JBC2012 東京予選 -- こだわりのテクスチャー | BAR14Nの憂鬱なラテアート

BAR14Nの憂鬱なラテアート

エスプレッソやラテアート、コーヒーの話

引き続き、ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ東京予選の記事。今回は、アマメリア・エスプレッソの石井さん。
テーマを聞いてから面白そうと思って、録音したため、途中からの内容です。録音していなかった箇所でのポイントは、プレゼンの内容が焙煎と質感についてであること、コーヒーはエルサルバドル・レクエルド農園であることです。
ここまでロースターとしてのこだわりをプレゼンとして盛り込んでると、なかなか楽しい。

こちらのエルサルバドルのコーヒーは、農園主のファン・カルロス・グレック・メサさんという方が、2004年に4代続くこの農園をおじいさんから受け継ぎました。そして、エルサルバドルのスペシャルティコーヒーを普及させるべく、生産処理や栽培方法を改良し、COE入賞、SCAAコーヒーオブザイヤー入賞などを果たした、とても素晴らしい農園です。このレクエルドのコーヒーは、エスプレッソのようなとろりとした質感が重要なコーヒーに向いていると思います。本日はカプチーノから始めたいと思います。
こちらの器は使い終わったスプーンを入れてください。

今回1ハゼ終了後に20秒くらいで釜出しをしています。ローストの全ての工程において、それぞれの工程上に必要な釜の温度があると考え、それを排気と一緒にコントロールすることで、豆のもっている全ての成分を芯のほうから外側に向かって順に漏れなく化学変化させていくということを考えて、甘さとフレーバーを引き出していきます。
芯に熱が入りすぎれば、浅煎りなのに、苦味が強すぎたり、芯に熱が入らなければ、強すぎる酸味やえぐみが出過ぎたりしてしまいます。煙や成分がどんどん出てくる後半、特に1ハゼ以降では、焙煎機の構造上、芯に熱を加える事がとても難しくなります。
目玉焼きを焼く時に、蓋をして熱をこもらせなければ、中に火を入れる前に、先に底が焦げてしまいますが、コーヒー豆も芯に熱を加えようとすると、釜内の排気を減らして、熱をこもらせなければいけないので、煙を逃がせないために、とてもスモーキーになってしまいます。なので、煙がまだ出なくて、いぶり臭がつきにくい前半のうちにきれいに芯まで加熱する事で、最終段階で早めに釜出しをしても、強すぎる酸味やえぐみが出ないように仕上がります。
また前半できれいに加熱できたとしても、前半のローストの平均温度がとても重要です。
平均温度が高すぎれば、フレーバーは出ますが、甘さや滑らかさが欠け、少しドライで辛口な口当たりになってしまいます。また温度が低すぎれば、フレーバー自体の印象が弱くなってしまいます。なので、前半の火力調整にはとても気を使って焙煎をしなければいけません。
カプチーノは、きれいにストレッチしたミルクの特別なマウスフィールによって、全てのドリンクの中でも、マウスフィールの最も優れたドリンクだと思っています。エスプレッソの甘みとミルクの甘みがともなったミルクチョコレートのような甘みをどうぞお楽しみください。

お待たせしました。
それではエスプレッソに行きたいと思います。
フレーバーの輪郭をはっきりさせるために、酸味を強く残すローストもありますが、日常的に飲むコーヒーとしては、酸味の強い一杯はとても体の負担になってしまいます。なので、はっきり酸味を感じるというよりは、口に含んだ瞬間の明るさ、ジューシーさ、爽やかさにつながるアシディティをローストによって出そうと心がけています。特にこの3つは、どんなに豆が素晴らしくても、ローストのでき次第でかなり左右されてしまうものだと考えています。またエスプレッソでは、全てのバランスが整った時に感じる優しい甘みや丸い質感を再現したいと思います。これらを表現するのに最も適していると考え、このレクエルドのコーヒーをご用意しました。
今からいれるエスプレッソは、バランスの整った丸い質感が一番の特徴であり、ものすごいフレーバーではないかもしれません。それでも、しっかりとシトラス、カカオを感じることができる、毎日飲んでも美味しいコーヒーを目指してローストしたものです。どのようなお客様に対しても、いちバリスタいちロースターとして、独りよがりにならないおすすめコーヒーとしての提案です。
失礼します。
こちらのコーヒーは初めにオレンジのようなシトラスフレーバーを感じ、チョコレート、ジャスミン、白桃のようなアフターテイストで終わるとても爽やかなコーヒーです。エスプレッソのテクスチャーに対するバリスタのこだわりをどうぞお楽しみください。
終わります。