今更ながら、あの一戦について。
最近のSNSは格闘技の動画で溢れていますが、中でも井上尚弥と中谷潤人による日本人同士の世界戦は、まさに剣豪同士が火花を散らす「研ぎ澄まされた斬り合い」そのものでした。
あいにく当日は移動日と重なり、リアルタイムで観戦できなかったことが悔やまれます。
やはり、井上尚弥は底知れなかった。
中谷も間違いなく怪物級の強さでしたが、試合の天秤を支配していたのは井上でした。第11ラウンドの攻防を改めて見返すと、有効打の数は明らかに井上が上回っており、あのアッパーが中谷の眼窩を捉えた瞬間、勝負の均衡が崩れたのだと分かります。
近年の井上は、早いラウンドで決着をつける試合こそ減りました。しかし、それは彼が真に強い相手としか対峙せず、かつ「完璧な勝ち方」に拘泥している証左でもあります。鮮やかなKOはもちろん痛快ですが、彼の真髄はハードパンチだけではありません。
特筆すべきは、神業とも言えるディフェンスです。紙一重でパンチを空転させ、ノーモーションで放たれるカウンター。たった一発のジャブで相手を千鳥足にさせる光景は、これまでの防衛戦でも幾度となく目にしてきた芸術品です。
PFP(パウンド・フォー・パウンド)ランカーが二名も日本人で、世界最高峰の戦いが国内で実現する。長くボクシングを観てきましたが、これほど贅沢な時代が来るとは想像だにしませんでした。
「井上尚弥を超える存在は現れるのか」「軽量級に留まらず、中量級でも世界を震撼させる日本人が出てきたら……」
そんな、かつては空想でしかなかった夢が、今のボクシング界には溢れています。



