過去に戻れるとしたら

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コーヒーが冷めないうちに


とある街の、とある喫茶店の、とある座席には不思議な都市伝説があった。その席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるという。ただし、そこにはめんどくさい……非常にめんどくさいルールがあった。
1.過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事はできない
2.過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない
3.過去に戻れる席には先客がいる
その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
4.過去に戻っても、席を立って移動する事はできない
5.過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、
そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる。
お願いします、あの日に戻らせてください―。「ここに来れば、過去に戻れるって、ほんとうですか?」不思議なうわさのある喫茶店フニクリフニクラを訪れた4人の女性たちが紡ぐ、家族と、愛と、後悔の物語。


脚本家の著者川口俊和氏はこの作品が小説デビューでした。

この作品の元になった1110プロヂュース公演が杉並演劇祭大賞を受賞していたので、本作が書籍化になった時点で話題となっていました。

発刊当時書店でPOPを見たことを覚えているのですが、当時他の作品に夢中だったせいか、今日まで手に取ることがありませんでした。

先日続編も出ていることを知り、やっと読むことができました。

過去を往来するという話は、筒井康隆の「時をかける少女」が代表的ですね。

いつの世も人は「もう一度過去に戻ってやり直したい」と思うことがあります。

しかし、実は過去に戻り現実を変えることが重要ではなく、変えるのが必要なのは「心」なのだということを思い知るのです。

この作品からも、心ひとつで人間はどんな辛い現実も乗り越えていける生き物なのだという、心強いメッセージが伝わってきました。