シズコさん (新潮文庫)/佐野 洋子

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佐野洋子さんといえば、私には「百万回生きた猫」という絵本しか浮かびません。もっと名前を覚えず読んだ絵本があるのかもしれませんが、私にはこの本がぴったりだったのです。


この本の表題の「シズコさん」さんは佐野洋子さんのお母さんです。第2次世界大戦の戦前戦後をたくましく生きられた女性です。

読んでいながら、決して佐野さんのおうちが特別なのではなく、あの時代はああでもしなければ生きていけなかったのでしょう。

ただ、子ども心に母親に甘えたい洋子さんの心のうちが、本のあちこちにちりばめられていて、それが叔母さんの優しさや、なくなったお兄さんや妹さんと比較されているのが、涙をそそりました。

シズコさんは、私の母の年代と同じですので、洋服を作り直したり、毛糸の服を編みなおしたり、もちろん料理も手作りです。

洋子さんは、幸いにもおかあさんからそのすべてを教えられました。そのときは遊ぶこともできず悔しかったと書かれていますが、結婚してからそのありがたみを思い知らされるんですね。

私は、習っていなかったほうなので、未だに料理は下手で魚をうまくさばくことができません。

7人という大人数の子どもを生み、亡くし、果ては20代で夫に先立たれ、一人で子育てしてこられたシズコさん。

息子の嫁に自分の家を追い出され、老人ホームに入れられてから、初めて洋子さんと体をさわることができるようになるなんて、読みながら、想像を超えているきがしましたが、現実はそういうものなのですね。

シズコさんがなくなったころ、洋子さんには癌がつき、結局お2人は亡くなりました。

「もうなんでも忘れましょう」ボケていながらおしゃったシズコさんの言葉に私は、この世を悟られた言葉に聞こえました。