ヒロシが櫻井敦司の大ファンだということは知っていた。「ぼっちキャンプ」でもBUCK-TICKのTシャツを着ていた。
彼にとっては「神のようなもの」「(対談は)断られると思っていた」という存在。近寄りがたいのだろう。初対面の時の緊張感はこちらにもヒリヒリと伝わってきた。
バンドブームだった80年代、私にとって群馬出身のバンドと言えばまずはBOOWYだった。BUCK-TICKはしっかり認識していたのだが、サブカル寄りだった私にはあの暗黒のワールドがストライクゾーンじゃなかったから深くは聴いていなかった。
しかしあれから30年、BOOWYは駆け抜けるように解散してしまったが、BUCK-TICKは変わらずに続いてきた。今となれば30年続けることの凄さはわかる。スピッツを聴き続けて28年になるが今も変わらずやってくれているだけでありがたい。ひとつのバンドを長く続けること、アルバムを出し続けることは大変な労力と誠実さがなければできないものだ。
そして彼の息子・遠野遥はこの番組が放送された2020年に芥川賞を受賞し文芸誌で父親と対談をしている。
日経新聞の文藝の広告欄に櫻井敦司。とても驚いたことをよく覚えている。
その彼が先日急逝し、この対談を機に親しくなったヒロシのことを心配する声がTwitterにも多数出ていた。
だからこの再放送は気になっていた。観なくてもいいのに観ないわけにはいかないという気持ち。余計な心配だろうが、あの人見知りなヒロシが神様を崇める櫻井敦司ときちんと向き合えるのかという心配。
しかしそれはまったくの杞憂だった。
すぐにヒロシはいつものヒロシになった。
年下のヒロシにも丁寧な物腰と言葉使い。飾るところがない。たぶん誰に対しても同じ態度なのだろうなと思わせる。櫻井敦司という人物を深く知らない私にはその人柄が驚きだった(もちろんファンならよく知っているのだろう)。
昔、井上陽水が亡くなった忌野清志郎を「上質な人」と評していたが、まったく同じものを感じた。
そして櫻井はヒロシと会う前からキャンプ番組も観ていたという。カリスマとファンという上下の関係ではなく、お互いに通じ合うものがあったのだとわかる。尊敬というと大袈裟か。
そして孤独を自覚するシャイな性格も共通している(「上質な人」清志郎も同じだ)。
まちがいなく居心地のいい対談だったのだろう。
おそらく肌寒い雨の日。暖炉の炎の前で語り合う二人。観ている方にもその空気が感じられる暖かい対談だった。
改めて、早すぎる死を惜しむ。
こっちはもう一人のアツシ。
私が昔から大ファンの上條淳士。この絵も素晴らしいが、櫻井敦司という人は笑顔がいいのだと対談で知った。
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