神戸女学院大学の教授の座を退官されてなお、精力的に活躍中の内田樹先生の著書。
呪いの時代/内田 樹

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この著書は「日本辺境論」を出版されてから、不定期に連載されていたものをまとめられたものです。
あとがきにも書かれていますが、この著書の主題は「呪詛」と「贈与」です。
著書において展開されたなかでは、特に「婚活」「草食系男子」という言葉の考察が面白かったです。
赤い糸でむすばれる運命を信じるという「赤い糸イデオロギー」を刺激し、結婚情報産業によって不安をあおられる「婚活」ビジネスクライアントを生み出しているんですね。
それは「就活」同様、「もしかしたらもっと自分にふさわしい人がこの世にいるのでは?」という焦りを産むんです。
が、「結婚」には「誰と結婚しても、そこそこ幸福になれる」という涵養さが今欠けたことに問題があるようです。
それは「他者と共生する力」の劣化であり、日本社会の深刻な問題だと著者は指摘します。
自分と価値観が違い、美意識が違い、生活習慣が違う他者を許容することができない人が、今多くいるということなのです。
仲人のあたりではふっと口元が緩んだりしましたが、これは大きな問題なのだと改めて感じました。
そして「草食系男子」を「傷つく自分を恐れ自ら抑圧している男性たち」と解析されると、その抑圧に負けたときを想像すると恐ろしいですね。
この2つの例「婚活」「草食系男子」も著者の言う嫉妬やねたみ、焦りー「呪い」にかかったものたちと考えると納得できます。
さらにその「呪い」を解くには、他者へ「ありがとう」、もしくは「おはよう」というあいさつを贈るということで他者を許容する、もしくは愛するという行為へつながるという著者の論もなかなか面白いです。
大学や自ら学びの塾で若い人たちと学びあう著者ならではの語り口に、今回の著書も一気に読ませてもらいました。
