愛なき世界 (単行本)

 

恋のライバルは草でした(マジ)。洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々…人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!?道端の草も人間も、必死に生きている。世界の隅っこが輝きだす傑作長篇(「BOOK」データベースより)

 

今日紹介するのは三浦しをん氏が読売新聞に掲載し、2018年9月に単行本として発表した作品をご紹介します。

 

「植物」の研究に関する部分は分からないという人も多いかもしれない(実際に私もそうでした)447ページの長編を、それまで興味もなかった植物の細胞を顕微鏡で覗いてすごく綺麗だと思うそんな藤丸の気持ちそのままの感情を抱いたまま、著者のユーモア溢れる文体、抜群なギャグセンス(ギャグか?)のおかげで、爆笑できるシーンも多くて一気に読むことができました。


そして何より個性的な登場人物たちみんなのことがとっても好きで、特に主人公の藤丸は特に頭は良くないけれど、彼の台詞にはものすごく力があって、ラストで「愛」について彼が思う所を述べるシーンは本当に素晴らしいです。


「愛」なんてベタな言葉なのに、「植物」なんて地味なのに、この小説はキラキラしていて素敵な世界を教えてくれました。


いやはや「駅伝」「林業」「辞典」だけじゃなく、「植物」までもこんな物語に仕上げてしまう三浦さんは、本当にさすがです。