監督が手掛けない限りは、三原さんよりは似合っていますね。

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五井ルリ子(万里昌代)
五井産業の孫娘。以前から三条さんが吉田さんの恋人なのを知っていましたが、いつの間にか吉田さんに夢中になります。

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宮本ミキ(星輝美)
白タクの運ちゃんだが、乗車した吉田さんに一目惚れします。
輝美さんって、そういう役はあまり似合わないと思うんだけど、カミナリ族とか多いですね。
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運転する輝美さんと、乗客の吉田さんのツーショット

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赤倉光江(山村邦子)
浅見さんの済むアパートの大家
吉田さんは若い娘だけではなく、おばちゃんにも惚れられてしまいます(笑)

山村邦子さんは現代劇・時代劇問わずオールマイティに活躍しましたが、「黒線地帯」での奇妙なホステス役とか、「海女の化物屋敷」で奇声を上げる未亡人とか、突拍子もない役が印象的です。

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大川銀子(宮田文子)
バーのマダムで、地上げ屋被害の相談で吉田さんと知り合い惚れてしまいます。

宮田文子さんは俳優座四期生で、宇津井さんと同期。
母親役が得意で、代表作の「亡霊怪猫屋敷」では、何と5歳年上の中村竜三郎さんの母親役を演じております。
老けて見えますが当時27歳の宮田さんです。

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春千代(橘恵子)
吉田さんと対立する地上げ屋社長の情婦だったが、吉田さんに会った途端に寝返ってしまう。

橘恵子さんは新東宝末期に、多数の作品で助演しました。
演技の器用な方で、新東宝が倒産しても他社で十分に活躍出来るのに残念だなと思っていましたが、最近になって歌手になっていた事が分かりました。

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町田エリ(高城美佐)
週刊天国の記者。こちらも地上げ屋被害の相談で吉田さんと知り合い惚れてしまいます。

高城美佐さんは新東宝末期にデビューした最もキャリアの浅い方で、演技がイマイチな真面目な役が多かったのですが、このツンデレキャラで確変しましたね。
吉田さんに惚れる7人の中で一番良い演技をしていたと思います。

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小野田嘉幹監督は妻の三ツ矢歌子さんを優遇する事で有名ですが、今回は週刊天国の表紙で登場。

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週刊天国・中川編集長(川部修詩)
一応編集長ですが、実質高城美佐さんに牛耳られています。

川部修詩さんはキザな役や、嫌味な役が多かったのですが、こういうコメディチックな役が似合うとは思いませんでした。
因みに川部さんは、俳優を辞めた後、実際に業界紙の編集長になっています。

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地上げ屋社長(沢井三郎)
ヤクザだが、東京オリンピックに向けての土地ブームに便乗して地上げ屋になる。
吉田さんの喧嘩商会と対立する一人です。

沢井さんは、新東宝で最も活躍した助演男優の一人ですが、キャリアも豊富な方です。
外見上そうは見えませんでしたが、以外と年齢はいっていてアラカンさんの一つ下でした。

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小松川三次(並木一路)
後に沢井さんを配下にした右翼団体の幹部です。
右翼団体の代表(宇田勝哉)がいますが、実質取り仕切っています。

並木一路さんはこういう強面な役が上手いのですが、元々は漫才師だったのです。
しかし、並木さんは酒乱で有名で、酒を飲むと女湯に飛び込んでいくそうです。

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丹波哲郎さんが警官でチョイ役出演
丹波さんは、大蔵社長と喧嘩別れして新東宝を去りましたが、「女奴隷船」に続いて出演しました。
いずれの作品も小野田嘉幹監督でしたので、特別親しかったのでしょうかね?

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最後に、裁判長と書記役で出演した、由利徹さんと南利明さん。
この二人はいろんな会社でショートリリーフをやっていますが、新東宝が最初なのです。
しかも、脱線トリオで主演作もありました。

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結局、右翼団体を潰した吉田さんは、予想通り7人から三条さんを取っておしまい。
吉田さんが女の子と手をつないで走るシーンなんて貴重ですね。

あとがき
冒頭にも書きましたが、作品のテンションがずっと高いので、観ていて疲れてしまいます。
そういう所が喜劇映画が苦手な小野田嘉幹監督の問題点でしょうか。

でも、東京オリンピックに伴う地上げとか、池田首相批判とか、当時の風刺は効いているので良い点もあります。

個人的には、高城美佐さんが凄く良かったので、新東宝倒産でそのまま引退してしまったのが残念です。