
私はあなたの記憶のなかに
少女、大学生、青年、夫婦の目を通して、愛と記憶、過去と現在が交錯する多彩で技巧をこらした物語が始まる。角田光代の魅力があふれる魅惑の短篇小説集。
今日ご紹介するこの作品には、《「さがさないで。私はあなたの記憶のなかに消えます。夜行列車の窓の向こうに、墓地の桜の木の彼方に、夏の海のきらめく波間に、レストランの格子窓の向こうに。おはよう、そしてさようなら。」――姿を消した妻をさがして僕は記憶をさかのぼる旅に出た。》(表題作)のほか、《初子さんは扉のような人だった。小学生だった私に、扉の向こうの世界を教えてくれた。》(「父とガムと彼女」)、《K和田くんは消しゴムのような男の子だった。他人の弱さに共振して自分をすり減らす。》(「猫男」)、《イワナさんは母の恋人だった。私は、母にふられた彼と遊んであげることにした。》(「水曜日の恋人」)、《大学生・人妻・夫・元恋人。さまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語。》(「地上発、宇宙経由」)など八つ短篇が収められています。
著者が作中で語らせている台詞
「人間の中身なんて10数年でそんなに進化しないだろうから、すれ違ったり、待ったりってのはあるだろうね、精神的にはさ。」
これが生きていく中の人との出会いを鋭く表現していると思いました。
タイミング的には、表題作がまさに読んでいたGWに当てはまっていて面白かったです。
角田光代さんは、本当に人を深く観察している人だなと感心します。
