煌 (文芸書)


「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。理由はなんとなく思い当たる。新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。女たちの視線が痛い。どうして私だけこんなことに――。悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……「闇に咲く」他、遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。

天地一転 元禄16年(1703)
椀の底  享保17年(1732)
山の灯  安永5年 (1776)
闇に咲く 文政6年 (1823)
雪の花道 弘化2年 (1845)
文    安政2年 (1855)

花火をテーマに江戸時代のなかで、覚悟をして生きた人を描いた志川節子氏の連作集。

市井の江戸庶民が時代を築いていたのだと語るこの作品は、人生模様を花火と重ね合わせています。

真夏ももうそこまで来ている今読むのにふさわしい作品です。