JBC2012 東京予選 -- 特別な今日 | BAR14Nの憂鬱なラテアート

BAR14Nの憂鬱なラテアート

エスプレッソやラテアート、コーヒーの話

引き続き、ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ東京予選での競技者のプレゼン内容を掲載していきます。
今回は、丸山珈琲の齋藤さん。

スペシャルティコーヒーって、だいたい美味しく入れることができるものだと思う。ただ、たくさんのフレーバーを感じたりなど、複雑さのあるコーヒーは、入れるのが難しいところもあるだろう。
昨日はあんなに美味しく入れられたのに、今日は何か物足りない、とか。
日に日に変わる表情。だいたい美味しいとは言いつつ、そんな繊細さを持っている。
なんか上手く入らないなーって時、丸山珈琲齋藤さんのプレゼンを思い出してほしい。
きっと、もっとコーヒーをおいしく入れられるようになるはず。

はじめます。
今日は私にとって最も特別なコーヒーをご用意致しました。このコーヒーに出会って約3年。これほど長い期間、一つのシングルオリジンコーヒーと向き合ったのは、私にとって初めての経験です。今日ご用意したのは、ボリビア・アグロ・タケシです。数あるシングルオリジンの中から、私が特別に興味を抱いたのには訳があります。それは、アグロ・タケシの栽培環境から来るコーヒーの複雑さです。どうぞ、私とタケシのアルバムをもう1ページ開いて、ご覧になってください。アグロ・タケシは私が知る限り、世界で最も標高が高い場所で栽培されているコーヒーです。標高が高いことによる、寒暖差から生まれる素晴らしい酸や複雑なフレーバー、これがアグロ・タケシの最大の魅力です。私は昨年、2009年のロットを1年ほど生豆のまま寝かせることで、エスプレッソとしての飲み頃を迎えることを知りました。しかし今年のロットは、私の手元に届いたその瞬間から、魅力を感じ取ることができましたので、今年は早速ご用意させて頂きました。続いて、次のページをご覧になってください。
アグロ・タケシは、とても複雑なコーヒーです。バリスタが、抽出されるであろうプロファイルを決めつけ、それを絞り出すようなことはアグロ・タケシのポテンシャルを狭めることになります。私が今年のロットで感じた事のあるプロファイルをこちらにご用意致しました。これら全てを同時に感じるわけではありません。その時の環境、コンディションによって大きく表情が異なります。
今日は、私がみなさんをお迎えする、10分の準備の間に、今のまさにあのグラインダーのホッパーの中にあるアグロ・タケシの風味を確認致しました。今日のこの環境、コンディション、エイジングだからこそ味わえる、アグロ・タケシの風味を皆さんに楽しんで頂きたいと思います。今日は焙煎から7日目のものを選んで使用しております。それでは、早速エスプレッソをご用意して参りますので、少々お待ちくださいませ。

お待たせしました。エスプレッソでございます。
今日のアグロ・タケシは、黒蜜のような甘さと赤ワインのようなフレーバー、そしてほのかな蜂蜜のような風味と長く続くアフターテイストをどうぞお楽しみくださいませ。続いてカプチーノをご用意して参りますので、どうぞごゆっくりお召し上がりください。こちらをスプーン入れにご利用ください。

どうぞアルバムの次のページをめくってご覧下さい。左のページに写っているのが、農園主のマウリシオさんです。私は昨年、彼にこう聞かされました。ぼくのコーヒーは少し寝かせたほうが美味しくなるよ、と。私が1年以上かけて気付いたことを、彼はすでに知っていたのです。カプチーノでは、黒蜜のような甘さをお楽しみ頂けると思います。そして、ミルクを注ぐことで、新たに表情を出す完熟バナナの風味をお楽しみくださいませ。どうぞお待たせしました。すぐに2杯ご用意して参ります。

その農園の栽培環境や、コーヒーのことを良く知っているのは、実は作り手なのです。私たちバリスタが、その農園のことを知ることは、そのコーヒーの本質を知ることにつながるのだと、アグロ・タケシと農園主のマウリシオさんが私に教えてくださいました。どうぞ黒蜜のような甘さと完熟バナナの風味をお楽しみください。カプチーノお待たせ致しました。

みなさま、アグロ・タケシはいかがでしたでしょうか。このような複雑なコーヒーほど、抽出が難しく、私たちバリスタがお客様にそのピークを分かりやすく、そして、素晴らしい風味を楽しんで頂くために必要なのではないかと思います。今日はありがとうございました。終わります。