2018年11月に著者デビュー15周年を記念して書き下ろされた長編小説です。

 

直木賞候補になり、2019年本屋大賞候補にも上がっています。

 

汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。 この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、この言葉の真意とは? 秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……。 幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ! (Amazon内容紹介より)

 

まず、この作品を好きな人は図書館を好きな人だと思います。

 

「小説なんて読まなくたって生きていけます」p43

この白石さんの台詞で始まる第2章では、私が本を読むきっかけを思い起こすエピソードがたくさん出てきます。

 

片手で持てるくらいの小さな箱で、取ってのある蓋がついています。正面にはラベルを差し込むための金具が取り付けられていました。p158

 

今や図書館の図書はバーコードで整理されていますが、まさに私の若い頃は全てカードで整理されていたので、懐かしいです。

 

さらに第3章から5章にかけて、著者の読書志向(本作を受け入れられるか否かの分かれ目かも)を背景にした物語が展開されていくところが、面白かったです。

 

この世界にどこか穴が開いていて、その向こうには不思議な世界が広がっているという感覚。つねに「神隠し」が我が身に迫っているという感覚。それは不気味なものであり、なお甘美なものだった。p903

 

まとめるのは難しい長編ですが、冒険小説と言いたいです。